第九話:トランスジェンダー1
私:
えー、この部署に“多様性”の新しい仲間が加わることになりました。最近よく聞く、LGBTQの当事者さんらしいです。ただご本人いわく「特別な配慮は求めません」とのことなので、普通に接してあげてね。
男性社員:
LGBTQって、あれですよね、言葉だけはよく聞くんですけど……何でしたっけ。
女性社員:
レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィア/クエスチョニングの頭文字。ざっくり言うと、"男女二択じゃない人たち"かな。
男性社員:
ほーん。まあ、配慮いらないって言うなら普通に接すればいいか。
~~ 数日後 ~~
MtF:
はじめまして。今日からお世話になります。何かと至らない点もあるかと思いますが……私もできる限り自分で対処しますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。
男性社員:
お、おお……よ、よろしくお願いします。
女性社員:
……よろしくお願いします。
~ 更に後日・休憩スペース ~~
女性社員:
上司さん。あの……MtFさんのことで、ちょっと。
私:
な、なんか不満そうだね。どうしたの?
女性社員:
あの人、私たちの更衣室で着替えようとしたんです。頭では理解してますよ?トランスジェンダーの女性だって。でも、どうしても抵抗があって。
私:
え、えーと。でも“彼女”はMtFなんだし……女性更衣室を使うのは普通……だと思うんだけど……?
女性社員:
私もそう思います上司さん。でも、その……身体的には、どう見ても"男の人"なんです。
私:
う、うーん。どうしろと(´・ω・)
・トランスジェンダー
自分がどの性別であるかという認識と、出生時に割り当てられた性別が一致しない人々を指す言葉です。MtF (Male to Female)はその中の一つで、男性としての身体を持って生まれながら、性自認が女性である人のこと。
MtFを含むトランスジェンダーの人々をめぐる社会の議論は、主に"性自認に基づく人権"と、"性差が関係する場面での公平性・安全性"のバランスをどう取るか、という点に集約されているのだが…どうしても、万人が納得できる落しどころを見つけるのが難しい、極めてセンシティブな問題でもある。




