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プロローグ
誰にでも【大切なもの】はある。だが、人によって価値観は違う。自分にとっては【宝物】でも、傍から見たら【ガラクタ】に見えるかもしれない。
「はい、これあげる」
「折り紙のツル?」
「そうだよ」
「これ、アタイにくれるの? もらってもいいの?」
真っ赤な振袖を着た幼女は目に宝石を宿したようにキラキラと輝かせ、折り紙でできたツルを見つめている。幼女の頭をやさしく撫で、老婦はひだまりのように微笑んだ。
「もちろんだよ」
「ありがとう!! 大事にするね!!」
「喜んでくれてありがとうね」
「どうして、ツルちゃんがアタイに【ありがとう】って言うの? 【ありがとう】って言われたら、【どういたしまして】って言うんだよ」
一瞬驚いた顔をした老婦だったが、「そうだよね」と笑い出した。仏間に置かれた仏壇の中、眩しく微笑む幼い我が子と目が合った。あの子も同じことを言っていたわね……。今となっては、遠い日の記憶。目の前で笑う幼女に老婦は我が子の面影を重ねていた。
「──決めたっ! アタイ、ここに住むっ!! ツルちゃんちの子になる!!」