1話
1話
禁断の魔法を発動した結果、俺が目覚めたのは全く覚えのない場所だった。
身体はボロボロで、心はもっとボロボロだった。
「ねえ、お兄ちゃん大丈夫。」
少女が声をかけてくるけど俺は答えることができなかった。
しばらくして少女が走って行ってしまった。
心配してくれたのに悪いことをした気分になったが、すぐにどうでもよくなってしまった。
半日が過ぎただろうか、雨が降ってきたが立ち上がることさえできなかった。
雨にうたれ続けて体調さえも悪くなってきて意識が朦朧としてきた。
このまま死んでしまうのも仕方ないかもしれない。
だって俺は世界を救えなかったのだから。そのまま俺は意識を投げ出した。
次に目が覚めたとき俺の目に映ったのは見たことのない屋根だった。
俺は死んだんじゃなかったのかと思ったが、腹が空腹を訴えてくることで生きていることを実感できた。
布団から起き上がろうとしたら「目が覚めましたか。」と聞かれた。
見た感じ15、16歳くらいの少女だろうか。黒髪で肩より少し長いくらいの髪を後ろでくくっている少女がこちらを見ていた。
「すまないがここはどこだ。」
「ここは魏という国の端っこの方にある遊楽という村ですよ。ところで貴方は異国の方ですか。倒れているのを妹が発見しなかったら死んでいたかもしれませんよ。」
どうやらあの少女が助けを呼んでくれたので助かったらしい。しかし魏という名前の国は聞いたことがない。
禁断の魔法によって本当に異世界へと飛ばされたようだ。
「じゃあ君が助けてくれたのか感謝する。」と言った瞬間に腹がなった。
それを聞いた少女はクスってわらい「すぐに食べ物を持ってきますね。」と言って鍋の方に向かう。
鍋の蓋が開くといい匂いが漂ってきた。
そして少女は鍋の中身の入った器とパンを持ってきてくれた。
「どうぞ。ゆっくり食べてくださいね。」
「ありがとう。いただきます。」そう言って器にスプーンを入れて中身を掬った。
食べてみると優しい味がした。
「美味しいよ。」というと「よかったです。」と言ってくれる。
二口目を食べる前に「君は食べないの」って聞いてみたら「私はお腹がいっぱいだから。」と返ってきた。
そういうので遠慮なくいただいたらまた眠気が襲ってきた。
「ごちそうさまでした。悪いんだけどこのまま眠らせて・・・・・・。」言い終わる前に意識がなくなった。
次に目が覚めたら辺りは真っ暗だった。
後ろで声が聞こえる。「おねいちゃん、お腹がうるさいよ。お腹が空いてるなら私の分半分食べたらよかったのに。」
「ごめんね。明日はちゃんと食べるから。」
どうやら俺が食べたのは姉の分の食事だったようだ。悪いことをしてしまった。
ここで起きても気遣いを無駄にするだけなので眠ることにした。
翌朝目を覚ますと少女2人があられもない姿で眠っていた。
妹は下着姿で姉の下着を捲り胸を吸っているようだ。
「ダメ、そんなに吸ってもお乳は出ないから。」とうわごとのように呟いている。
昨日は気づかなかったが姉の方はそれなりな大きさの胸を持っているようだ。
妹が完全に下着をまくりもう片方の胸まであらわになって桜色の突起が見えてしまった。
名残惜しいがこれ以上無断でみるのも悪いので家を出ることにした。
家の周りには小さな畑があるが作物は少なそうだ。
少し遠くに森が見えるのでそこで獲物を狩ることにした。
せめてものお礼のつもりで行ってみたが、森でウサギを3匹捕らえられた。ついでに木の実も幾つか取って帰る。
喜んでくれるといいなと思いながら家に戻ったら「何処に行ってたんですか。心配しましたよ。」と怒られてしまった。
「すまない。助けてもらったお礼にと思って獲物をとってきたんだ。」そう言ってウサギを差し出す。
「うわあ。立派なウサギですね。ありがとうございます。じゃあすぐに捌いちゃいますね。」そう言ってウサギをもって裏に行ってしまった。
それにしてもここはどこなんだろう。
俺が住んでいたところとは建物も違うし雰囲気も違う。
家の中に入ると妹ちゃんはまだ眠っているようだった。
椅子に座ってボーっとしていると姉が戻ってきた。
「ごめんなさい私ったら自己紹介してなかったですね。私はシュウキといいます。妹はシュウレイといいます。」
「すまない。俺もすっかり忘れていた。俺はリオンと言う。」
「リオン様はどちらから来られたんですか?」
「よくわからないんだ。それより様なんていらないよ。リオンでいい。」
「そうなんですね。立派な鎧をつけておられたのでお偉い方なのかと。」
「別にえらくなんてないさ。それよりもここには他に誰か住んでないのか?」
「父も母も亡くなりましたから。いまはたまにおじさんが様子を見に来てくれます。」
「そうなのか。それは済まないことを聞いた。」
「いえ大丈夫です。もう何年も前のことなので。」
「じゃあ生活費はどうやって賄っているんだ。」と聞いたら、シュウキの顔が一瞬暗くなったように見えた。
「この村の村長さんの家で催しがあってそこに行くと僅かだけどお金がもらえるんです。」
「そんな催しがあるんだな。突っ込んだことを聞いてすまなかった。朝食にしようか。」と言うと申し訳なさそうな顔で
「すいません。うちには一日一食分しか食料がないんです。」と答えた。
「それは大丈夫だ。さっき藪の中で木の実をとってきたから一緒に食べよう。」そういってアイテムボックスから木の実を取り出して籠の中に入れる。
「いいんですか。うちには払えるものがないですけど。」
「助けてもらったんだこれくらいなんともないさ。」と言うと嬉しそうに1つ手に取った。
「いただきます。」シュウキがかぶりついたのを見て俺も食べる。
まあ不味くはないが甘さは足りないな。
妹のシュウレイはまだ起きないようだ。
「ところでリオンさんはこれからどうしますか?」
「特に何も考えてはいないかな。行く当てもないし。」
「じゃあしばらくここで暮らしますか。」
「俺は助かるけどいいのかい。こんな見も知らぬ男を住まわせて。襲っちゃうかもしれないよ。」
「リオンさんにその気があれば今朝がたに襲い掛かってるはずですよ。」
「それはわからないよ。今朝はまだ誰かいるかを警戒していたかもしれないよ。」
「それでしたら今なら力づくで押し倒せますよ。もう誰もいないことはわかってますから。それにそうなったら私に人を見る目がなかっただけなので仕方ありません。」
「そうかい。それならしばらくお世話になろうかな。」
こうして俺の田舎生活が始まったのだった。