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異文化理解したいのに、なぜか全員が多様性の地雷を踏み抜き、私の胃だけが死んでいく件  作者: めるのすけ
第十二章:感性という多様性

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第六十七話:侮辱1

MtF

さ、家に帰るまでが遠足よ。

駅まで戻りましょうか。


五人で並んで歩いていると、人混みの中で端を歩いていた女性社員が、

観光客らしき白人男性と肩がぶつかってしまう。


女性社員

あっ、ごめんなさい!


観光客

Hey, watch it, yellow monkey.

(おいおいお猿さん、気を付けてくれよ)


イタリア

……Wait. Take back what you just said.

(待て、今の発言を取り消せ)


男性社員

い、イタリア……?


観光客

Huh? Sorry, I didn’t see it. It’s so small.

(あん?悪かったな、コレ小さすぎて見えなかったんだよ)


イタリア

Don’t call her it. She’s a person. Apologize.

(彼女をコレ呼ばわりするな、謝罪しろ)


観光客

……Whatever. Let’s get out of here.

(めんどくせぇな。おい、行こうぜ)



~~ 観光客は肩をすくめ、立ち去る ~~


男性社員

……な、何があったんだ?


イタリア

君たちも少しは自覚したまえ。

侮辱されて、のほほんとしてるんじゃないよ!


ムスリム

英語が、聞き取れなかったのデハ?


女性社員

あ、"イエローモンキー" って言われたのは聞き取れましたけど。


イタリア

なら、なぜ怒らない!


男性社員

なぜって……それが侮蔑だってことは、知識としては知ってるけど。


女性社員

はい。黄色人種なのは事実ですし、

"イエロー"って言われても……正直「だから?」って感じで。


イタリア

……君たちは、無邪気すぎる。Damn it!


男性社員

お、落ち着けよ。

ああ、どうしろと(´・ω・`)




・侮蔑と脱人格化

西洋圏の一部では、19世紀末〜20世紀にかけての黄禍論(Yellow Peril)や、第二次世界大戦中のプロパガンダなどにおいて、アジア人を「猿」など人間以下として描き、排斥や攻撃を正当化する言説が用いられてきた。


その延長線上にある「イエローモンキー」は、単なる悪口というより、尊厳を剥ぎ取り "人間扱いしない" 暴力性を帯びた言葉として受け取られやすい。


一方、日本ではこの種の蔑称が「海外の知識として知っているもの」に留まることも少なくないため、侮蔑語だと理解していても感情が追いつかず "だから何?" と受け止めてしまうケースが起こりうる。差別された当人より、第三者の方が強く怒る――温度の逆転が起きるのだ。


そしてもう一つ問題になるのが、人を It(それ/モノ) 扱いする衝撃である。英語で成人を it と呼ぶのは単なる代名詞ミスでは済まず、相手の人格を剥ぎ取り、物体(object)として扱う脱人格化として受け取られやすい。


歴史的に集団をモノや害虫として呼ぶことは、暴力行為から罪悪感を取り除くための手続きになり得るため、強い警戒対象でもある。 イタリアの怒りは「可哀想だから」だけではなく、「人間を人間として扱わない態度そのものが危険だ」という倫理観に根ざしている。


侮蔑や差別の意識は歴史と紐づいていることが多く、これも一朝一夕には認識の差が埋まらない「多様性」だと言えるだろう。

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