レベルアップ
私はもと来た道を全力で走っていた。このあとどうするか頭をフル回転させる。冒険者協会に協力を求める?いや、それだと時間がかかりすぎる。真がアレに勝てるとも限らない。キングアイスウルフはそもそも強い方のボスだ。それの3倍以上の大きさだった。もし大きさだけでなく、力や、思考まで3倍だった場合、あのダンジョンのレベルは優に8レベルを超えるだろう。時間を掛けるのは得策じゃない。なら騎士団に掛け合う?きっとそれも時間がかかるだろう。騎士団にそう簡単には会えないだろうから。なら学園のとある制度を使うしか無い。
『緊急のときは我々教師を呼び止めると良い。能力至上主義の学園の教師だけあってその実力は折り紙付きだ。』
私は学園に向かう。
「ん?どうした、そんなに焦って。お前この学園の生徒だろう?」
なんとたまたま、学園の前で先生に遭遇することができた。
「先生!真が!」
「一旦落ち着け、詳しく説明してくれ」
雪原のダンジョンに任務で向かったこと、そのダンジョンで大きさが桁違いのキングアイスウルフに遭遇したこと。真がそこに残って、戦闘をしていること。そして助けを求めに来たこと。すべて説明した。
「...話は聞かせてもらった。我が行こう」
そこに立っていたのは、私達の担任、魔王と呼ばれているディソイオノス先生だった。
〜〜〜〜
「道案内してくれ」
私は先生とともに雪原のダンジョンに戻っていた。先生の足の速さは異次元だった。案内してくれ、と言っている割にどんどん先に進んでいく。案内なんてしていないのに的確に私達が通った道を進んでいく。
「なるほど...この扉の先か?」
「はっはい!気をつけてください!」
その扉の先には...紅く、血のようにどす黒い霧があたりを充満していた。そしてその部屋の真ん中には、真が、倒れていた。
「真!」
「待て、入るな」
私の前に先生の手がかざせられる。
「だって!真が!」
「お前、死にたいのか?この霧、猛毒だぞ」
「じゃ、じゃあどうすれば...!」
「見てろ」
すると先生はその霧に向かって手をかざし、能力を発動した。そこにあったはずの霧はすべて消えていた。
「これで良いだろう。もう入ってもいいぞ」
私は真に駆け寄った。脈は...ありそうだ。ほっと胸を撫で下ろす。
「あいつ...この霧の中に長時間いて生きているのか?何者なんだ...?」
その瞬間、真の目が薄く開いた。
〜〜〜〜
なにか、愛海の声が聞こえる気がする。一人では無いようだ。俺は生きているのか?意識はある。体は一切動かないが。目は...開けそうだ。
「....!ま...!ま...と!真!」
目を開けるとそこには涙を浮かべなから俺のことを呼ぶ愛海がいた。
「心配、かけちまったみたいだな。」
「一応早急に治療を受けたほうが良いだろう。肩を貸してやる」
そうだ、愛海とは別の人がいることを思い出す。首を動かしてその者を視界にいれる。
「ディソイオノス...先生...!?」
なんとそこには魔王がいたのだ。なぜ?と思ったが彼がいるならもう安心だ。安心からか力が抜けて、俺は再度眠りについた。
〜〜〜〜
「ここは...」
俺が次に目覚めると知らない天井だった。
「ここは学園の医療施設だよ」
愛海の声が聞こえる。そんなものもあるのか、この学園には。
「目が覚めたか。全く、入学して二日目にして...一応状況を説明しておこう」
先生もいるのか。その後説明された内容を簡単に説明するとこうだ。まず、あの部屋には猛毒が充満していた。これは俺も分かっていた。次に、ダンジョンはボスを討伐したことにより、自然消滅が始まっていた。ボスはなんとか倒すことができたらしい。できていなかったら俺は死んでいただろうし、まあ想像通りだ。そしてあのダンジョンのレベルは最終的に10だと判断されたらしい。最高ランクだ。そしてレベル10のダンジョンの攻略を俺達は行った事になり、任務レベルは5などではなかった。基本的に8レベルを超えるダンジョンは数10人のパーティーを組んで、プロたちが攻略するレベルのものだ。レベル10なんてもってのほか。レベル10のダンジョンは任務レベルに変換すると推定15ほど。そのレベル10ダンジョンを攻略した俺達には功績15が与えられることになったらしい。つまり、俺達はレベルが1、上がった。
〜〜〜〜
1週間後、第一試験の説明が行われた。試験の内容はトレジャーハントだそうだ。学園の所有している近くの島で試験をするらしい。今は船で移動中だ。その島とやらに、三つの宝が隠されるらしい。その三つの宝を所有していたチームが試験合格者になるらしい。試験合格者のチームはレベルが2引き上げられるらしい。万が一、宝を複数所有していた場合、2つなら3レベル、3つなら4レベル引き上げられるそうだ。流石に一気に6レベルなんてことはできないらしい。ちなみにチームというのは最初の入学試験のときのチームだ。このチームを学園はいつまでも使い続けるらしい。試験期間は3日間。サバイバルもしろ、ということなのだろう。そして、最後のこれが一番の難関。宝を試験終了日に島の何処かに戻って来る船に乗っている教師陣に届けなければならないのだ。しかも4日目に入ったら試験は強制終了、入手した宝も無効化となるらしい。逃げ続けるわけにもいかないらしい。
「そろそろ到着するぞ。到着した瞬間、試験開始だ。我らの船が戻ってくるのは3日後の正午だ。」
というわけで、試験が始まろうとしていた。
「試験...開始だ」