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異文化理解したいのに、なぜか全員が多様性の地雷を踏み抜き、私の胃だけが死んでいく件  作者: めるのすけ
第八章:続々・食文化という多様性

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第四十四話:ヴィーガン2

女性社員:

大豆ミートといっても、見た目は完全にハンバーグですね。


韓国さん:

ええ。言われなければ気が付かないかもしれません。

ヘルシーで、健康にも良さそうです。


ムスリム:

ありがたいデス。今日は安心して食べられマス。


MtF:

ふふ、腕によりをかけたからね。さあ、召し上がれ♡



~~ 実食開始 ~~



全員:

(もぐもぐ……)


男性社員:

普通にアリっすねコレ。微妙に風味は違うけど、これはこれで美味い。


ムスリム:

味付けも優しいでスネ。

この添えられているソースとチーズも、ヴィーガン仕様なんでスカ?


MtF:

もちろんよ。ソースはお野菜だけで作られてるし、チーズに見えるそれも乳製品じゃなくて、大豆やカシューナッツが原材料なの。


イタリア:

…………うん。悪くない。悪くないんだが。


MtF:

あら、イタリアさん。お口に合わなかった?


イタリア:

い、いや。料理としては問題ない。とても丁寧だし、旨味もある。

だが…何かが足りない。足りないんだ!


私:

た、足りない?


イタリア:

このしっとり感、香り。とても完成度は高い。

だがしかしーー


MtF:

(ちょっと期待している目)


イタリア:

――どうしても "本物ではない" という意識が拭えないッ!


女性社員:

あ、そういう拘りなんだ…


イタリア:

チーズと言いながら、チーズじゃない。

ミートと言いながら肉じゃない!

料理は成立しているのに……私の心が、心がざわつくんだ!!


男性社員:

なんだろう。言ってる言葉は理解できるけど、意味が分からん。


韓国さん:

イタリアは食文化の矜持が強い地域ですからね。


ムスリム:

言うなれば、"宗教" ではなく "文化" の禁忌デスネ。


イタリア:

そうなんだ!そうなんだよ!!

まるで……まるでアイデンティティの一部が削られたような。


MtF:

あら、でも食べらるんでしょ?


イタリア:

美味しいは美味しいんだ!

ありがとう!


MtF:

うふふ、でもねイタリアさん。

こういう "価値観の揺らぐ瞬間" こそが多様性の醍醐味なのよ。


イタリア:

うぅ、理解はしているんだ。このホームパーティの主旨に合致していることも。

だが、私の中の何かが、追いつかない……!


女性社員:

なんか、深刻そうですね。


私:

理解が及ばない、どうしろと(´・ω・`)




・イタリアと "まがい物"

――紛い物は文化への侵害。これはイタリアに強く根付いている意識である。


イタリアでは、特にチーズ・ハム・ワインなどの伝統食品に対して

「名前の偽装は文化そのものへの攻撃だ」という強烈な価値観がある。

パルメザンチーズ、パルマハムなど…身近に流通しているモノは、実はDOP(原産地名称保護)という制度基準を満たしていなかったりするのだ。


EUでは本物のパルミジャーノには "どの牧草地で育った牛の乳か" 、"どの地区で熟成したか" といった厳しい規定を満たさないと名乗れない。パルマハムにも厳しい規定があり、世界中で "なんちゃってパルマハム" が出回った時期に、イタリアの生産者はEU議会に何度も異議を申し立てている。


要点はただ一つ。

「食は文化であり、地名や伝統は財産。ゆえに紛い物に名乗られては "文化そのものの価値" が侵害される」これがイタリアの価値観なのだ。

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