01.魔王と呼ばれし凡人
俺、魔白優斗はどこにでもいる普通の高校生だ。
少なくとも、俺はそう信じているのだが……
「おうおう兄ちゃん。ちょっと面かせや」
時刻は午前8時10分32秒。
俺は登校中、不良に絡まれていた。
今月に入ってまだ5日しかたっていないのに既に10回目だ。
はぁ……またかよ。
そう思いながら、俺は振り向かずに返答する。
「えっと、兄ちゃんって俺のことですか?」
「お前しか周りにおらんやろが。いいから来いや!」
「ちょっ――」
不良は俺の肩に手を乗せる……が、その瞬間、ピタリと動きが止まった。
気になって振り向くと、そこには金髪を靡かせ、鼻と口に派手なピアスを拵えた不良が涙目になっていた。
「お、おまおまおままままま!」
「おま……?」
呂律が回っていない。
もはや会話続行不可能といった状況の中で、不良は掠れた声でこう叫んだ。
「ま、魔王……魔王ユウトだぁぁぁぁぁぁ!!」
不良はそれだけ言うと、一目散に走り去っていた。
「……はぁ」
力のないため息が出る。
一体何が起きたのかと他の誰かに説明を求められたら、こう答える。
俺にも分からない、と。
別に漫画とかに出てくるような魔王と呼べるようなほど力が強いわけじゃないし、特別な能力もない。
一部を除けば、あくまで俺は凡人だ。
ただ言えるのは俺は昔から絡まれ体質があることだった。
特に理由もないのに、色々な事件に巻き込まれたりするいわゆる不幸体質なのだ。
それがさっき言った一部を除いての意味。
その体質の影響は中々なもので、さっきみたいな不良を始め、中には裏社会の方々にも一方的に喧嘩を売られたこともある。
これだけ聞けばいつ死んでもおかしくないと思うだろう。
だが、俺にはもう一つ特殊な体質があった
それは相手を圧倒するオーラのようなものを放つことが出来ることだ。
さっきの不良も俺の顔を見た瞬間に逃げていったように、俺には並みならぬオーラが全身に宿っているらしい。
全く持って自覚はないが、かつて友人だった人間の証言からとんでもない質量のオーラが圧力をかけてくるんだと。
そのおかげもあって俺は未だに殺されかけたことは一度もない。
というか、喧嘩自体もしたことがない
困ったことと言えば、裏社会の方々に組に入るよう勧誘されたくらいだ。
それもこの日本で1、2を争う巨大組織に。
誘ってきた奴は確か本家の若頭とか言ってたな。
当然、丁重にお断りしたが。
「はぁ……」
本日二度目のため息。
とはいえ、こんな体質でずっと生きてくれば、そりゃため息の一つや二つ出る。
おかげさまで俺の影響力は日に日に大きくなっている。
さっきも言っていただろ?
あの不良が最後に言い放った言葉だ。
……そう、魔王。
俺はいつしかそう呼ばれるようになっていた。
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※あと3話ほど投稿予定です。