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お兄ちゃんは過保護  作者: ねがえり太郎
お兄ちゃんはやっぱり過保護
16/62

16.幼馴染と友人

その日の夕方。澪が遊びに来てくれたので、私と勇気は今日新しく出た宿題について早速教えを乞う事になった。


私の部屋には丸くて肌触りの良いラグが敷いてあって、割と小ぶりの丸いテーブルが置かれている。其処に3人で額を寄せ合って宿題に取り掛かる。澪は悩むことなくサラサラとペンを走らせて宿題を終え、四苦八苦している私達を横目にタッチパッドを触ってweb版の経済雑誌に目を通している。昔々の文学が大好物らしいが、活字中毒の彼女は雑食らしく何にでも興味を持って様々なジャンルの本や雑誌に手を伸ばす。「いろいろ繋がるから面白いんだ」と笑って話してくれる。一見関係無いような古代の神話や現代の医学や経済、少し昔のエンターテイメント小説の情報が、思わぬ所でプツプツ繋がってネットみたいに頭の中に拡がって行くとワクワクするんだって。


本と言えば漫画と雑誌がメインの私には、何万光年も離れた惑星の人と話をしているのと同じくらい遠いお話だ。でも何となく澪の話って面白い。波長と言うか、相性が良いのかもしれない。彼女の声と話は、私の耳と心に心地良いさざ波を響かせる。


私は澪が大好きなのだ。




「鈴木、これ何でこーなんの?」

「ああこれはね……」




サラリとした髪を耳に掛けて、澪が勇気の手元のプリントに顔を寄せる。すると自然に2人の距離が近づいた。


勇気は乱暴な口をきくし、人の頭をグリグリ撫でるし、時々訳の分からない台詞を言ったり行動を取ったりするけれども―――基本いい奴だ。大抵の男子と気軽に親し気に話しているし、女子にはベタベタする訳では無いけど親切で優しい。


だから澪にも丁寧に接している。


これまでその事実に疑問を持った事は無いのだけれど―――。


そう言えば他の女子に対する物より、澪に対する勇気の態度は丁寧なもののような気がした。何と言うか―――一線を画しているというか、特別な感じがするのだ。華奢で口数の少ない澪と取っ組み合ったら、もちろん勇気が勝つだろう。だけど勇気は澪に遠慮している―――と言うか何となく白旗を上げて負けを認めているような態度で、彼女に接しているような気がするのだ。


「凛?どうしたの?」


気が付くと、澪が私を不思議そうに眺めている。

いつも通り、私の髪を梳こうと手を伸ばして来た。


フイッとそれを躱してしまう。


え?


私は自分の行動が理解できなかった。

大好きな澪の、優しい手を避けるなんて―――有り得ない事だ。


「凛?」


違和感に気が付いた勇気が、心配そうな表情で私の顔を覗き込む。

今度はその大きな手が伸びて来た。


それを躱して私は立ち上がった。


2人が目を丸くして私を見上げている。




あ。間違った。間違ってしまった。

これ、駄目なヤツだ。




そう思ったけれども、引っ込みも付かずどうして良いかも分からない。


「わ、私ちょっと飲み物貰って来る……!」


並々とミルクティーで満たされているマグカップを放置して、私は部屋を飛び出してしまったのだった。



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