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目を覚ました青年は死神と出会う。1

 ──オレは、何をしてたんだっけ?

……思い、出せないな。

ここは……何処だろう。なんか、背中が冷た……


「はっ」


 瞑っていた両目を勢い良く開けた。気を失っていたらしい。オレは現状、自分が横たわっているという事実だけ理解した。

見える景色、天井というものがなく、どこまでも遮るものがない水色をしている。

「空……? ……っ」

背中に違和感を感じ、上半身を起こす。

「え、水……?」

自分の格好を確認すると、身体の後ろ半面が水浸しになっている。周りも見渡す。

(水溜り……? いや、浅瀬……にしては海岸でもないし……)

見渡しても、なにもない。天井がない上部と同じに周りにはなにもなかった。

ただ、辺り一面雲がない空の様な水色をしていた。

「なんだ……ここ……」

オレは目覚めたてのせいか頭が回らず、とりあえず座ったまま片方の手のひらで床らしき水面を軽く叩いた。

ちゃぽん、ちゃぽんと水が手のひらに付いたり落ちたりする音がするだけで、なんの変化もない。


「………………」

(頭がぼーっとするな……)

 ここに来るまでの経緯もなにも思い出せず、ただただ呆然としていた。

とはいえ、状況把握にも動かずにいられず、立ち上がった。

「よっしょ……」

服からぽたぽたと水が滴り落ちる。

(服は……オレの物……だよな……)

水の滴り具合から、ここに気を失って居たのは短い時間ではないことがわかった。

「にしても……」

風もない。見渡す限りはなにもない。少し遠くに何かがありそうな気もしない。他の人の気配もしない。()()()()()()()()()()()()()()()

「ほんと、どこだよここは……」


「あ、起きた?」

「ふぁ!?」

 パシャンッ……

背後から急に声が聞こえ、オレは振り返りながら後ろに飛び上がりその場に尻もちをついた。

「は、な……」

「花?ここにはなにもないけど……」

「い……や、そう、じゃなくて……」

オレの後ろにいきなり現れ、声をかけた人物。ここには人の気配すらしなかったのに。

「え、っと……君、はいつからここに……?」

「ここに来たのは随分前だけど……。」

「でも、見渡しても誰もいなかったし……」

「あー、そういう意味? そういう意味なら今?」

わけがわからない。まるで瞬間移動でもしました。という口ぶりだった。


「今さー、人手不足なんだよねー」

 勝手に話し始めたその人物は、見た目的にはオレとそんなに変わらなさそうな年齢の女性で、長い赤毛の髪を一つに束ねていた。

何より違和感を覚えたのは、その服装……童話に出てくる赤ずきんのように真っ赤で長いコートを羽織っていた。そして、手に持って担いでる大きな鎌……まるでコスプレをしているようだった。

「人手?不足?」

(なにかのイベントのか……?)

「そっ。だからさぁ、君にも来て早々悪いんだけど手伝って欲しくて!」

「いや……オレはそういう趣味ないし……」

「趣味とかそういう問題じゃないでしょー仕事だし。」

なにがおかしいのか彼女はケラケラ笑っていた。

「……? 君の仕事なんでしょ……?」

「ん?いや、どうかな……。アタシだけの仕事じゃないし。君もここにいるってことは、君もそうなんじゃない?」

「…………?」

「あー!自己紹介がまだだったね!アタシは『メル』。君、名前は?」

彼女は未だに座り込んでいるオレを見かねて、名乗りながら手を差し出した。


「えっ……と……」

 彼女の手を取り、立ち上がりながらオレも名乗ろうと、した。

が、名前が出てこない。

黙り込んでしまったオレをみてメルは、

「じゃあ、とりあえずナナシくん46号でいいや」

「え、よくはないだろ……」

「これからよろしくね!46号くん!」

「よろしく……ってオレまだ手伝うもなにも言ってないんだけど……」

「じゃあ、このなにもない場所でどうするの?なにするの?」

「それは……」


 確かに、なんのアテもない。

メルが話しかけてくれなければずっと途方に暮れたままだった。

「大丈夫だよー、アタシも最初は戸惑ったけど今じゃ管理者までにはなれたしね!」

「へぇ……偉いのか?」

「この仕事じゃそこそこ……? 一応全員に仕事を与えてる立場かなー」

「同じくらいなのに……すごいな」

「同じってなにが?」

「歳だよ」

「あはは、そんなのここでは関係ないよー」

(フラットな会社……?なのか?まぁ、コスプレイベントなら……それもあるのか)


「それで、何するんだ? あんまり……その……恥ずかしい格好とかは嫌なんだけど……」

「格好?」

「コスプレ系のイベントかなにかなんだろ?そんな格好してるし……」

「…………」

メルが一瞬黙った。顔を斜めに傾けたまま。

と思うと、なるほどと言わんばかりの両手で仕草をし、オレに言った。


「アタシ、死神だよ?」

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