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異文化理解したいのに、なぜか全員が多様性の地雷を踏み抜き、私の胃だけが死んでいく件  作者: めるのすけ
第十四章:歴史という多様性

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第八十話:文化資本

女性社員:

でも才能を持って生まれてきた個人とか、人一倍努力した人とか。そういう人が、その階級を飛び越えていくことだって不可能ではないですよね?そういう意味では、生まれだけで決まっちゃった時代よりは…


韓国さん:

言いたいことは分かりますが、残念ながらほぼ幻想ですね。

教育資本と文化資本は、本当に残酷なんですよ。


男性社員:

教育は分かるんですけど、その文化資本ってのは?


イタリア:

ざっくり言うと、基礎教養、立ち居振る舞い、礼儀作法、会話の癖……

そういう「空気の読み方」まで含めた、生活の様式だね


男性社員:

うーん、空気の読み方?


イタリア:

例えば君が、いきなり最高級のフレンチに連れて行かれたとして。

店員への受け答え、姿勢、食べ方、ナプキンの使い方……一切の粗相なく、最後まで "その場に馴染んで、マナー違反なく" 食事を終えられる自信はあるかい?


男性社員:

いや無理でしょ、そんな本格的なところ行ったことないですよ…って、なるほど。


イタリア:

そう。それが文化資本だ。知識ではなく、身体に染みた常識。

言い換えれば、 ''その階級における暗黙の了解・常識'' 。

これを親から子への再生産以外で身につけることは、極めて難しいんだよ。


女性社員:

でも勉強だけなら…テストの点だけなら努力で何とかなりませんか?


イタリア:

点数だけなら、努力で覆せる可能性はある。でも面接は?

そこで語れる体験 ―― 自分の価値を裏付ける経験は、どこから来る?


ムスリム:

上位層が語学留学や海外ボランティア経験を語る中で、

「生活費のためにバイトしてました」が武器になるか、という話デスネ。


韓国さん:

一般企業の面接であれば、十分なセールスポイントになるでしょうけど。

しかし上位層は、"上位層の常識" が乱されるのを嫌います。もちろん例外はありますが、上位層ほど「同じ匂い」を重視する場面は多い印象ですね。


男性社員:

ああ、無情…って感じですね。


私:

うーん。努力だけじゃ、足りない構造があるって話なのか。

しかしそれを理解していたとしても…対抗手段が無い、ように見えてしまうね。


女性社員:

そんな…どうしろと(´・ω・)




・見えない相続財産「文化資本」

一時期「親ガチャ」という言葉が取りざたされたが、これが生まれた家庭の経済的な格差を指す単語であるなら、文化資本という言葉はより根深く、目に見えにくい格差を指している。


フランスの社会学者ピエール・ブルデューは、格差が固定化される原因は経済力だけではないと考えた。彼が提唱した「文化資本」には大きく分けて三つの形がある。


1.制度化(institutionalized): 学歴や資格。

2.客観化(objectified): 家にある本、絵画、楽器、道具。

3.身体化(embodied): 立ち居振る舞い、言葉遣い、感性、マナー。


そして最も厄介なのが3つ目の「身体化」されたものだ。幼少期から "当たり前" として刷り込まれた振る舞いは、大人になって本で学んだ知識とは別物の余裕として出る。そして上澄みにいる人ほど、その微差で「仲間かどうか」を嗅ぎ分ける ―― 言語化されにくい格差が、そこにある。


大人になってからマナー本を読んで勉強した人と、幼少期からそれを血肉化している人の間には、余裕振る舞いに決定的な差が出る。そして社会の上澄みにいる人々は、この微細な差異を敏感に嗅ぎ取り、自分たちの仲間かどうかを判定する。それが言語化されない階級格差、文化資本の有無なのである。


「努力は報われる」という言葉は美しい。しかし親が料理するのを手伝いながら「常識」を身に着ける家庭があるのとは別世界に、一流レストランで配膳される料理を前に、フォークやナイフの扱い方を「常識」として身に着ける家庭もあるのが、残酷な現実なのだ。

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