第四十五話:韓国料理
韓国さん:
既に、皆さんは一度ずつホストを務めていらっしゃるそうですね。
となると……私が最後、ということでしょうか。
私:
う、うん。
でも韓国さんは途中参加だし、別に無理にやらなくてもいいからね?
韓国さん:
いえ。無闇に慣習を乱すのは本意ではありませんから。
きちんと務めさせていただきます。
男性社員:
美人の手料理かぁ……
それだけで、次回はもう勝ち確じゃないっすか。
女性社員:
ちょっと。
そういうの、思っても口に出さないでもらえます?
〜 当日 〜
イタリア:
やあ、今日はご馳走になるよ。
これ、お土産だ。薔薇とチョコレート。
韓国さん:
……ありがとうございます。
ムスリム:
本日は、よろしくお願い致しマス。
男性社員:
そういえば、韓国料理って、やっぱ辛いんだっけ?
女性社員:
うーん。身近だと、キムチくらいしか思い浮かばないですね。
韓国さん:
……ひとまず、席についてください。
今日は「韓国料理=辛い」という固定観念を、忘れて帰っていただければ幸いです。
男性社員:
アッ、ハイ。
女性社員:
す、すみません!
そういうつもりで言ったわけじゃなくて。
韓国さん:
悪気がないことは、分かっています。
ただ、母国の料理を "辛さ" だけで語られるのは、少し寂しいので。
~~ 本日の献立 ~~
・白い水キムチ(いわゆる漬物)
・チャプチェ(春雨を野菜・肉と合わせて甘じょっぱいタレで炒めた物)
・参鶏湯(鶏にもち米や野菜を詰めて煮込んだ、薬膳スープ)
・肉ジョン(薄切り肉に衣をつけて焼いた料理)
・韓国風茶碗蒸し
・梨のコンポート
男性社員:
……なんか。想像してたより、ずっと上品っていうか。ヘルシーですね。
女性社員:
チャプチェ美味しい!こんな料理、初めて知りました。
MtF:
うーん、メインの参鶏湯も優しい味。これは美容にも良さそうねぇ。
イタリア:
素晴らしい!
素材の繊細さを味わう韓国料理……これは、レディも安心して誘える。
韓国さん:
ふふ……では皆さん。
偏見で塗り固められていた味覚を、今日で少しだけ更新していって下さいね。
私:
(言葉の端々に、微妙なトゲを感じる)
怒ってるわけじゃ、ないんだよな……?ど、どうしよう(´・ω・`)
・韓国料理
お隣の国でありながら、日本国内で広く知られている韓国料理は、意外と多くない。
一般的に思い浮かぶのはキムチ、ビビンバ、韓国のり――せいぜいその辺りだろう。
しかし地理的な近さゆえか、あるいは食文化の下地が似ているからか、
韓国料理には日本人の味覚に馴染みやすいものも多い。
作中で名前を挙げた料理のほかにも、
サムギョプサル(豚バラ肉の焼肉)
トッポッキ(餅の甘辛煮)
プルコギ(甘めの醤油ダレに漬けた肉の煮焼き)
など、日本人にも親しみやすい料理は数多い。
「韓国料理=辛い」という先入観をいったん脇に置いてみると、
意外な発見があるかもしれない。




