2.いざ、ダンジョンへ
そこはエンパレの町より東南東に徒歩半日。小さな洞窟だった。
「ここが、ダンジョンへの入り口ですか……」
俺がレルスに確認する。
「その通りだ」
洞窟の入り口には1人の見張り。もちろん、彼も冒険者である。
「レルス様、ご連絡は受けております。ついに彼らもレベル2ですか……」
実はその冒険者とも俺達は顔見知り。といっても、それほど親しくはない。エンパレの町のギルドで何度か見かけただけだ。
もっとも、やはり5歳のレベル1は目立つらしく、彼らは俺達のことをよく知っていた。
見張りはレルスに言う。
「では、どうぞ。レルス様に申し上げるのもなんですが、ご武運を」
「今回は私は付き添いだ。武運を祈るならば彼らに」
「はっ」
レルスに敬礼した後、彼は俺達一人一人の武運を祈ってくれた。
洞窟の入り口には鉄格子の扉があり、見張りが鍵を開く。
俺達は扉をくぐり、洞窟の中に入る。
念のため行っておくが、この洞窟がダンジョンなわけではない。ダンジョンへの入り口は洞窟の奥にあるのだ。洞窟自体はごく小さなものだ。
そして。
ダンジョンの入り口にたどり着いた。
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さて。
そろそろこの世界のダンジョンについて説明しよう。あくまでもレルスから受けた講義の範囲内だ。時間も限られていたし、どうやら試験のために『あえて伝えていないこと』もあるようだが、受けた説明はこうである。
ダンジョンとは、《《こことは違うどこか》》である。
空に浮かぶ球体――青いオーブに手をかざすことによって侵入することができる。
ダンジョンは入る度に姿を変える。ある程度の法則性はあるが、迷路のようなその姿は、なぜか毎回違う形になる。
ダンジョン内にはモンスターが無限に湧き出てくる。
ダンジョン内のモンスターを倒すと、魔石に変化する。
ダンジョン内にはなぜか『罠』や『宝箱』が存在する。
ダンジョンは複数の階層に分かれており、各階層に原則1つある赤いオーブに手をかざすと、次の階層へと進むことができる。
それぞれの階層には制限時間がある。制限時間を超えると階層内に毒素が充満し人間は死に至る。すなわち、制限時間以内に赤いオーブを探す必要がある。
制限時間があとどのくらいあるかは思念モニタに表示される。
階層を逆にたどることはできない。一度ダンジョンに入れば、最下層まで進むしかない。
ダンジョンの最下層には主と呼ばれるボスのようなモンスターがいる。
主は他のモンスターに比べてはるかに強力。
主を倒すと、青いオーブが出現しダンジョンから脱出できる。
レベル2への試験では、試験官の力を借りずにダンジョンをクリアーしなければならない。
試験官は基本的に手を出さない。逆に言えば、試験官が手を出さなくてはならない状況になった時点で、俺達は試験不合格となる。
また、クリアーできたとしても攻略手順に大きな不備があったり、あまりにも幸運が過ぎる場合は不合格になることもある。
レルスが説明してくれたのは以上の内容だった。
説明を聞いて俺がイメージしたのは日本で遊んだローグライクRPGである。ランダムで迷宮の形が変わる1000回遊べるRPGってやつだ。
ゲームと違うのは、失敗=死だということ。
途中でリタイアもできないわけで、なるほど、ステータスが低ければ試験を受けさせられないのも道理だ。
見張りがいたのも、別にダンジョンを護っているわけではない。能力や冒険者資格のないものが間違って迷い込まないように見守っているのだ。
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洞窟を進むと、確かに青く光る球体――オーブが宙に浮いていた。
「きれい……」
フロルが呟く。
確かに美しい。宝石よりもずっと。
アレルがレルスに尋ねる。
「これがオーブなのぉ?」
「その通りだ、アレル。この球体に触ればもうリタイアはできない。最後の階層の主を倒す以外にこちらの世界に戻ってくる方法はなくなる。
これが最後の確認だ。5人ともいいんだな?」
レルスは俺達にもう一度問いかけた。
「うん。アレルがんばりゅよ」
「私は自分のやれることをやるだけです」
「腕が鳴るわね。私のレンジャーとしての技術、どこまで通じるか試してやろうじゃない」
「今さら逃げねーよ」
アレル、フロル、ソフィネ、ライトがそう答えた。
最後に俺が言う。
「行きましょう。お願いします。レルスさん」
「ふむ、では6人全員で同時にオーブに触る。時間がずれるとそれぞれ別の空間に飛ばされるので気をつけろ」
ちなみにオーブが浮いている高さは1m50cmほど。
アレルとフロルは背伸びしてようやく手がとどくかんじだ。
ダンジョンも、6歳児が侵入することは想定していないのかもしれない。
俺達6人が同時にオーブに触る。
――すると。
世界が歪み、次の瞬間。
俺達は全く違う場所に飛ばされていたのだった。
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「これは……」
そこは、一見すると洞窟の中だった。
だが、先ほどの洞窟とは別の場所であることは疑いない。
壁の色は緑色。苔が生えているという意味ではなく、岩が不自然にエメラルドグリーンなのだ。
道は前後に伸び、遠くには分かれ道がいくつも見える。
俺達は思念モニタを表示する。もはや見慣れた画面に、いつもはない数字が書かれていた。
数字は100、いや、いま99になった。
「思念モニタの数値が0になれば、毒素が充満し始める」
レルスが説明する。
ノンビリしている時間はないと言うことか。
だが。
「きゅるよっ!」
アレルが『気配察知』でモンスターの襲来を予告したのだった。




