表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

プロローグ

教室の窓から見える夕暮れは、春の匂いを運んでいた。


綾小路葵は、今日も放課後の教室に残っていた。

入学から二週間。青陵学園の制服は、まだ少し肩に馴染まない。


誰もが認める優等生として、彼女はここでも完璧を演じていた。

クラス委員にも選ばれ、教科担任からの評価も上々。

だけど、そこに納得感や満足感といった類の感情は一切ない。


家に帰れば大きな洋館で、家政婦の藤堂さんと二人きり。

海外の両親からは、事務的な報告のような言葉しかない。

「青陵に入学したのね」「次の定期テストの結果を待ってるわ」


期待。期待。期待。

でも、それは愛情ではなかった。ただの、当然の責務。


夕暮れの教室で、葵は夕日を反射するスマートフォンを見つめていた。

長文のメールの中には、仕事の近況、展示会の成功、新しいプロジェクトの話など、葵にとっては正直どうでもいい話が列挙されている。

けれど、そこには娘への愛情など、一言も見当たらなかった。


窓に映る自分の姿が、少し歪んで見えた。

優等生という仮面は、今日も完璧に見える。


誰か、いないのだろうか。

この仮面の下を覗いてくれる人は。

この重圧を、理解してくれる誰かは。


新学期の風が、教室のカーテンを揺らす。

まだ誰も知らない。

この物語の行方を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ