イルフェ兄さまのお話
「それにしても、ミィの母上は懐の広いお人だのう」
モフ丸がある日、母さまのことをそう評した。
「どうしてです?」
母さまを褒められるのはうれしいですけどなんか急ですね。
「だって、リーフェはお母上が直接生んだ子ではないのに他の兄弟と同じように接していたであろう? 息子が一人増えても動じない精神はあっぱれだ」
「なるほどです。でもモフ丸、後から増えた息子は一人じゃないのですよ?」
「……?」
きょとん顔のモフ丸がかわいいのです。
「イルフェ兄さまもミィが拾ってきたお兄ちゃんなのです!」
あ、モフ丸が口をあんぐり開けちゃいました。ミィが閉じてあげましょうね。
ミイはモフ丸の顎に手を当てて開いた口を押し戻してあげました。
「お? ミィなにしてんだ? モフ丸いじめちゃダメだぞ?」
「いじめてないのです!」
む~とすると、ケラケラ笑ってるイルフェ兄さまに抱っこされました。
「ミィ達はなにをしてたんだ? イルフェ兄さまも混ぜてくれ」
「ちょうど兄さまの話をしてたところなのです」
「へぇ~、なんの話をしてたんだ?」
「ミィがイルフェ兄さまを拾ったって話です!」
「随分懐かしい話してんな。でもそうか、モフ丸には話してなかったもんな」
イルフェ兄さまはそう言うと、近くにあったソファーに座りミィを膝にのせた。そして隣をポンポン叩いてモフ丸を呼び寄せる。モフ丸はテコテコと歩いてきてソファーの上に伏せした。イルフェ兄さまに頭を撫でられてご機嫌そうなのです。
そこで、 モフ丸がハッと顔を上げた。
「そうだそうだ、リーフェの衝撃が強すぎて忘れかけておったが、そういえば前にチラっとイルフェとも血は繋がってないと言っておったな。すっかり忘れておったわ。それで、イルフェがミィに拾われたというのは本当なのか?」
「ああ、本当だぞ。な~ミィ」
「はいなのです!」
ミィが拾ったのでもちろん本当なのです。
「俺はな、元々は普通の人間だったんだ」
「イルフェ兄さまは人間界では有名な英雄さんだったのです」
「ほう」
どうやらモフ丸の興味を引いたようです。尻尾をふりふりして続きを促します。
「そうだな~、俺は人間の中では強かったから戦とかで大活躍してな、上り詰められるとこまで上り詰めたから旅に出ることにしたんだ」
「贅沢なやつだのう」
「んで、旅の途中でうっかり死にかけてミィに拾われたんだ」
うむうむ、イルフェ兄さまはうっかり食料を切らして餓死しそうになってたところを魔獣に襲われたんですよね。案外うっかりさんなのです。
「それで、あんまりにもミィがかわいいかったから父上に頼んで息子にしてもらったんだ」
「動機がミィの兄らしいのう。だが、それならばイルフェはミィの弟になるのではないか?」
「あ? ミィは妹一択だろ」
「……」
あ、兄さまのお返事にモフ丸が呆れてます。
「それに俺の方が年上だったしな」
「はいです」
「そういえばミィは何歳なのだ?」
お、モフ丸いいところに気付きましたね。
「ミィは今五歳なのです。ちなみにイルフェ兄さまを拾ったのは二歳の時です」
「ほう、じゃあお主らが兄妹になったのは結構最近のことなのか?」
最近……どうなのでしょう……?
「モフ丸、魔族の歳の数え方は人間とは違うんだぞ」
「そうなのか?」
「ああ、人間で言う十歳が魔界の一歳だ」
「!」
モフ丸がビックリしてます。そっか、モフ丸は人間界にいたから魔族のことはあんまり知らないんですね。
「だからミィは人間で言うと五十歳くらいなのです」
「とんでもなく若作りだのう」
「成長速度が違うからミィはまだまだ赤ちゃんだけどな」
イルフェ兄さまに後ろから抱っこされてほっぺをモチモチされる。ミィはもう赤ちゃんじゃないのです。
「魔族は十年で丁度人間の一歳分くらいの成長なんだ」
「なるほどのう」
あ、ちなみにイルフェ兄さまは途中までは人間の年齢で、魔族になってからは十年で一歳計算の方法で年をとってるのです。今は三十歳くらいだった気がします。
「三十歳か、若く見えるのう」
「だろう」
モフ丸の言葉にイルフェ兄さまは気をよくしたみたいです。確かにイルフェ兄さまは二十代中盤にしか見えないですね。
「まあ、俺よりもリーフェの方が断然年上だから本来ならあいつが兄の筈なんだがそこはスルーだ。ミィに拾われた順ってことだな」
「リーフェ兄さまは一応神様ですからね」
わたし達の会話を聞いていたモフ丸がゆらりと尻尾を揺らす。
「ふむ、お主らは本当に不思議な家族だのう」
「にゅふ、もうモフ丸もその不思議家族の一員なのですよ」
ミィがそう言うと、モフ丸は数回目をパチパチと瞬かせた後に微笑んだ。
「そうだったのう……」
「にゅふふっ!」
照れて尻尾がばっさばっさなってるモフ丸もかわいいのです。
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