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幕末傭兵記 孫ノ章  作者: マダオ万歳
2/2

壱ノ半

どうも、マダオ万歳です。今回は、本格的に物語に入る前の前置きです。


短いですが、どうぞ。


 

 私の仕事仲間である変態の情報屋の話によると、今の時代は、恐らく今までこの世界に存在した生物たちがこの世界で紡いだどの時代よりも酷い惨状だといえるそうだ。しかし、どんなものにでも必ず始まりというものがあると相場が決まっている。そう、今、私が生きているこの世界が、こんな醜く腐りきったのにはそれなりの理由があるそうだ。今から、その変態の話を踏まえながら、その理由と私の世界について話していこうと思う。だた、問題が1つある。その、それなりのというのが、余りにも荒唐無稽であることなのだ・・・・・・。



 私が生まれる以前の話だ。私の仕事の仲間である変態のやつから聞いた話によると、この世界には嘗て大妖獣と呼ばれる巨獣たちが人間やほかの種族などと共に、絶妙なバランスを取り共存共栄しながらこの世界でそれぞれの営みを送っていたらしい。それは、今の惨状と比べれば、楽園と呼ぶにふさわしかったそうだ。そして、らしいというのにも理由がある。現在の世界で妖怪獣と呼ばれるものは存在するのだが、大きさは大きくても全高が大体二〇mくらいしかない。それでも、私たち人と比べればおそらく十分大きいのだろうが。大幼獣と呼ばれた存在の大きさは、一番小さなサイズのやつでも四〇mは軽く越していたらしい。様々な種類がいて、陸を動く山のような奴や海を移動する島のような奴、空を飛行する竜星のようなやつなど多岐にわたった。最初聞いたときは半信半疑だった。けれど、世界の至るところに大幼獣と思しき生物の白骨化した身体の一部なんかが転がっていたりするから、その骨のサイズを考えるとあながち嘘ではないことが直ぐに分かる。私自身も、何度か目にしたことがあるが嘘ではないという事実を突きつけられた。


話が逸れたな、その大幼獣の骨の当たりから察しがつくだろうが、らしいという理由は、今の私たちの世界には生きている大幼獣はただの一体も存在していないということだ。皆、死に絶えたのだ。どの大幼獣も例外なく。発端は、一五〇年ほど前にある出来事が起こったことから始まる。

仕事仲間が言うには、世界が一瞬にして何らかの現象に包まれたそうだ。そして、その現象が晴れ、何時もの日常に戻ったとき、既に大幼獣たちは皆、白骨化していたそうだ。出来の悪い御伽噺でもあるまいし、私はそんな馬鹿げた話を信じているわけではない。今でも、大幼獣たちの一斉絶滅には様々な諸説が存在する。伝染病による集団死や、気候変動に大地震などだ。だが、何故絶滅するにしても骨だけしか残っていなかったという謎は今でも仮説すら立てられていない。

しかし、一番重要なのはそこではない。重要なのは、その日を境に大幼獣たちが皆、この世界から姿を消したという事実である。そして、それは同時に滅びの始まりでもあった。



 大幼獣たちが死に絶えたそれと同時に、世界中にいる生物に、ある病気のようなものが蔓延した。病気のようなものというのは、そもそも病気なのかさえ、分類不明のものだからだ。それに感染した生き物は例外なく、等しく理性というものが完全に崩壊し異常なまでに好戦的になり、他者を傷つけることによって快楽を感じ、それしか考えられなくようになる。私自身、その感染者と戦闘を行ったこともある。その異常性と獰猛性は、理解している。あれは、最早、生き物ですらなかったように思えるほどだった。だが、この病気のようなものがどのように発生し、どのようなものが原因なのかさえ、一五〇年経った今でも解明されていない。そして、この病気のようなものが世界中に凄まじい速さで蔓延し、一度、文明は滅びた。それが一〇〇年前の話だ。その当時の生き残りは、地獄というものが存在するというのなら、その当時が最もそれに当てはまると数少ない文献に記している。両親、兄弟、親友、恋人、人々は何ふり構わず、快楽の赴くまま、本能の赴くまま、争いを続け、共食いという名の殺し合いを続けた。無論、人以外の生物たちにも同じようなことが起こった。それは、最早、言葉では表しきれないほど悲惨なものだったらしい。それが、今から五〇年程前まで続いた。と言っても、七〇年くらい前から既に事態の沈静化は始まっていたそうだ。

 だが、そんな地獄の中でも生き残った者たちがいた。その病気から難を逃れようと辺境などに命からがら移り住んだ連中だ。先日、依頼で始末したオーベルトの一族もその一つだ。まあ、そんなことがあって文明が滅びたが、人が死ぬことはなかった。自然の生態系は崩壊したが、生物が全て死に絶えることはなかった。そして、生き残った人や生物は新たなコミュニティの形成に全力を上げた。そして、今の時代が出来上がった、というわけだ。今の時代は、まさに群雄割拠、戦乱の時代と言った方がいいのかもしれない。人を縛る、国や法も、ある方が珍しいご時世だ。誰かが、あるいは組織や国がこの世界を纏めなければならない。そうでなければ、この世界で生き抜くことは不可能といっても言い。文明の恩恵を知ってしまった人は、それなくしては長く種を存続させることはできない。だが、野望に胸膨らますもの、快楽のままに行動するもの、未だに謎の病気のようなものに感染して死を振りまく感染者。文明を再構築するためには様々な障害が多い。そして、一番の障害と思われるのが妖怪獣と呼ばれる生物の存在だ。大幼獣がいなくなり五〇年がたった後に、突然世界に現れた生物である。大幼獣と違い、共存出来る存在ではなく、どちらかと言えば感染者に性質は非常によく似ている。好戦的であり、他者を傷つけることによって生命活動を維持している。しかし、感染者と妖怪獣には違いがある。ある程度の知能があることだ。その中には、人と同等の存在もいるという。この生物の存在により、ある程度の落ち着き、まあ嵐の前の静けさではあるのだが、それを取り戻していた世界にとって更に混乱をもたらす要因が増えてしまったのだ。

 しかし、暗いことばかりではなかった。妖怪獣の出現と同時に僅かながら希望と呼べるものも出現した。それは、武器にもなり盾にもなる。あらゆる人という種が問題を解決していくことのできる代物のだった。


 その巨大な代物は、後に Titan タイタンと呼ばれるようになった。文字通り、鎧を纏った巨大な魂のない人形だ。大幼獣の白骨化した死体の中から突然、産み落とされた巨大な人の骸骨。その大きさは様々であったが、それには全て共通してある特殊な能力があった。その能力があった故に、人は只巨大な骸骨を兵器に変えることができた。


 その骸骨は、妖怪獣の力の結晶である魂を自らに取り込み、それを自分の血肉として形作り、人の操ることの出来る巨大な人形(ロボット)へと変化させることができたのだ。人はその人形に、見合う鎧と武器を作り、戦う兵器として使用する方法を編み出した。このタイタンの出現により、人という種は、今日まで妖怪獣や感染者たちから身を守り、種を存続させることに成功している。しかし、タイタンの存在は追い詰められている中かろうじて生きている人という種に対して更なる問題を出現させた。タイタン同士による戦争である。タイタンはその優れた戦闘性に故に、その力が向けられるのは妖怪獣だけではない。人同士の争いにも使用されるようになった。

 まあ、それからはお察しではある。人を縛る、国や法すらない状態で力ある野心者がそんなものを手に入れたらどうなるのか。その答えが、今のこの時代の世界の惨状である。その為、私のような傭兵たちが生まれるのは必然であった。力ある者たちは、自分の持つ力の弱い部分を傭兵で補った。力無きものは、傭兵に己の身を守るために助けを求めた。そして、傭兵は世界にとって必要不可欠な存在となった。傭兵たちとの戦闘も決して珍しくはない。




 祈り助けを乞う神さえも死に絶えた世界。全てが分別なく腐りきった世界。希望ある明日という言葉が死語となった世界。



 それが、私が生まれ生きているこの世界。


如何でしたでしょうか?


次回から本格的にスタートします。


では、次回の更新でお会いしましょう!!!!




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