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お兄ちゃんは過保護  作者: ねがえり太郎
お兄ちゃんはやっぱり過保護
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14.幼馴染の態度 2

仲直りしてホッとしていたらそれどころじゃ無くなってしまった。




休み時間に宿題を忘れていた事に気が付いて、澪のノートを映していたら通りかかった勇気が「俺も見せて」と言って直ぐにノートを持って戻って来た。そりゃそうだろう、と思った。昨日は2人ともお母さんと一緒に配信映画で古いアクションムービーを見てしまったのだ。当然宿題の事はお互いすっかり忘れてしまっていた。


少林寺拳法をやっている主人公がサッカーで活躍すると言うトンデモ映画だ。3人でお腹を抱えて笑い転げて、勇気が帰った後お風呂に入ったら疲れ切ってぐっすりだった。




隣の席から椅子を借りて私と頭がくっ付くくらい近くで、勇気はノートを拡げて澪の宿題を写し始めた。家でならそれぐらいの距離、どうと言う事も無い。だけど小学校高学年あたりからこっち、男子と女子の距離が近いとコソコソ目くばせしたり、嫌な囃し立て方をする周りの声が気になってこういう事は人目のある場所では避けて来たのだ。


「勇気、ちょっと離れて」

「離れたら見えない。もうすぐ休み時間終わるし」

「……」


尤もな事を言われて黙ってしまう。


だけど後で気が付いた。そもそもこの宿題―――誰か他の人にノート借りれば済む話だよね?




中学校に入学して以来ずっと同じクラスだけど、これまで勇気が私に近寄って来る事なんて無かった。


なのに仲直り後、すっかり安心しきってのんびりしていた私に勇気がクラスの端っこから声を掛けて来て―――それから色々な事が変わってしまった。家でしかしない名前呼びで、暗黙の了解でおおやけにしていなかった放課後や休日の予定を、まるで皆に言い聞かせるような大声でバラされたのだ。咄嗟に返事をしたものの、小心な私の心臓はその後ドキドキと波打った。クラスの中心で笑っている人気者の勇気が、いつも端っこに隠れるようにして暮らしている私を舞台に引っ張り出してしまったように思えて落ち着かなくなった。


好奇の視線に最近私はグッタリしている。それなのに―――勇気は涼しい顔だ。


「終わったっと。鈴木、サンキュー」


勇気がパタンとノートを閉じて立ち上がり、澪に手を上げて礼を言った。澪は本を手にしたまま、コクリと頷いて見せる。あまりの早業に呆気に取られていると、頭をグリグリと撫でられた。


「おっせーな!休み時間終わっちまうぞ」


頭を押さえて睨みつけると、余裕の表情でニヤリとした勇気は自分の席へと戻っていく。奴は何やら中崎君に言われ肩を叩かれて、苦笑いしている。不意に何やら視線を感じて周りを見渡すと、サッと目を逸らす男子達や、薄く笑いながらこちらをチラチラ見てコソコソ話をしている女子達が目に入った。


人見知りを拗らせてしまった私は、注目されていたという事実だけで真っ青になる。




「凛、時間」




そこで澪の冷静な声音が、私の理性を引き戻した。


私は慌てて宿題の残りに取り掛かる。


今日帰ったら、勇気めタダじゃ置かないんだから……!フツフツと熱気をたぎらせながら、私はペンを走らせたのだった。



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