第五十二話:クリスマス1
私:
今年も一年お疲れさまでした、週末には部署合同で
クリスマスパーティーをやります。プレゼント交換会は500円上限で、
「もらったらちょっと嬉しい」をテーマにお願いします。
ムスリム:
……少し、よろしいデスカ。
私:
うん、どうしたの?
ムスリム:
申し訳ありませんガ、私たちは他宗教の祭礼には参加できまセーン。
私:
あ、そうなんだ……。
イタリア:
なるほど。信仰上の理由、というやつだね。
MtF:
うーん、尊重はしたいんだけど「個人的な信条」で
職場の催しから距離を置く、という話にも聞こえるわね。
他部署からツッコまれると、ちょっと面倒かも。
ムスリム:
私にとっては、個人的というより生活の根幹デス。
女性社員:
あの……これって、勤務時間中にやるんですよね?
私:
うん。今回は会社全体の行事だからね。
男性社員:
それなら、業務の一環って扱いですよね。
参加しないと、ちょっと浮いちゃう気も……。
韓国さん:
「参加しない自由」と「職場としての一体感」は、
必ずしも同じ方向を向きませんからね。
ムスリム:
申し訳ありまセン。神を軽んじる行為を、
業務だからという理由で行うことはできないのデス。
イタリア:
うーん……僕には、クリスマスはもはや宗教というより
文化行事なんだけどね。
MtF:
そうねぇ。信仰じゃなくて、季節のイベントとして
割り切ってる人も多いわ。
ムスリム:
だからこそ、難しいノデス。
"軽い気持ち" で扱えない人間も、ここにいマス。
(沈黙)
私:
……うん、もともと強制参加じゃない行事だ。
無理に参加する必要はないよ。
男性社員:
でも、それだと
「空気を読まない人」扱いされません?
私:
それは、職場側が考える問題だね。
信仰を理由に責めるのは、違う。
ムスリム:
……ありがとうございマス。
私:
とはいえ、全員が納得する形は正直難しいな。
どうしろと(´・ω・`)
・イスラームの宗教観
イスラム教において、他宗教の信仰行為に主体的に参加することは、原則として避けるべきとされる。これは排他的思想というより、唯一神への信仰を曖昧にしないための規範である。
そのため、他宗教の祭礼や祝祭――
たとえばクリスマスや宗教的意味を持つ祝賀行事への参加は、
信仰上、問題視される場合がある。
一方で、結婚式や葬儀といった場への参加は、必ずしも「宗教儀式への加担」とは見なされない。これらは多くの場合、人としての礼儀・社会的な祝意や弔意として位置づけられるためである。
つまり「何を信仰するか」を示す行為と、「人として敬意を示す行為」は、
イスラムにおいて明確に区別されている。
ただし、どこまでを許容範囲とするかは宗派や個人の解釈によって差があり、
一律の正解があるわけではない。
他宗教イベントへの参加を巡る判断は信仰の軽重ではなく、
その人がどこに線を引いて生きているかの問題なのである。




