第五十五話:文化改造
ムスリム:
……しかシ、日本では新年に初詣で神社へ行き、
二月にはバレンタインと名のついた商業イベントで色めき立ち、
お盆では先祖を供養し、ハロウィンで仮装し、クリスマスはパーティーを開く。
日本の宗教観は、まことに奇怪デース。
男性社員:
日本人としては違和感ないですけど。
成り立ちを並べてみると、確かに節操なくゴチャ混ぜっすね。
イタリア:
どんな宗教でもフラットに接して、自分たちの文化として楽しんでしまう。
ある意味では、最も平和的な宗教との付き合い方なのかもしれないね。
ムスリム:
……それを、私に振らないでくだサーイ。
女性社員:
良くも悪くも、日本人って
自分たちに合わせて "改造" するのが得意なんですよね。
宗教も、文化も、料理も、服も。
MtF:
そうね。ハロウィンも、カレーも、セーラー服も。
元の形とは、だいぶ別物になってるわね。
イタリア:
だからナポリタンみたいな勘違いも生まれるんだな。
女性社員:
そ、その節は……すみませんでした。
韓国さん:
一方でキムチのように、比較的そのままの形で浸透しているものもあります。
日本はある意味、多様性の極致なのかもしれませんね……
国籍、人種、言語を除けば。
上司:
うん。そのあたりはほとんど混ざってなくて、
耐性ゼロの人も少なくない。
イタリア:
英語くらいは適応すべきだと思うけどねぇ。
このグローバリズムの時代に。
男性社員・女性社員:
すみません…でも今さら、どうしろと(´・ω・`)
文化改造の実例:原型と現在地
ハロウィンの起源は、古代ケルトの祭礼「サウィン」に遡る。
これは一年の終わりにあたる時期に行われた先祖供養・死者の祭りであり、
日本のお盆に近い性格を持っていた。
死者や精霊がこの世に戻ってくると信じられていたため、
人々は悪霊から身を守る目的で仮面や異形の姿に扮した。
現在の「仮装イベント」という要素は、
この "霊をやり過ごすための変装" が娯楽化した名残である。
カレー
カレーの源流はインド料理だが、
日本の「カレーライス」は直接インドから伝わったものではない。
植民地時代のインド → 宗主国だったイギリス → 明治期の日本
という経路で伝来し、日本独自の改良が加えられた結果、
もはやインドのカレーとは別系統の料理となった。
興味深いことに、この日本式カレーが
再びイギリスへ輸出され、受け入れられている例もある。
セーラー服
セーラー服の原型は、19世紀の海軍水兵の制服である。
動きやすく、清潔感があり、規律を象徴する服装として評価され、
20世紀初頭、日本の女子教育現場に取り入れられた。
その後「女子生徒の象徴」として定着したが、
近年はブレザー型制服などに置き換えられ、急速に姿を減らしている。




