第七十話:英語2
女性社員が、休憩時間に英単語帳とにらめっこしている
私:
おや、勉強かい?
女性社員:
あ、はい。お正月の出来事もあって、やっぱちゃんと英語ぐらいは理解できた方がいいのかなって。
男性社員:
その"英語くらい"が日本人にはハードル高いんだよなぁ。
MtF:
こら、やる気を削ぐようなことを言わないの。
韓国さん:
…単語を覚えるのが無駄とは言いませんが、
それだけだと効率が悪くなりがちですよ。
女性社員:
え、そうですか?なにか改善すべき点とか…
韓国さん:
単語帳だけで安心するのが非効率です。音と一緒に覚えるべきでは。
"目" だけで覚えても、"耳" に入ってこなければ意味がありません。
イタリア:
うん。単語や文法を学ぶことが悪いわけじゃないんだけど、発音やヒアリングこそが大事だからね。完璧である必要はないんだよ、通じれば良いんだ。
男性社員:
日本人にはLとRの発音が鬼門なんだよ。
ご飯はシラミになるし、選挙は…
MtF:
ちょっと、やめなさい。
ムスリム:
ルーツが完全に異なる言語を学ぶのは、難しい事ですカラネ。
発音の癖は "怠慢" や "能力不足" デハなく、母語の構造の問題なのデ。
イタリア:
昔から外国語を覚えるなら定番の奴があるじゃないか。
その言葉を話せる人と親しくなるのが一番だって。
ということで、今度英会話トークを交えてレストランでディナーを…
韓国さん:
公私混同は親しくなるどころか、嫌われますよ。
女性社員:
うーん、ちょっとその方向は。でもこれ以上どうしろと(´・ω・)
・母語と、外国語発音の相性
外国語の発音が難しい理由は、努力や才能ではなく
母語に存在しない音を聞き分け、再現する必要があることにある。
日本語には L / R の音韻対立が存在しないため、
英語の light / right のような区別は、そもそも「別の音」として認識しにくい。
一方、イタリア語には H音(ha / hi / hu / he / ho) が実質的に存在せず、
英語の hat や home のような息を伴う発音は苦手になりやすい。
結果として hotel を otel のように発音してしまったり、日本語の「はなびら」が「あなびら」になったりする。
また英語話者側にも弱点はあり、語頭や促音の「ツ(tsu)」や、母音の長短は非常に難しい。机(tsukue)がスクエ(sukue)になったり、「来た/切った」や「おばさん/おばあさん」が聞き分けにくい、発音しづらかったりするようだ。
このように発音が下手、聞き取れないという現象の多くは怠慢や能力不足ではなく、母語の音声構造との相性問題なのだ。外国語の発音とは新しい音を覚えるというより、今まで存在しなかった音の地図を頭の中に作り直す作業に近い。
だから時間がかかるし、誰にとっても難しい。それが言語の壁なのである。




