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5 瘴気の浄化任務

 その日、レオニスは王太子から呼び出しを受けた。

 その場には、王太子の他、アッシュとサファイラが揃っていた。


「来たな。適当に座れ」

「いえ、立ったままで」


 王太子はにやりと笑う。


「我が国の救世主とはどうだ?」

「それに関しては毎日、報告書を書いています。お読みになれば済む話です」

「あれで分かるのは行動記録だけだ」

「それで十分では?」

「私が知りたいのは、お前とリィドの私的な関係についてだ。久しぶりの再会なんだろう。旧交は温めたのか?」

「まさかそんなことを聞くために呼んだのですか?」

「そうじゃないが、気になるから知りたい」


 レオニスはちらりとアッシュと、サファイラを見る。

 アッシュは困惑し、サファイラは王太子と同じく好奇心を隠そうともしない。


「昔のことは昔のことです。もう何の感情もありません」


 レオニスはそう自分に言い聞かせるように言った。

 そうだ。もうリィドと自分は無関係なのだ。

 ただの護衛と、護衛対象にすぎない。二人の間にあるのはそれだけ。


「打ち解けるのにも時間が必要だろうからな」

「殿下。私も彼も、サファイラも皆、仕事を抜け出して来ているのです。これ以上、世間話に時間を費やすのはお控え下さい」

「アッシュ殿はお堅いなぁ。もっと楽しまないと。いつも他者を寄せ付けないレオニスが、唯一心を許した相手なんだよ。知りたくない?」

「申し訳ありませんが、私は全く興味はありません。──殿下、お願いします」

「全く。今度はお前のいない場で、レオニスを呼び出すとしよう」

「そうしてくださるとありがたいですね」


 アッシュはにこりと微笑んだまま言った。

 王太子はさらに溜息をつく。


「では、本題だ。レオニス。リィドと一緒に、ロコウの森へ行き、瘴気の浄化をやってくれ。あの森は王都へ続く街道に近い。速くも輸送に影響がではじめている」

「なぜリィドを連れて行く必要が? サファイラでいいはずです。何のために術式の解析を行ったのですか?」

「確かに普通の術式ならば、解析を行えば同じように使える。だけど、あれは例外。解析しただけじゃあ、そっくり同じものを使うのは難しい」

「天才だと日頃から言っているだろ。あの大口はどうした?」

「そうだよ、僕は天才だ。だから、出来ないとは言っていない。ただし時間はかかる。君にも分かるように言うのなら、剣の達人の動きを見て、見よう見まねでやったとしても、実践で扱えるようになる訳じゃない、ということかな。達人とそっくりそのままの動きを完璧にできるようになるには時間がかかる。まあ、僕は天才だから何年もはもちろんかからない。それでも一、二ヶ月は必要だ。天才の僕でもそうなんだからね。他の並の魔術師にはもっと時間がかかる」

「レオニス。お前が、彼の身を案じるのは分かる。だからこそ、同行しろと言っている」

「別にあいつのことなんて心配なんてしていません。あいつは昔から鈍くさくて、要領が悪いんです。いざという時に足手まといになると考えただけです」

「そこまで考えられるなら、そうならないようにしろ。現状、彼の力を借りなければ瘴気には対処できない。分かったな?」

「……」


 と、アッシュが気遣わしげに言う。


「レオニス。あなたがリィド様と同行するのに抵抗があるのというのなら、私が代わりに……」

「そんなことは言っていないっ」


 王太子とサファイラがにやつきながら、視線を交わす。


「何か?」

「お前がこういう話し合いで、声を荒げるなんて珍しいと思ってな」


(こいつら)


 完全にレオニスをオモチャにしている。


「そう怒るな。微笑ましいと思っているだけだ」

「用件が以上であれば失礼します」


 レオニスは頭も下げず、部屋を出た。

 大股で廊下を進んでいると、アッシュが駆け寄ってくる。


「レオニスっ」

「何だ?」

「本当に大丈夫なんですか。あなたとリィド様がどんな関係だったかは分かりません。しかし冷静でなければ、いざという時に……」

「誰にものを言っているんだ。俺がミスをすると?」

「いいえ、そういう訳では」

「だったら口を挟むな」


 レオニスはアッシュに背を向けた。

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