第五十八話:少子化
イタリア:
まあ…… "いつまで続くか分からない" って話は、
日本の技術に限ったことじゃないけどね。
今の西側諸国は、例外なく少子化という死神の脅威に直面している。
韓国さん:
そうですね。私の祖国なんて、世界最悪レベルですし。
男性社員:
あー、どうしようもない呪いみたいなもんですよね。
イタリア:
深く踏み込むと危険な話題ではあるけど、統計的な事実として、ね。
大学進学率が上がった先進国は、例外なく少子化という死神に取り憑かれている。
韓国さん:
教育費の高騰、結婚への躊躇、未婚・晩婚化、そして少子化……
流れとしては、必然ですね。
女性社員:
でも今さら「二十代のうちに結婚しろ」なんて言われても
正直、難しすぎますよ。
ムスリム:
……
私:
私の時代だと "結婚して子どもを育てるのが当然" みたいな空気だったけど。
今はなかなか、ねぇ。
男性社員:
俺も結婚願望ゼロってわけじゃないですけど。
現実を見ると、うーん。
ムスリム:
我々の文化では、家族は共同体の最小単位デス。
個人の自由を尊ぶあまり、その家族が消えてしまっタラ……
共同体も、文化も、消えてしまいマス。
ソレはとても、悲しいことデハありませんカ。
MtF:
……真理ねぇ。何も、間違っていないわ。
イタリア:
だが、それが分かっていても、手を出せない。倒せない。
少子化っていう死神は、そういう存在なんだ。
韓国さん:
その死神が、実際に鎌を振り下ろした時。
その国がどうなるかを世界に見せつけるのは……
私の祖国かもしれませんね。判ってはいるんですが、どうしろと(´・ω・)
・合計特殊出生率
少子化を語る際によく使われる指標が、合計特殊出生率である。
これは「一人の女性が生涯に産む子どもの平均数」を示す数字だ。
人口を長期的に維持するには、この数値がおよそ2.1必要とされる。
しかし現代の西側先進国では高くてもフランスの1.6程度で、
この2.1という基準をクリアしている国は、ほぼ存在しない。
(日本は1.2、韓国は世界最低レベルの0.7)
この数字が意味するのは、
「子どもの世代が、親世代より大幅に少なくなる」という事実だ。
出生率1.2なら、次の世代はおよそ4割減。
0.7ともなれば、6割以上も減るという計算になる。
しかもこれは一世代で終わらない。減った人口を基準に、さらに次の世代が
生まれるため、減少は雪だるま式に加速していく。
少子化とは、ある日突然起きる危機ではない。
気づいた時には、社会の土台そのものが静かに痩せ細っている――
そういう種類の問題なのである。




