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六星高校妖怪研究部~迷子の座敷わらし~  作者: 望月おと
【宝物か、ガラクタか】
14/15

ガラクタ①


 ツルの家の近くに副部長と風見、影助と九井の姿があった。


「おい、水守。あの呼び出しの仕方は、良くないぞ!」

「だって、あぁでも言わないと、あなたたち来ないでしょ?」

「……風見さんはともかく、俺は来たよ」

「おい、こら! えーすけ! お前だって、『嫌だよ。もう家着いたし。こんな雨の中、外に出たくない』とか言うだろ!?」

「すごい、風見さん! 一言一句、その通りです!」

「……副部長、なんで言うかなー」


 一連の流れを見ていた九井が大きなため息を吐きだした。


「お前ら、本当に緊張感ねぇな。いいか? あの雷すらも気配に気づけなかったんだぞ? 相手は相当な手練れだ。こんな緊張感の無さじゃ、全員あの世逝きだぞ?」

「お前、大丈夫か? 雨で鼻が鈍ってるんじゃないか?」

「月影の人たち、ここにはいないと思うけど?」

「油断するなよ。相手は、あの雷家の結界も抜けて侵入してきたんだ。神出鬼没と思ったほうがいい」


 「そうそう」の声と共に黒髪の丸渕メガネをかけた少年が彼らの前に現れた。黒のワイシャツに黒のズボン、全身黒で統一されている。身長は、影助よりも少し大きいくらい。風見の顔が一瞬で青ざめる。水守も「え……」と驚いた声を上げた。九井も開いた口がふさがらない。唯一、面識のない影助が彼に話しかけた。


「どうして……ここ、俺が張った結界の中」

「へぇー。君が張ったんだ、この結界。僕にとっては、【暖簾(のれん)】でしかないんだ。ごめんね」

「……暖簾って」

「やめろ、えーすけ」


 風見が影助と謎の少年の前に割って入った。少年は、風見を見上げて歪んだ笑みを向けた。空気が一気に変わり、ゾワッと全身が逆立つ。背筋が凍るとはこういうことをいうのか。風見の大きな背中が妖気避けになっているとはいえ、影助は悪寒で身震いしていた。風見自身は風を纏っているため、彼に届く前に分散され、相手の妖気は届かない。


「久しぶりだねー、風見ィ。容姿がずいぶんと変わっちゃったから、最初誰だか気づかなかったよォ」

「岩木……いや、今は別人格か。お前は相変わらずの【二重人格】だな」

「嫌だなァ、そう呼ばれるの。オレだって、(まなぶ)なのにィ。雷は、まだ来ないのォ?」

「さぁなー。龍ちゃんは、いつも準備に時間かかるから」

「あのボンボンらしいなァ」

「お前、なんで月影なんかに入ったんだよ?」

「なんでってェ……學が妖術師に目覚めちゃったからだよォ。あのまま、起こさなければよかったのにィ」

「どういう意味だ?」

「そのまんまの意味だよォ。……お、来た来たァ。──遅かったねェ、雷ィ」


 結界の中に入ってきた部長に、背後に顔を倒すような姿勢で岩木は笑みを向けた。部長の眉間にシワが寄り、明らかに不機嫌なのが分かる。


「なんだ、()()か。俺は、學に直接会えると思ってたんだが」

「ははァ~! 残念だったねェ~! 學、お前たちに会いたくないんだわァ。お前たちからしたらァ~、【友達】とか、學との思い出はキラッキラの宝石みたいなモンかもしれないけどォ~。學からしたら、ガラクタなんだわァ~。思い出したくもない、邪魔な粗大ごみ。だって、學は望んでなかったんだからねェ。【妖術師】になること。それをさァ~」


 一瞬だった。無意識に繰り返している呼吸。その息を吸った瞬間。岩木の顔が部長の視界いっぱいに広がる。部長が一歩下がる間もなく、胸倉を掴むと軽々と上に岩木は持ち上げた。グッと引きあがっていく襟元。喉が圧迫され、部長の顔が苦しさに歪む。


「人が嫌がることはしちゃダメだってェ、習ったでショ? な~んで、強制的に目覚めさせちゃったかなァ? 雷ィ~」 

「【人が嫌がること】、今あなただってやってるじゃないですか! 話し合いがしたいなら、今すぐその手を放すべきですよ!! 座敷童ちゃんを連れ去った誘拐魔めっ!!」


 ビシッと人差し指を岩木に向け、どや顔で文句を言い放った聖海。部長の背後から急に出てきた聖海に「なんだ!?」と面食らっている岩木。その隙に風見が小さい風を起こし、雷と岩木を引き離した。


 「あ~……立花……」と頭を抱え出す九井。「本当、緊張感ないよね……」とあきれ顔の影助、「立花さんらしい」と小さく笑う副部長。空気を変える天才──いや、天災かもしれない。豪快な風見の笑い声が結界内に響く。


「はははははっ! 最高すぎるわ、立花!! お前、やっぱ面白いわ!!」

「だって、本当のことじゃないですか!!」

「立花、この一件が済んだら覚悟しておけ」

「え……なんでですか!? 私のおかげで、部長は助かりましたよね!? ね、部長!?」

「うるさい、黙ってろ。──颯志と水守、立花はツルさんの家に入れ。影助と九井は、この場に残れ。解散!!」


 部長の声に弾かれるようにして、風見と副部長、そして聖海は結界の外に飛び出した。結界に残った三人も、すっかり気持ちは戦闘モードに切り替わっている。


「あのバカ……。本当、アイツの孫だわ」

「でも、立花さんのおかげで空気の入れ替えできたんじゃない?」

「……えーすけ。立花をおだてても、ロクなことにはならないぞ。──さぁ、話し合いの続きをしようか。()()


 


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