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前世は猫、今世は(文字通り)魔王の箱入り娘です!  作者: 雪野ゆきの


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母さま、天界に帰る



「じゃあそろそろ私達は天界に戻るわね」

「え、もうですか?」


 ミィは母さまに抱き着きました。母さまがミィを抱っこしてくれる。


「もうと言っても、ついつい一月くらい経ってしまったもの。体調が悪くなる前に帰るわ」

「……」


 むぅ。体調のことを言われたらなにも文句言えないのです。


「ミィ、俺はまだ平気だからもうちょっといてやっても……」

「ダメよコウ君。いくらコウ君が天界の王族で私よりは魔界の空気に耐えられるとはいえ、魔界に来たのは初めてなんだから」

「でも……」

「ダメよ?」

「はい」


 コウ君も母さまの黒い笑みには敵いませんでした。


「弛んでる息子達に喝も入れられたし、ちょっぴり成長した娘も見られて私は満足よ。またすぐに会いに来るわ」

「はい……」


 ちょっぴり落ち込むミィのほっぺに母さまはちゅーをしてくれました。

 最近兄さま達がげっそりしてると思ったら母さまにしごかれてたんですか……。母さまはお仕事の鬼ですからね。


 母さまがコウ君の背中を押す。


「ほらコウ君、あなたもそろそろ素直になりなさいな。いくら本心はバレバレでも言葉にすることは大切なことなのよ」

「う……」


 コウ君が恥ずかしそうに俯いてミィの手を握ってきました。


「ミィ」

「はいです」

「またすぐに会いに来るから、俺のこと忘れんなよ……」

「もちろんなのです」


 ミィがそう返すと、コウ君は嬉しそうに少しだけ微笑んでくれました。




 そして、母さまたちはササッと荷物をまとめると、あっさりと飛び立っていってしまいました。

 白い羽で羽ばたいていく後ろ姿をミィ達は見送ります。


「毎回思うんですけど、なんかこう……子どもたちとの別れを惜しむとかそういうのはないんでしょうか」

「それをすると余計離れがたくなるってのが母上の談だよ」

「そういうもんですかね」


 ミィがちょっと寂しく思ってると、リーフェ兄さまに抱き上げられた。そのままほっぺ同士をくっつけられ、ウリウリされる。


「母上の分まで兄さま達がミィに構ってあげるからね~!」

「むきゃ~!!」


 そうしてリーフェ兄さまとじゃれ合っていると、イルフェ兄さまとオルフェ兄さまも寄ってきた。


「おいリーフェずるいぞ」

「そうだ。最近は母上と間男がミィを独占してたんだから俺達にも触らせろ」


 そう言ったイルフェ兄さまとオルフェ兄さま、そして二人に対抗したリーフェ兄さまにギュウギュウされる。


「くるしいのです!」

「ごめんごめん」


 リーフェ兄さまが笑いながら謝ってくる。むぅ、全然悪いと思ってないのです。


「あれ? そういえば父さまはどうしたのです?」


 いつもならそろそろ混ざってくるはずなのに……。


 チラリと目線をやると、そこには宙を見て放心してる父さまがいました。


「あ~、なんだかんだ父上と母上は仲いいからね」

「ラブラブだよな」

「母上が帰って父上が一番寂しがってるな」


 上からリーフェ兄さま、イルフェ兄さま、オルフェ兄さまの発言です。

 ミィ達四兄妹は無言で顔を見合わせると、同時に一つ頷きました。心は一つなのです!





「父さま!」

「?」


 意識が現実世界に戻ってきた父さまにわたし達は一斉に抱き着きます。ぎゅーなのです!


「ミィ達は父さまと一緒にいるのです!」

「……これちょっと恥ずかしいな」

「うむ……」

「あはは」


 イルフェ兄さまの呟きにオルフェ兄さまが同意した。イルフェ兄さまは楽しそうに笑ってる。


 不意に、父さまが両手で自分の顔を覆う。


「どうしたのです?」


 ギュウギュウしすぎちゃいましたかね?


「我の子ども達が良い子すぎてつらい……」

「!」


 どうやら父さまは感極まってたみたいです。


 目尻にきらりと光るものが浮かんでいたのは、見なかったフリをしてあげました。




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