終わりと始まり
「どうしてこんなことに...」
紅く染まった街を遠くから見つめていた「誰か」は静かに呟いた。
「きっと、この力はまたいつか暴走する」
「もう二度と、紅い忌月は見させない」
「世界の終焉、一度壊してリセットさせよう」
その「誰か」は紅く染まった空に手をかざした。
「どうせなら、世界自体生まれ変わらせようじゃないか」
そうして、その世界は、終わった。
〜〜〜〜
「あーつまんねぇ」
俺こと新名 真は公園のベンチに座りながらぐっと背伸びをする。
「入学試験三日前なのに何呑気なこと言っているの」
俺の隣に座っている保久田愛海...俺の親友は言ってくる。そう、俺等は三日後に最高峰の能力学園の入学試験を受けるのだ。この世界は圧倒的能力至上主義なのだ。最低Nから最高T、順番としてはN、E、D、C、B、A、S、Gだ。NはNormalを表し、GはGodを表すらしい。俺のランクは、◆◆だ。ああ、そうだった、俺には封印がかけられているのだ。一部の情報がかき消され、力も封印される言わば呪いだ。ちなみに愛海のランクはAらしい。「水」を操る能力だそうだ。便利そう。
閑話休題
兎にも角にも、試験のために準備をしなければならないのだ。試験と言っても、能力主義なのであんまり学習面は求められていない。あって損はないが。まぁ、準備と言っても戦闘訓練なのだが。
「それじゃ、そろそろ始める?」
そう、訓練とは愛海との練習試合だ。意外と力は拮抗していたりする。
「始めよう」
場に緊張が走った。どちらかが動けば同時にどちらかが動く状態。いつまでも待っている訳には行かない。一歩足を後ろに下げ、力強く踏み込む。俺の能力はそこそこ使いづらいため、素の力だけで戦う。右手には刃を削った片手剣を持って愛海に向かって勢いよく駆ける。
「水刃」
愛海は水の刃を飛ばす。もちろんそんな攻撃に当たるはずもなく、剣で受け流す。愛海の後ろから剣を薙ぐ。
「水影」
そんなに簡単にはいかず、いつの間にか幻影と移り変わっていたらしい。ということは今本物は...
「っ!」
体を思い切り横に倒し、剣を上に向けて支える。危なかった。しかし攻撃は終わらない。追撃に備え、後ろに跳ぶ。愛海は幻影を四つほど出してきて同時に攻撃してくる。安置は...真上!思い切り真上に跳び、空中で体を回転させる。落下の勢いのまま、幻影を見抜き、本物を攻撃する。愛海は水でレイピアのようなものを生み出し対応する。
「いつの間にそんな技を習得したんだ。武器の具現化なんて始めて見たよ」
「ふふん、やるときはやる女なので。」
愛海の剣筋をよく見る。頭、心臓、首...あたったらただでは済まなそうな場所を狙ってきている。流石に殺意は感じられないが、痛いことには変わりないだろう。水のレイピアの火力がどんなものかも分からないしな。回避はできそうにないな。愛海の手首を掴んで投げ飛ばす。そして腰元からナイフを取り出して投げる。幻影がいつどこから来るかわからないので警戒を強くする。
「は?」
なにか少し暗くなっているなと思って上を向いてみたら、あらなんとそこには大きな水の塊が浮いていた。どのくらいかだって?軽く300メートルは超えていると思うレベルだ。
「水の惑星 落ちろ」
はは、どうやって逃げればいいんだ?これ。苦笑いしか浮かばない。恐らく五秒もしないうちに俺に直撃するだろう。愛海にも当たるのでは?と思ったがすでに退避済みのようだ。逃げる事はできない。ならば...
「壊すしかないだろ!」
仕方ない、能力を発動させるしかないだろう。
「能力発動!」
そこにあったはずの水の惑星は跡形も残らなかった。