コウ君とデート
「……えっと、婚約……」
「何度言っても却下だ」
父さま、頑なです。
「どうしてもか?」
「ミィに婚約者などまだ早い。どうしてもと言うなら我を倒してからにしろ」
「いやそれやったら魔界と天界の大戦争になるだろうが」
しっかりしろ親バカ、と天王さま。でも父さまはあくまで真面目な顔をしていて冗談ではなさそうなのです。その眉間には深いシワが刻まれてます。
暫しの沈黙の後、先に折れたのは天王さまでした。
「―――分かった。婚約の話はまた今度にしよう」
「今度もなにも、一生することはない」
「ブレないな」
父さまの親バカっぷりに天王さまは引き気味なのです。
「ゴホン、まあ婚約の話は一先ず置いておこう。その代わりと言っては何だが姫に頼みがある」
「なんです?」
「我が息子とデートをしてほしいのだ」
「でーとです?」
背後の父さまがズモモモモと不穏な気配を醸し出してます。でもそこはさすがの天王さま、明らかに不機嫌になった父さまを気にも留めず話を続けます。
「もうすぐコウの誕生日なのだ。だから誕生日プレゼントとしてコウと二人で出かけてはくれないか?」
「ミィはいいのですよ」
コウ君とお出かけ、楽しそうです。
チラッと背後のを見ると、父さまはまだ難しそうなお顔をしていました。
「おいおい、婚約話は先延ばしにしてやったのだ。これくらいいであろう。姫もよいと言っているし」
「……護衛兼保護者としてモフ丸を連れていくのならば許可しよう。あと門限は厳守だ」
「了解した。息子にも伝えておこう」
その後、天王さまは父さまとお仕事の話をしてから帰っていきました。
***
そして、でーと当日になったのです。
「ミィ、その恰好はちょっと可愛すぎるんじゃない?」
「それもう父さまとオルフェ兄さまとイルフェ兄さまに言われたのです」
リーフェ兄さまに言われたのでコンプリートです。
今ミィが着ているのは特筆することもない普通のワンピースなのにみんながもうちょっとダサい服を着ていけと言います。ミィ、可愛くないお洋服はあんまり着たくないのです。
「幼子同士のデートなんてただのお出かけであろう。過敏に反応しすぎなのだお主達は」
モフ丸は父さまからリーフェ兄さままでの一連のやり取りで既に呆れ返っている。
「ぐぬぬ……」
「ほれミィ、そろそろ時間だ。行くぞ」
「はいなのです」
モフ丸に促されてお部屋を出る。今から集合場所である魔王城の玄関に向かうのです。
待ち合わせ場所に行ったらもうすでにコウ君と天王さまがいた。
「おい小僧、今日は随分とめかし込んでいるな」
「どうも」
おお、早速コウ君がオルフェ兄さまに絡まれてるのです。
「あ、ミィ」
「コウ君おはようなのです!」
「おはよう」
テトテトとコウ君に近付いていくと、ギュッと手を繋がれた。
「じゃあ早速行こう」
「はいです! 父さま、兄さま、行ってきま~す」
「ああ、気を付けて行ってくるのだぞ」
「は~い」
ミィとコウの背中が見えなくなった頃、魔王は鷹揚に言い放った。
「―――さて、後を追うか」
「「「賛成」」」
「お前達……」
既に尾行する準備万端な魔王一家を天王は呆れた目で見た。




