第七十八話:庶民感覚
男性社員:
なぁ……なんか昨日から、イタリアの扱いが難しいんだけど。
女性社員:
分かる。
普通に接してって言われても、あれ聞いたあとだと、
どうしても気をつかっちゃうというか。
MtF:
出ちゃってるのよねぇ。
日本人特有の「遠慮の文化」。
ムスリム:
宗教的敬意とも違いマスね。
どちらかといえば、「身分差」への過敏さでしょうカ。
韓国さん:
儒教圏ほど露骨ではありませんが、
上下関係への感度はかなり高い文化だと思います。
(そこへ)
イタリア:
Buongiorno!みんな、おはよう。
男性社員:
お、押忍!おはようございます!
女性社員:
お勤めご苦労様です!
イタリア:
…………
MtF:
(溜息)
あなたたち、落ち着きなさい。完全にヤクザの挨拶よ、それ。
イタリア:
違う、違う!そうじゃない!僕は君たちを対等だと思ってる。
同僚で、友達で、近しい存在で……だからその反応は、正直ちょっと悲しいよ。
男性社員:
いやでも、うっかり雑にツッコんだら、外交問題に発展しそうで。
イタリア:
なるわけないだろ!
爵位なんて、家の歴史上の飾りにすぎないんだ。
僕自身の価値とは、何の関係もない!
ムスリム:
ナルほど。古びた称号、という位置づけデスカ。
イタリア:
いや「古びた」扱いは失礼だよ!?
歴史があると言って欲しいな!
韓国さん:
イタリアさんの言うことは正しいですね。
日本は自己評価が低く、相手の肩書きに過敏になりすぎる傾向があります。
女性社員:
「庶民が調子に乗っちゃいけない」みたいな感覚は、
どこか染みついちゃってるかも…
私:
う、うーん。僕たちの世代は特に「偉い人には敬語、頭を下げる」が
体に染みついてるからね……
イタリア:
だから普通に接してくれと言ってるじゃないか!
男性社員:
……分かった。じゃあ、今まで通りの扱いで行くぞ?
イタリア:
ああ、そうしてくれ!
男性社員:
おはよう、生ハム野郎!
イタリア:
言い方ァッ!!
ムスリム:
尊厳の問題デース……
私:
距離感って難しいね……どうしろと(´・ω・`)
・見えない階級と「タテ社会」の引力
日本社会では、制度としての身分制が解体された後も、場の空気や関係性の中で無意識に「上下」を読み取り、言葉遣いや距離感を調整してしまう傾向がしばしば見られる。相手が上だと認識した瞬間に、敬語・遠慮・忖度が過剰に立ち上がり、対等な関係が急にぎこちなくなる ―― 作中では、そんな空気を書いてみた。
現代において爵位という肩書きは、法的な特権というより「家の歴史」や「社会的記号」に寄りやすい。そこでよく引き合いに出されるのが、恵まれた立場にいる者ほど慎みと責任ある振る舞いを求められる、という倫理 ―― いわゆるノブレス・オブリージュだ。これは「恵まれた者は、そうでない者に対して誠実かつ責任ある行動をとるべきだ」という規範である。
家柄という生まれ持った属性を笠に着ることを品がないとみなし、自らの振る舞いによって敬意を得ようとする、それが現代貴族に相応しいの高潔さの現れ、なのかもしれない。




