第12話 3月
(電車が走っている音)
(車端部にあるロングシートの席の前に吊り革を持って立つ)
(彼女の横に立つ)
「ん…おはよう…少年…」
「もしかしたら…今日がこの電車で会う最後の日かもね…」
「少年…今日が卒業でしょ?」
(彼女が安堵した顔で)
「でも良かったなぁ…少年が志望大学に合格できて…」
「そうじゃなかったら…困るもん…」
「えっ?」
「なんで困るかって?」
「そりゃあ…少年は私にとって大事な人だし…」
「ここまで一緒に過ごしてきて…関係ないわけないでしょ…」
(カバンからある物を取り出す俺)
「えっ?どうしたの…少年…」
(出した物を彼女に渡す俺)
「どうしたの…この包装されたプレゼント…」
「えっ?」
「これを…私に…?」
(驚く彼女)
「今までの…お礼?」
「いや…そんな…お姉さんは少年といれただけで十分楽しかったし…」
「いや…そんなこと言っちゃダメだね…」
「せっかく少年がプレゼントくれたのだもの…」
「しっかり受け取らないとね…」
「これ…中身開けていい?」
(頷く俺)
「うふふ…ありがとう…」
(包装を解く彼女)
「わぁ…ハンカチ!」
「…ありがとう…少年…」
(顔を近づけてきて)
「お姉さん…うれしい…とってもうれしい…」
「まさか…この電車で会う最後の日に少年に驚かされるとは…」
「お姉さん…びっくりだよ…」
「でも…お姉さんうれしかったよ…」
「少年と一緒にいられて…」
(電車が停車する音)
「あっ!」
「少年の…降りる駅…だね…」
(涙ぐむ彼女)
「ちょっと…寂しいな…」
「さようなら…少年…」
(電車の扉が閉まる音)
(4月…大学の入学式)
(電車が走っている音)
(車端部にあるロングシートの席の前に吊り革を持って立つ)
(隣のお姉さんに話しかけられる)
「少年……私のこと…好きなの?」
(動揺する俺)
「え?…どうしたの…少年…」
「この車両のこの位置が、駅から学校に行くために1番効率の良い場所だって?」
「ふん…なんだ…私と同じワケか」
(彼女がニヤついた顔で)
「うふふ…少年…さすがに驚きすぎだよ…」
(顔を近づけてきて)
「そんなに驚いた?」
「実はね…お姉さん…転職活動しててね…」
「4月から…声都大学の職員になりました…」
「少年と同じ大学だね…」
「でも…お姉さん言ってたよ…」
「この電車では最後…てね…」
「実は3月にはこの事決まってたんだけどね…」
「驚かそうと思ってね…」
(彼女が耳元で)
「…サプラーイズ…」
「うふふ…少年…照れてて可愛い…」
「これからもよろしくね…少年…」
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