03.何かの前兆
騒がしい廊下の真ん中で俺は黒聖会長と目があった。
その瞬間、一気に場が空気が凍りつく。
「あ、あいつって……」
「魔王だ! やばいぞ、黒聖会長が危ない!」
外野が黒聖会長の危機を心配する中、彼女はなんの躊躇いもなく俺に近づいてくると、
「おはようございます、魔白くん」
と、一言。
俺に挨拶をしてきたのだ。
「あ、ああ……おはよう」
咄嗟に返すと、黒聖会長はふふっと笑みを浮かべそのまま去っていった。
「お、おいおいあの魔王にも動じないなんて……」
「流石は黒聖会長……いえ、聖女宝華様!」
聖女って……
まぁあの見た目であの中身じゃ聖女と言われても不思議じゃないか。
眩しいほど輝いている銀色の髪に海色の瞳。
ハーフアップにし、黒色のリボンで結んだその姿はまさしく清楚系美少女。
「漫画の中から出てきましたって感じだよな、本当に」
挨拶しただけで周りがキャーキャー言うのも、何となく理解できる。
……ん、待てよ。挨拶?
そういえば俺、黒聖会長と面識ってなかったよな?
いや、考えてみれば面識どころか話したことすらない。
でも向こうは俺の苗字を呼んでいたような……
「……まぁいいか。どっちにせよ、一時限りのことだし」
普段から色んなことに気を遣いすぎて疲れているから、下手なことで頭を使いたくはない。
「さて、今日もぼっち学校生活を謳歌するかね」
そんな虚しい呟きと共に、俺の一日は始まったのだった。
だがこの時は俺は思ってもいなかった。
まさか今日が、新たな日常の転機になるなんて。
♦
あれから数時間が経過した。
一限、二限と何事もなく授業が行われ、気が付けばお昼になっていた。
「さてと、今日もいつもの場所に行くか」
弁当を持って外に出る。
俺にはいつも使っている昼飯スポットがあった。
本来なら、ぼっち飯の定番は学校の屋上とかトイレとかになるが、俺は違う。
環境的にはそのどちらも遥かに超える場所だ。
「今日も静かだな」
やってきたのは本校舎のすぐ近くに隣接する旧校舎。
その裏側だ。
ここは人が来ない上、風通しもいいからぼっち飯には最適の場所だ。
おまけにかつて使っていたのであろう錆びたベンチもある。
食後の昼寝だってできるまさに最強のスポットだ。
「よし、今日も飯食いながらゲームイベントの周回を……」
そう思った時だ。
「ねぇ、あんた聞いてんの?」
「ひ、ひぃぃ! 分かりました! もうしません、もうしませんから!」
こ、声……だと!?
まさかこの場所に人が?
「そんな馬鹿な! 入学から今に至るまでここに人がいたことなんて……」
とはいえ声がするのは確かなのだ。
チラッと覗いてみると、そこには全身黒のローブを羽織った人物と正座をして頭を下げる丸刈りの男子生徒の姿があった。
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※あと一話更新します!