第62話 近くて遠い距離
付き合ったからこそ、できなくなってしまうことがある。
そんな朝の、近くて遠い距離。
*葵Side
制服に袖を通した瞬間に、私は小さく深呼吸をした。
「今日は、いつも通りに過ごさないと!浮かれちゃダメだ!」
そんな声が1人の部屋で響き渡った。
◆◇◆◇
*翔Side
いつも通りの朝。いつも通りの通学路。いつも通りの学校。
ーなのに。
俺は今、これまでで一番といっていいほど平常心を意識していた。
今日から、葵と“付き合っている状態”で学校に行くのだ。
昨晩、葵との話し合いで「交際関係をみんなに言わない」と決まっている。
よって、彼女とあまり話せないということになる。
想像していたよりも、かなり辛い。
「おはようございます」
「おはよう」
葵ともっと話したい。
席に着くと、時哉に話しかけられた。
「おう、今日はやけにご機嫌じゃねえか。何かいいことでもあったか?」
「そうかな…?」
「ああ。あからさまにいつもよりテンション高いぞ?」
「そんなことないよ」
そう答えた瞬間に、後ろの席にいる葵の気配を感じた。
声をかけたい衝動を、必死に押し殺す。
ーだめだ。今日はいつも通りでいなきゃいけない。
「ふーん?そうか、まあいいけど」
時哉はそれ以上突っ込んでくることはなかった。
人との距離はしっかり推し量れる男であることを再認識したし、ありがたい。しかしその反面で、少し寂しく感じた。
好きな人がすぐそこにいるのに、表立って話せないというのも想像以上の拷問だ。
◆◇◆◇
*葵Side
席に着いてから、彼が後ろを向かないことを祈っていた。
彼が振り返ったら、目が合ってしまうから。
目が合ったら私は多分、我慢できない。
ー平常心、平常心…
いつもと同じ教室。
いつもと同じ朝の雑音。
なのに、なぜか私の胸の奥は落ち着かなかった。
お読みいただきありがとうございました!
何か時哉あたりが出てきたのめっちゃ久々に感じますね(笑)
次回は2人の昼休みの過ごし方を書く予定です。
次回投稿は3月1日(日)~3月7日(土)の間を予定しております。どうぞ、よろしくお願いします!
引き続き過去話の推敲もしていきます。
内容については以下の通りです。
※推敲履歴
1/06
01〜07話 一部文章・文末の変更
1/10
08〜11話(閑話①を含む) 一部不自然箇所の表現の変更、セリフの加筆・修正 など
1/11
12話 注釈位置の変更
2/07
60話 タイトルの修正(61話との統一)
14〜15話 一部不自然個所の表現の変更、セリフの修正、改行位置の修正
17~21話 セリフの加筆・修正、一部不自然個所の表現の修正、改行位置の修正
2/10
22〜26話(閑話②を含む) セリフの加筆・修正、一部不自然箇所の修正 など
3/01
01~05話 誤字の修正および行間の最適化
*カクヨムでも本作を連載しております。そちらでは一部推敲前の内容が含まれております。読み比べると表現の変化がわかるかもしれません。




