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異世界でちっちゃな双子の勇者の保護者になりました  作者: ななくさ ゆう
第2章 冒険者登録と初めての冒険

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7.成功の味、失敗の味

 なんとかツノウサギを倒した後。

 俺は、ツノウサギの死体をその場に残し、双子を連れてエンパレの町に戻った。


 当初の予定では夕方まで薬草採取をするつもりだったのだが、双子も、そして正直俺もモンスターに襲われてショックが大きかったのだ。

 事前にギルドでは『あの川原のあたりはめったにモンスターは出ない』と聞かされていたのに。

 いや、めったに出ないとはたまには出るということではあるのだが。


 仮に出たとしても、俺の火炎球があれば対処できると高をくくっていたが、結果はフロルに大怪我をさせてしまった。

 もし、またモンスターが出てきたらどうしようと思うと、そのまま薬草採取を続ける気にはなれなかった。


 町を囲む門までたどり着く。

 朝は見知らぬ兵士が警備をしていたが、今はミリスがそこにいた。


「よう、ショート。冒険者登録をしたんだって?」

「ええ」


 少し暗い声で答える俺に、ミリスは首をかしげる。


「薬草が見つからなかったのか?」


 どうやら、朝ここにいた兵士に『薬草採りの依頼』と話したのを聞いたらしい。


「いえ、薬草は見つかりましたよ」


 俺は言って袋の中を見せる。


「おお、すごいじゃないか、朝から短時間にこんなに」


 ミリスの言葉に、双子が喜ぶ。


「すごいー? アレル、すごいー?」


 いや、アレル、お前は1本も見つけていないだろ。


「フロルがどんどん見つけてくれました」

「へー、そりゃあすごいなぁ。確かに小さな草は子どもの方が見つけやすいかもしれないが」


 フロルがちょっと照れた顔を浮かべる。


「お役に立ててよかったです」


 そんな俺達に、ミリスはさらに尋ねる。


「だが、だとすると尚更分からんな。なぜそんなに暗い顔をしている、ショート?」


 ミリスの問いに、俺は素直に答えた。


「実は川原でモンスターに襲われました」

「モンスターにだと?」


 ミリスの顔に俄に緊張が浮かぶ。


「どんなモンスターだ。町に攻めてくる可能性は!?」


 確かに門の見張りとしては気になるところだろう。


「はい、ツノウサギという名前だそうです。一匹だけだったんですけど」


 俺の言葉に、ミリスがほっと一息。


「なんだ、ツノウサギが一匹か。おどかすなよショート」


 どうやら、ミリスからすれば、ツノウサギは問題にもならないモンスターらしい。


「で、それがどうかしたのか?」

「フロルが怪我をしちゃって。魔法で治したとはいえ俺の責任です」

「なるほど、だが3人とも無事だったんだ。良かったじゃないか」


 それはその通りだ。だが、小さな子を怪我させてしまったという罪悪感は拭いがたい。


「ふむ……ショート。1つ言っておくが、冒険者になったからには今後仲間の怪我や……それこそ死だって日常になる。一々致命傷にもならなかった怪我に落ち込んでいたらやっていられないぞ」


 ミリスの言葉は正しいのだろう。


「とはいえ、たしかに冒険者になりたてのころは、私もそこまで開き直れなかったがな」

「ミリスさんも冒険者なんですか?」

「もちろんだとも。そもそも門の警備を任される条件がレベル2以上の冒険者であることだからな。私はレベル3だ」


 おお。


「レベル3になるまでに色々なことがあった。実際、失った仲間もいる」


 ミリスは何かを思い出すように、そこで言葉を切った。


「ショート、お前達は初めての依頼を成功させた。ならばもっと明るい顔でギルドに戻るべきだ」


 先輩冒険者からのありがたい言葉。

 俺は「はい」と頷いたのだった。


 ---------------


 冒険者ギルドの受付にて。

 俺は採取した薬草をミレヌに見せた。


「はい。確かに薬草が12本ですね。受け取りました。こちらが対価になります」


 ミレヌは薬草を確認すると、銅貨14枚と引き換えてくれた。

 冒険者ギルドからの採取依頼の場合、ギルドに採取したモノを持ってくればお金に変えてくれるのだ。


「え? 銅貨12枚では?」


 薬草1本につき、1枚なのだからそういう計算のはずだ。


「その通りですけど、中に比較的大きな薬草もありましたので。まあサービスみたいなものだと思ってください」


 ミレヌはニコッと笑った。


「ありがとうございます」


 俺は頭を下げた。


「それにしてもまいりました。いきなりツノウサギに襲われてしまって」


 半ば雑談のように話す俺。待っている人もいないから大丈夫だろう。


「まあ。それは大変でしたね。大丈夫でしたか?」

「フロルが怪我をしましたが、魔法でなんとか。ツノウサギは俺の魔法で退治しました」


 その言葉に、ミレヌが首をひねる。


「退治された……ではその死体はどこに?」

「え? その場に置いてきましたけど……」


 俺の言葉に、ミレヌの顔色が変わる。


「あの、何かマズかったですか?」

「いえ、マズいというか……ツノウサギの死体なら銀貨1枚程度で買い取れたと思うんですけど……」


 え゛?

 俺の顔もミレヌと同じように引きつる。


「でも、今回はあくまでも薬草採取の依頼で……」

「そうですけど、それはそれとして、肉や革製品になるモンスターの死骸は買い取れますよ。もちろん、薬草以外の有用な植物とかを採取されたとしても同じです」


 マジか。


「ちょ、ちょっと俺、一度川原に戻って死体を持ってきます」

「はあ、ですが、もう手遅れじゃないでしょうか」


 それはどういう意味……と尋ねそうになって、俺はギルドの入り口に《《焼けたツ》》《《ノウサギの死体》》を持った少年冒険者達のパーティがいるのに気がついた。


「ミレヌ、ツノウサギの死体買い取ってくれよっ! 今日はラッキーだったんだ。川原になぜかこれが転がっていてさぁ」


 少年冒険者のリーダー格らしき子が、言いながら受付にやってくる。


 いや、そのツノウサギは……

 俺はミレヌにおずおずとたずねる。


「……この場合、どうなるんですかね?」

「ルール上は放置した獲物などの権利は拾った者に所有権があります。なにより、ショートさん達が倒したと証明できませんし」


 ですよね。


 ---------------


 宿に帰る道すがら。

 俺は深々とため息をついた。


「ごちゅじんちゃま、どーちたの?」


 アレルが心配げにいう。


「いや、別に……」


 銀貨一枚。いや、皮が焼けていたので少年達がうけとれたのは銅貨5枚だったようだが、だとしても。

 大金ではないにせよ、みすみす貴重なお金を逃してしまった。

 これで落ち込むなという方が無理だ。


 それに。

 ツノウサギとの戦闘で感じた俺達の未熟さの件もある。


 話に聞く限りツノウサギは最下級のモンスターらしい。それにあんなに苦戦しているようではとても冒険者としてやっていけないのではないか。


 俺達は知らないことが多すぎる。実力も不足している。

 ならばどうすればいいか。


「アレル、フロル。明日からギルドで剣術や魔法の訓練を受けよう」

「くんれん?」


 アレルが首をひねる。


「そうだ」

「わかったー、アレルがんばる。くんれんがんばるよー」


 元気だなぁ。アレルは。


「確かに、私たちには必要かもしれませんね」


 フロルも同意してくれた。

 よし。そうと決まったら、今日はゆっくり休もう。


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