イデア・バグナは戦場で舞う
戦闘描写は練習中につき、まどろっこしかったり読みづらかったりしたら申し訳ありません。
どろり、と肉が落ちる音。漂う瘴気と腐敗臭。そして、どこか虚ろな短い声。骨を軋ませながら2、3体のゾンビ化した竜が俺達の前に現れる。
マサミは手甲に刻まれた聖印を輝かせながら殴りかかり、俺もまた剣を振るう。後ろに下がったアレクシアが戦場を浄化する術を発動させるまで、俺達が彼を攻撃から護らねばならない。
因みに、出動して既に2体のゾンビ竜を倒している。他のチームもてこずりつつ(一部除く)頑張っているようだが、あと何匹いるか全くわからない。
っと、今はこいつらに集中しないとな。ほら、腐りかけたしっぽで殴ってきやがった。その鈍い動きを余裕の動きで避けていると、別の一頭が割り込んできて俺に攻撃を向ける。
その血を纏った骨の腕が襲い掛かるも、俺の剣がそれをすっ飛ばす。鈍い音を立てて地面に突き刺さる骨は、浄化の光によって灰に帰り、ゾンビ竜は後ずさる。だが、俺はさらに接近して剣をつきたてた。同時に巻き起こる炎がゾンビ竜を包み込む。
(まだだ)
マサミが懐へ入り、太い骨へと拳を叩きつける。それも何度もだ。その流星のような攻撃に骨が砕け散り、やがて罅が広がってぼろぼろと他の骨が肉の破片と共に落ちていく。
「破ぁっ!」
マサミの掌底がゾンビ竜の中心に炸裂。コアがむき出しになったところへ追い討ちをかける。衝撃で動けないゾンビ竜へ勢い良く蹴りを入れた。
1頭が炎に包まれ、マサミが1頭を倒している間に、俺はもう1頭を相手にする。腐臭のするブレスを避け、飛んでくる骨を剣で弾いて様子を伺う。
(別のやつは来るか……?)
周囲を警戒し、アレクシアを見る。荒々しい音に混じって清らかな詠唱の声が聞こえ、それだけでも少しずつ空間が浄化されていくのを感じる。俺たちがどうにか1人でゾンビ竜を相手に出来るのは、神官が浄化の力を使っているからだ(俺が浄化の力なしにゾンビ竜を退治できたのは、攻撃に炎を添付できる異能力のおかげだと思う)。
マサミがその間に懐へと潜り込み、蹴り上げる。大きくのけぞったゾンビ竜の頭が再びブレスを吐こうとするのが見えたと同時に、マサミ共々身構える。
「新手が来ている様子はありませんね」
「他のチームが、ひきつけているのかもしれないな」
マサミが眼鏡を正し、俺が相槌を打つ。同時にブレス。これもどうにか避ける。延長線上にアレクシアがいたが、そこら辺は大丈夫だ。浄化の力によってブレスが無害なものへ変化するのを俺達は知っている。
「くたばれよ」
俺はもう一度剣を振りかぶる。紅蓮に染まった一閃が腐った身体を焼いていく。なんともいえない臭いは辛いが、仕方のないことだ。
「準備完了ッ」
アレクシアが叫び、杖を掲げる。すると、光の蝶がふわっ、とあいつの周りから飛び立った。そこからあちらこちらへと蝶は飛んでいき、ゾンビ竜へと引っ付いた。
光の蝶が音もなく悪意を消していく。悪意の宿ったものを沈め、元の状態に戻していく。ゾンビ竜たちも徐々に光の塊へと変わっていき、高い高い空へと舞い上がって消えた。
他の場所でも光があふれていた。幻想的な光景が広がり、俺とマサミはアレクシアが柔らかな笑顔でそれを見ている姿に、素直に「綺麗だな」と思った。
(まぁ、これで男じゃなかったらなー)
と思うのはまぁ、しょうがない事だと思ってくれ。中性的なアレクシアは男女共に人気で、よく告白されているんだよなぁ……。
っと、そんな事を考えている場合じゃない。まだ浄化しきれていないゾンビ竜がいるかもしれないし、気を引き締めないと。
呼吸を整えて、辺りを探る。目と耳だけじゃない。こういう時な五感をフルに活かさなくちゃナ。まぁ、第六感が働くヤツとかものすっごくこういうとき活躍するんだけど。
暫く様子を見ている間に、光の蝶は全て消えていた。ゾンビ竜は出てくる気配が無い。……これって、出動した冒険者で倒しきったって事なのか?
「とりあえず、辺りを見たほうがいいんじゃないか?」
「よっし、まわってみるか」
俺達がそういうと、アレクシアも1つ頷くと、懐から愛らしい包みをいくつか取り出す。
「応急処置的に浄化用の塩もあるので、持っておいてくださいね」
そう言って渡された香草の匂いのする包みを懐に入れながら、俺達は探索を始める。はたして、何が出るのやら……。
いっとくけど、ちょっとしたことじゃ俺驚かないからな……?
読んでくださり、有難うございます。
次回は、12月投稿予定です。 おそらく。