第61話 はじめてのお出かけ②
少し歩き疲れた足と、心地よい満腹感。
午後の水族館は、午前中よりもゆっくりとした時間が流れている気がした。
「次、どこ行きます?」
そう聞いた葵の声は、朝よりもずっと柔らかかった。
「あと30分後にイルカショーがあるらしいよ」
「え!?ほんとに?じゃあ、見たい!」
珍しくあの葵がはしゃいでいた。初めて見る光景だ。
「じゃあ、行こうか」
俺は息をのんだ。自然と指が絡まったからである。葵も同じ気持ちだったと知ると無性にうれしくなった。
やがて、ショー会場に到着すると、席に座った。あと数ミリで肩が触れるような距離だ。
「楽しみだなあ」
そのつぶやきが、俺に届くことはなかった。
「見て見て!イルカ、可愛いよ!」
そう言う葵の横顔のほうに、俺は目を吸い寄せられる。
「そうだな」
前から2列目なのでよくイルカが見えたのだが、いつもは水は飛んでこないと聞いていた。
それなのに。なぜだろうか。イルカが狙ったかのように飛び跳ねて水しぶきを飛ばしてくる。
「今日はいつもよりも水が飛んでおります。濡れないよう、お気を付けください。」
イルカがこちらを見て、してやったりとでも言わんばかりの顔をした気がした。
そんなイルカ様のお陰でびしょびしょの濡れネズミが2匹完成してしまった。
「めっちゃ濡れたな」
「そうですね」
2人で言いながら、ショップでタオルとTシャツなどを買い揃える。
「これはこれでお揃いコーデみたいになるので、結果オーライです!」
「まあ確かに」
時計を見ると、夕暮れ時を指していた。
この後は夜ご飯だ。かなり高値だが既に支払いまで終えていた。
「そろそろ、夜ご飯食べない?お店を予約してるんだ」
「え!?ほんとですか!?ありがとうございます!」
茜色の空の下、2人は手をつなぎ歩いて行った。周囲の者から見ても2人は幸せの絶頂とでも言いたげなほどまぶしく見えたという。
お読みいただきありがとうございました!
最近、たくさんお読みいただいている方がいらっしゃるようで、とてもモチベーションになっております!ありがとうございます!
次回も引き続き、2人の関係を見守っていただけますと嬉しいです。
次回投稿は2月15日(日)~2月21日(土)の間を予定しております。どうぞ、よろしくお願いします!
※推敲履歴
1/06 01〜07話 一部文章・文末の変更
1/10 08〜11話(閑話①を含む) 一部不自然箇所の表現の変更、セリフの追加・修正 など
1/11 12話 注釈位置の変更




