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異文化理解したいのに、なぜか全員が多様性の地雷を踏み抜き、私の胃だけが死んでいく件  作者: めるのすけ
第十六章:続・ITという多様性

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第八十七話:バレンタイン

2月某日の朝


女性社員:

おはようございます。今日はアノ日ですから……職場の皆さんにチョコレート持ってきました。一つずつ、どうぞ。


男性社員:

おお、バレンタイン!ありがとうございます!ありがとうございます!


私:

いやー、ありがとう。気を使わせちゃってすまないね


女性社員:

いえ、職場のコミュニケーションも大事ですから。

……あ、男性扱いするみたいで失礼かなとも思ったんですけど、

MtFさんの分も用意してあります。


MtF:

うふふ、ありがと。

実はアタシもね、女性社員ちゃんの分も含めて "全員分" 用意してきてるの。

友チョコみたいなものだと思って頂戴ね。


韓国さん:

…私の分も合わせると、全員3個ずつとなりますね。

いささか胃もたれしてしまう気がしますので、皆さん無理はなさらず。


イタリア:

女性からの贈り物を拒絶するなんてありえないね!

溢れんばかりの感謝とともに頂くよ!


ムスリム:

贈り物のチョコレート……これは宗教行事デスか?


私:

うっ、元ネタを辿ると宗教行事っぽい空気はあるけど、

今はほぼ商業文化というか、季節イベントだね。


ムスリム:

なるほど。では文化的慣習として、ありがたく頂戴しマース。


私:

……どうにかなった(´・ω・)




・バレンタイン

バレンタインデーの起源は、実はかなり古い。

名前の由来は、3世紀ローマの殉教者 聖バレンタイン とされている。


当時のローマ帝国では、兵士の結婚が禁じられていた。

理由は単純で「家庭を持つと士気が下がる」という、国家都合だ。

その裏で密かに若者たちの結婚を取り持っていた聖職者が処刑され、

彼の命日である2月14日が「愛を貫いた人物の日」として記憶されるようになった――

というのが、いわば "公式っぽい" 由来である。


ただし実際にはこの話は後世にかなり脚色されており、

同時期の異教的な春祭り(豊穣・繁殖を祝う行事)と混ざり合いながら、

愛、恋、男女の象徴として再解釈されていった、というのが実情だ。


中世ヨーロッパでは「この日に恋人同士になると結ばれる」という

俗信が広まり、やがてカードや贈り物を交換する風習が生まれる。

ここまでは、まだ“宗教+民間信仰”の範疇だった。


日本に入ってきたのは1936年にモロゾフが広告を出したのが最初とされる。

それが定着するのは1950年代後半、しかも恋愛文化としてではなく

「女性から男性へチョコを贈る日」という、独特なルールを打ち出した。


結果どうなったか。

宗教色は完全に消え、告白・義理・職場コミュニケーション・季節行事が混線し、

「意味はよく分からないけど、何となくやる日」になったのである。


宗教と殉教、恋愛と民間信仰、商業イベントと職場文化が、

何層にも重なった文化のキメラが、現代のバレンタインなのだ。

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