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異世界でちっちゃな双子の勇者の保護者になりました  作者: ななくさ ゆう
第8章 旅立ちの時

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1.子どもでいられる限界

 俺の前に、レルス=フライマントとギルド長ダルネス=ゴッドウェイが座っている。

 双子やライト達は一緒ではない。今日は俺1人が呼び出された。


 おもむろに、ダルネスは口を開いた。


「ショート・アカドリくん。今日君を呼び出したのは他でもない。そろそろ、本当のことを話してもらえないかと思ってな」


 その言葉は、俺の胸をずきんと突き刺した。


「どういう、意味でしょうか」


 声が震える。

 おそらく、この2人はもう分かっているのだ。

 双子が勇者であること、そして俺のことも朧気に。


「失礼かとも思ったが、君の過去を調べさせてもらった。ギルドだけではない。あらゆる公共機関、民間機関を調べられるだけ調べた。結論を言えば、君は1年ほど前に突然魔の森に現れたとしか思えない。

 そして、君はあの双子の――今回の勇者の保護者となった。

 君が悪人でないことは見ていれば分かる。だが、魔王復活も噂される今、君という勇者の保護者が何者なのか、ワシらも知らぬではいられない」


 そこまで言って、ダルネスはじろっと俺を見た。


「ショート・アカドリくん。君は一体何者だね?」


 これは、隠しきれないな。

 だが……


「わかりました。1日だけ待ってもらえませんか。相談をしたいので」

「相談? 双子とかね?」

「いいえ。俺をこの地に送り込んだ者と」


 ---------------


「おこんばんわ、シルシルじゃ」


 シルシルが俺の目の前に現れる。衣装はどういうわけか和服、というか花魁風。


「……なんだよ、そのかっこう?」

「ふむぅ、さすがに最近、登場シーンのネタ切れでな。お主の国の文化を参考にさせてもらったのじゃ。似合うか?」

「……馬子にも衣装だな」


 他に言いようがなかった。

 まあ、これまでずっと、7日に1回呼び出しているわけだから、この出落ちネタがなくなるのはわかるが。


「それで、昨日の今日でまたワシを呼び出したのはなぜじゃ? そんなにこのシルシルちゃんに会いたいのか?」


 そう、俺は昨日シルシルに試験合格の報告をしていた。


「シルシル。相談がある」


 俺は、先ほどダルネスに言われたことを説明した。


「ふむ。まあ、そうじゃろうな。この地のギルドの(おさ)であれば、いいかげん気づくであろう。それで、相談というのは?」

「双子のことや俺のこと、話してもいいのか?」

「いいのかもなにも、ワシは話すななどとは一度も言っておらんぞ。特に双子のことは、むしろお主がなぜ誰にも言わぬのか不思議に感じておったくらいじゃ」


 双子が勇者だということは、これまで誰にも言っていない。

 いや、しょっぱなにミリスには話してしまったが、他には漏らしていない。

 アレルとフロル自身にもだ。


 確かに、シルシルに禁止されたわけではない。

 それでも、これまで誰にも言わなかった。


「俺は……俺は、あいつらに、あいつららしく育って欲しいと思っているんだ。勇者の双子ではなく、アレルとフロルとして」


 あいつらに初めて会ってから今日まで。

 あの2人は普通の子どもだった。


 もちろん、アレルもフロルも天才だ。アレルの剣術、フロルの魔法と頭脳、どちらも勇者の因子とやらのおかげなのだろう。

 

 それでも。

 あの2人は子どもだ。

 ただの小さな子どもだ。

 俺はずっとそう思って育ててきた。

 いや、俺が育てたなんておこがましいかもしれないが、俺はあの2人にもうしばらく、ただの子どもでいてほしいと思ってしまう。


 勇者様ではなく、無邪気なアレルと、おしゃまなフロルとして、楽しければ笑って、悲しければ泣いて、そんな風に暮らしてほしいと思ってしまうのだ。


 ダルネス達に、あの2人が勇者だと認めれば、きっとあいつらは今まで通りではいられなくなる。

 アレルやフロル自身に、お前達は勇者なんだと告げれば、どんな反応をするか分からない。


 それが恐くて、いままで黙っていた。

 まだ、あの2人にただの子どもでいてほしいと思って、ずっと話さなかった。

 ミリスも、俺のその意思を尊重してくれたのか、あるいは彼女自身そう考えていたのか、誰にも話していない様子だ。


「ふむ。それがお主の気持ちなのじゃな」

「ああ」

「じゃがのう……話を聞くに、さすがにもう限界なんじゃないかのう」


 そうかもしれない。

 ダルネス達はすでに気づいている。少なくとも双子が勇者だということは半ば確信しているようだったし、俺のことも調べていたようだ。


 なにより、アレルのあの天才性。

 もはや一冒険者の(うつわ)ではない。

 俺が保護者として制御できる力ではないだろう。


 フロルにしたってそうだ。

 彼女はまだ中級魔法までしか覚えていないが、それは単にこの町で覚えられる魔法がそれだけだからだ。

 おそらく、高位の魔法使いに習えば……それこそ、ダルネスに儀式をしてもらえば、彼女はとんでもない魔法使いとして覚醒するだろう。


 もう、あいつらをただの子どもとして扱える時間は終わったのかも知れない。


「わかった。確かに、もう限界なんだろうな」


 話すしかない。

 ダルネス達にも、双子にも。


「最後に1つ、まだ聞いていなかったことがある」

「なんじゃな?」

「俺の役目はいつまでだ?」


 俺の問いに、シルシルが言う。


「日本に戻りたくなったか?」

「……いつまで双子を見守れるのかが知りたくなった」

「そうか。そうじゃな。お主の役目が終わるのは……」


 シルシルはそう言って、俺と双子が別れる日について告げたのだった。

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