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異文化理解したいのに、なぜか全員が多様性の地雷を踏み抜き、私の胃だけが死んでいく件  作者: めるのすけ
第十一章:常識という多様性

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第六十話:待ち合わせ

私:

えー、今年もお疲れさまでした。仕事納めでございます。

例年なら28日なんだけど、今年は日曜日に当たっちゃったからね。


男性社員:

年末休暇が伸びる喜びよ……。


MtF:

今年も一年終わりですか。早いわねぇ。


私:

で、これは業務じゃないので自由参加ですが、

明日の夜、希望者だけで部署忘年会をやろうと思います。

私が懇意にしているお店があるので、その……

前回の件の汚名返上をさせて頂けないかな、と。


女性社員:

ああ……私たちは普通に美味しかったですけどね。


イタリア:

まあ、上司さんに悪気がなかったことは分かっているが……

アレは、なかなかショッキングな出来事だった。


私:

なんかごめんね!ということで、どうでしょうか。



~翌日19時・待ち合わせ場所~


私:

全員参加してくれるとは嬉しいねぇ。

さて……遅れないように、15分前行動、と。


女性社員:

お疲れ様です。今日はご馳走になりますー。


MtF:

こんばんは、上司さん。寒いわねぇ。


私:

他の皆は、まだみたいだね。



~10分前~


男性社員:

おっと、お早い到着で。


私:

いやいや、まだ待ち合わせ前だよ。私たちが早すぎただけさ。



~1分前~


韓国さん:

お待たせしたようですね。


女性社員:

ほぼぴったり……というか、正確無比ですね。


韓国さん:

待ち合わせ時間は、待ち合わせ時間ですので。



~5分経過~


ムスリム:

スミマセン、遅れました。

イシャー(夜の礼拝)を済ませてから行かねばと思っていたら

電車を一本逃してしまって……


MtF:

いかなる時も最優先はそこ。ブレないわよね。


ムスリム:

はい。当然の務めデス。



~20分経過~


私:

イタリアくん、遅いな。

何かあったんじゃ無ければ良いけど。


女性社員:

……あ、来たみたいですよ。


イタリア:

やあ、皆おそろいで。

上司さん、今日はお誘いいただきありがとうございます。


私:

良かった。じゃあ行こうか。


韓国さん:

……遅刻したことに対する謝罪は、無いんですか?


イタリア:

え?ああ、待ち合わせは19時だったっけ。

仕事じゃないんだし、20分くらいなら誤差の範囲だろう?


韓国さん:

誤差……?


男性社員:

(小声)あ、これ文化の衝突だ。


ムスリム:

(小声)時間とは、人が決めた約束デス。

しかしその厳密性は…様々なんでしょうネ。


イタリア:

そんな表情をしないでくれよ、レディ。

楽しむための集まりだろう?

それくらいで怒らなくても良いじゃないか。


MtF:

つまり「遅れたけど悪気はない」ってことね。


韓国さん:

……思考回路は理解しました。納得はしませんが。


私:

まあまあ、全員揃ったんだ。

今日は忘年会だし、楽しく行こうよ。


男性社員:

時間感覚だけで、ここまで違うとは……


女性社員:

これが多様性、ってやつですね。


私:

ほんとだねぇ。待ち合わせ一つでこの有様。

未だに慣れないよ、どうしろと(´・ω・`)




・時間感覚

「何に重きを置いているか」が最も分かりやすく表れる概念の一つが、時間である。


日本における時刻指定は「その時刻に開始できる状態であること」を意味する。

そのため、5分〜10分前に到着するのがマナーとされてきた。

この感覚は今も昔も、大きくは変わっていない。


一方お隣の韓国では、かつて「コリアンタイム(少し遅れてくるのが美徳)」

などと揶揄される文化も存在した。

しかし現代の韓国、特に都市部では効率と即応を重視する「パリパリ(早く早く)」文化が主流である。待ち合わせ時間を「守るべき約束」として厳格に捉える傾向は、

若年層から中年層にかけて非常に強くなっている。


イスラム圏では「神との対話」、すなわち信仰があらゆる事柄に優先される。

ファジュル、ズフル、アスル、マグリブ、イシャー。

一日五回の礼拝は生活の軸であり、それを軽んじることは原則として許容されない。


そしてイタリア(南欧)。

これはややステレオタイプではあるが、彼らはその場の空気や楽しさを重視する傾向が強い。遅れたことへの謝罪から入ると、その場の空気が反省から始まってしまい、楽しさが削がれてしまう ―― 娯楽と社交の場にストレスを持ち込む方が不粋、という彼らなりの合理性があり、謝罪よりも「会えて嬉しい」という挨拶が優先されるのだ。


同じ「時間」という概念一つ取っても、

その価値の置きどころは、文化によって大きく異なる。

多様性とは、かくも扱いの難しいものである。

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