第八十七話:ホワイトデー
3月某日。
イタリア:
日本のバレンタインとホワイトデーについて、しっかり調べたよ。
故に僕は、返礼品としてバラの花束を用意した。
男性社員:
まじでやりやがったwww
現実でバラの花束初めて見たwww
ムスリム:
私は無難にお菓子を用意しました。バクラヴァでスネ。
MtF:
あら、美味しそう。
ムスリム:
MtFさんもドウゾ。とても甘いので、お茶と良く合いまスヨ。
女性社員:
おはようございまーす。
韓国さん:
おはようございます。
イタリア:
おはよう、レディたち!さあ、これをどうぞ!
女性社員:
えっ、やだ、これ。いきなり何ですか?
イタリア:
や、やだ……?
女性社員:
あ、ごめんなさい。びっくりして。
韓国さん:
(日付を確認して)
バレンタインのお返し、ですか?しかしこれは……
イタリア:
そのとおりさ!
心優しい女性たちには、美しい花束が似合うと思ってね。
女性社員:
え、そんな……困ります。
イタリア:
え?
女性社員:
だって、私が用意したチョコ600円ですよ?
こんな立派な花束……高価すぎて頂けません。
イタリア:
いやいや、既に買っているわけで……遠慮は無用だよ!?
ムスリム:
日本のお返しは3倍ルールだと聞いていました。
10倍を用意すれば驚かれるのは当然デハ?
イタリア:
そうはいっても……2000円程度では貧相な花束になってしまう。
そんなものを女性に渡すのは、低く見積もっているようで失礼じゃないか。
MtF:
いや恋人同士の贈り物じゃないんだから、全力出さなくてもいいのよ…
ムスリム
私のように、バランスも考慮すべきでしたネ?
男性社員:
それな。しかしこのバクラヴァって奴、美味いですね。
ムスリム
……なんで貴方まで食べてるんデスカ。まあ良いデスケド。
イタリア:
日本の女性は慎みと奥ゆかしさを備えているとは聞いていたが……
これも、そういうなのか。
私:
いや、それはわりと古い価値観で。
今回は単に価格バランスと、花束というアイテムの文化的前提が……
ああ、どう説明しろと(´・ω・)
・ホワイトデー
ホワイトデーとは、バレンタインデーのお返しとして日本で独自に作られた行事である。
起源は1970年代。
製菓業界が「チョコをもらった男性が、後日お返しをする日」を提案したのが始まりとされる。当初はマシュマロやキャンディなど、扱う商品によって名称や内容もバラバラだったが、やがて3月14日でほぼ統一され「ホワイトデー」として定着した。
重要なのはこれが海外由来ではなく、日本発の商業文化である点だ。
欧米のバレンタインは、恋人同士が互いに贈り物をする日であり、そもそも「お返し専用の日」という発想が存在しない。
つまりホワイトデーは、
・バレンタインデー(日本式)
・お返しのホワイトデー(日本独自)
という、二重にローカライズされた文化の上に成立している。
文化としてはそれなりに定着しているが、その実態は「愛情の表現」というよりも、
関係性の帳尻を合わせるための装置に近い。かなり人工的で、日本的な贈答イベントなのだ。




