第11話 2月
(電車が走っている音)
(彼女の横に座る)
「ん…おはよう…少年」
(ニヤついた顔で)
「いよいよ…今日だね…」
「え?…何かって?」
「またまた…本当は分かってるんでしょ?」
(彼女が顔を近づけて)
「お姉さんには…バレてるよ…」
「ほらほら…男の子ならこの日が1番ドキドキしない?」
(分からないふりをする俺)
(彼女がニヤつきながら)
「少年…そのまま気づかないふりをするつもり?」
(彼女が肩をツンツンして)
「今日は2月14日だよ…」
「ほら…バ…から始まるあの日だよ…」
(彼女が耳元で囁く)
「もし…当てられたら…お姉さんからご褒美あげちゃうかもよ…」
(彼女が口に手を当て)
「ほら…言ってみなよ…」
「バレンタイ…?」
(上目遣いで顔を近づけてきて)
「言わないと…ご褒美を…他の人にあげちゃうよ…」
(バレンタインと答える俺)
「んふふ…少年…大正解…」
「じゃあ…お姉さんから…ご褒美あげます…」
「ちょっと…待っててね…」
(カバンをまさぐる彼女)
(何かに気づいたような表情を見せ)
「あ…少年…窓の外見てみて…」
(座っている席の後ろに位置する窓の外を見る俺)
(チュッ)
(ガタンッ!)
(動揺する俺)
(彼女が何もなかったかのように)
「どうしたの?…少年…何かあった?」
(彼女が少し笑いながら)
「…って…そんなに照れる?」
(顔を近づけてきて)
「もしかして…初めて…奪っちゃった?」
「うふふ…まぁこれがご褒美です…」
(電車が停車する音)
「あっ!」
(驚きでしばらく動けなくなっているお礼)
「…ほらほら…少年の降りる駅だよ…」
「早く降りないと…学校遅刻しちゃうよ…」
(彼女が俺の肩に触れる)
(ビクッ!)
(やっと我に返る俺)
(急いで電車から降りる)
「またね…少年…」
(手を振って電車から降りる俺を見送る彼女)
(電車が閉まる音)
「うふふ…少年びっくりしてたなぁ…」
「でも…ほっぺだとしても…ちょっとやりすぎたかな…」
「まぁ…その隙にカバンにチョコも入れたし…」
「誰にも貰えないかもしれない少年には…これぐらいあげても良いかな?」
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