おでかけなのです!
大量のお小遣いをゲットして小金持ちなミィです。
「これはいっちょお買い物をしなきゃなのです!」
わたしはお出かけ用の洋服に着替えてそう宣言した。
「モフ丸、お買い物にいきますよ」
床でぷうすこ寝ているモフ丸の首に手を回し引きずっていこうとした。
「……おもたいです。モフ丸自分で歩いてください」
「……もうちょっと頑張れ」
モフ丸が片眼をチロッと開けてそう言った。
……元の位置から10センチくらいしか移動してませんね……。
「父さま、おはようございますです!」
食堂にいた父さまに抱き着いて挨拶をすると、抱き上げられ頬にちゅっとキスをされる。ミィも父さまの首に頭をすりすりしてマーキングしておいた。
そのまま父さまの膝の上でごはんを食べ終わる。
「ミィ、今日は俺とリーフェがついて行くぞ」
「ミィ一人でも行けますよ?」
「うちは『可愛い子なら懐にいさせよ』に方針転換したんです~」
わたしの眉間を人差し指でうりうりするイルフェ兄さま。ムッとして顔のパーツが中心に寄る。
「むぅ」
「ぶちゃいくな顔になったな。かわいい」
どっちですか。
むにっとほっぺを両手で潰された。
「ここに商人を呼べばいいのに」
オルフェ兄さまがちょっと不満そうにそう言った。
「久々にみんなに会いに行きたいのです」
「……」
「まあまあ兄上。俺らがちゃんとついて行くし」
「ちげぇよリーフェ。自分が仕事でミィとお出かけできないから拗ねてんだよ」
イルフェ兄さまがニヤニヤしながらオルフェ兄さまを煽る。
城の玄関まで父さまとオルフェ兄さまがお見送りにきてくれました。
父さまによってわたしの首にキュッと鈴の付いたリボンが結ばれる。苦しくないし緩くもない絶妙な加減だ。父さま、さては陰で練習しましたね。
わたしはチリンチリンと自分の首についた鈴をいじる。
「父さま、これなんです?」
「護りの魔石を我らに位置が分かるように加工したものだ」
「ほうほう」
ハイテクですね。
「飼い猫みたいで愛いのお。似合っておるぞ」
モフ丸が褒めてくれました。今日はモフ丸も一緒にお買い物にいきますよ。
「じゃあ父さま、オルフェ兄さま、ミィ達はいってくるのです」
「ああ」
「気を付けて行ってくるんだぞ」
二人に手を振ってわたしは歩き出した。
両手をイルフェ兄さまとリーフェ兄さまにそれぞれ繋がれる。モフ丸は後ろから歩きでついてくる。
魔王城は小高い丘の上にあるので街に行くには坂を下っていく必要がある。
「乗り物は使わんのか?」
「乗り物を使うと目立ち過ぎちゃうので今日はなしなのです。モフ丸も歩かないとおでぶちゃんになっちゃいますよ」
「我は太っていてもきゅーとだからいいのだ」
モフンと胸を張るモフ丸。
「内臓脂肪はかわいくないのですよ」
「数百年後はその言葉自分に帰ってくるからな運動不足」
「だから今運動してるのです」
「これはお主の年齢では運動とは呼べぬぞ」
あれ?いつの間にかミィの方が小言を言われてるのです。
小言を受け流してたらいつの間にか街に着いてました。
「いつ来てもここは賑やかですね」
「魔王のお膝元だしな」
わたしを片腕で抱っこしたイルフェ兄さまが言う。そう、わたしは自分の足で歩いてたはずだったのにいつの間にか兄さまに抱っこされてました。モフ丸の視線が痛いです。
「ミィ、最初はどこに行きたい?」
「もちろん、いつものとこ!」
「いつものとこ?」
モフ丸がコテンと首を傾げている。
「あ、そっか、モフ丸とお買い物にくるのは初めてでしたね。モフ丸にミィの行きつけのお店を紹介してあげるのです!!兄さま、ごーです!」
「あいよ」
そして、兄さま号に乗ってわたしは行きつけのお店に着いた。看板を見てモフ丸のテンションが若干下がった気がしたけど、きっと気のせいですね。
兄さまが降ろしてくれたので、自分で扉を開けてお店に入る。
「ごめんくださ~い、なのです」
「あらまぁミィ様!お久しぶりですねぇ!!本日いらっしゃると連絡をいただいて待っておりましたのよ!」
「にゅふん」
出迎えてくれたのは馴染みの店主のお姉さんだ。ギュッと抱きしめられてたわわなお胸にほっぺがムニッと潰される。母さまを思い出しますね。
「あら、ミィ様ちょっと成長されましたか?」
「いえ、一ミリも成長してないのです」
「……まぁ、ごめんなさいねぇ」
気にしてないので大丈夫なのです。魔王家は長寿なので元々成長は遅いし、小さいままだといつまでも甘えてられますからね!
「じゃあ今までと同じサイズで大丈夫ですわね。新たに採寸し直す必要はないようですし」
「はいです」
「ミィ……」
ちょこんとお店の中でお座りしてたモフ丸に声をかけられた。
「なんです?モフ丸」
「ここはなんの店なのだ?表の看板には『箱の店』と書いてあったが」
「その通りですよ。箱の専門店なのです。ミィが入ってる箱は大体ここの商品なんですよ」
「ミィが寝ている棺桶もか?」
「もちのろんなのです」
あれはとってもいい商品です。箱なら形は何でもよかったんですけど、おまかせで注文したら棺桶型で届きました。寝る場所が棺桶ってジョークがきいてていいですよね。
店内には大中小様々な大きさの箱が置いてあり、そのデザインも色々だ。ただの段ボールから宝石をあしらった高価なものまでこの店には揃っている。
うむ、マニアックな要望にも対応できるいいお店ですね!
「ミィ様が広告塔になってくださっているおかげで、ペットを飼っている方々から自分のペットの寝床を作ってほしいという注文をひっきりなしにいただきますわ」
「ミィはペットと同じ扱いか」
モフ丸が呆れたような声を出す。
「ミィ様が猫のように愛らしいのは魔界では常識ですわよ、モフ丸様」
えへへ、照れるのです。
「それで、今日はどんな箱をおつくりしますか?」
「足を伸ばして入れるのもいいんですけど、久々にみっちりスッポリ嵌れる箱がほしいのです」
イメージはおでぶ猫ちゃんが毛とか胴体のお肉をはみ出しつつ箱に入ってる感じなのです。
「まあミィ様は本物のねこちゃんではないので内側はやわらかい素材でお造りしますね。小さめのクッションを抱いて丸まるとピッタリなサイズになるかと思います」
「はいなのです。あ、あとこのモフ丸を抱っこして寝られるサイズの箱と、モフ丸の寝床もお願いするのです」
「はい、かしこまりましたわ。できましたらお城にお届けいたしますね」
「はいです」
お姉さんは笑顔で裏に入っていった。
「ミィ……」
モフ丸が意外そうな目でわたしを見てきました。
わたしは腰に手を当てて胸を張ります。
「にゅっふんっ。今までちゃんとしたモフ丸の寝床がありませんでしたからね。モフ丸を拾った飼い主としてミィが用意してあげるのです」
「!ミィはいい子だのう」
「えへへ」
モフ丸の首に手を回してむぎゅっと抱き着くと、モフ丸は鼻先でわたしの頬をスリスリしてくれる。
「癒されるねぇ兄上」
「だな」
***
お店を出たら、リーフェ兄さまが肩車をしてくれました。視点が高いのが新鮮です!背が高くなった気になるのです!
モフ丸はちゃっかりイルフェ兄さまに抱っこされてる。
「ミィ、次はどこに行きたい?」
「う~ん、お腹が空いたのでなにか食べたいのです」
「じゃあお昼にしようか。なにが食べたい?」
「おさかなです!」
「じゃあ魚料理が食べられるところにいこうね」
「はいです!」
楽しみです。
そこから暫く人通りの多い大通りを歩いていくと、一際賑わってるご飯屋さんがあった。お店の外までお客さんが並んでいる。兄さまはそこを指さして言った。
「今日はあそこでご飯を食べようか。魚料理に限らずとてもおいしいらしいんだよ。ねぇイルフェ兄上?」
「ああ、俺はたまに部下と行くな。どの料理も美味いぞ」
「おお!」
舌が肥えてるイルフェ兄さまがおいしいって言うなら期待大なのです!
「ちなみに、今日はミィがなにを言ってもあそこに行くつもりだったので既に予約済みです。並ばないで入れるよ」
「ちょっと釈然としないですけど兄さまぐっじょぶなのです!」
そして、わたし達はお店に入った。人気店だけあって店内は広く、人で賑わっている。
そこかしこからいい匂いが漂ってきます。じゅるり。
清潔感もあって雰囲気もいい感じなのです。
「ミィはなに食べたい?」
リーフェ兄さまがメニューを見せてくれる。どれもおいしそうなのです。
イルフェ兄さまはさっさと注文する料理を決めて膝にのせたモフ丸をなでなでしている。手持無沙汰なんですね。
「むぅ、煮魚もこの揚げたのも捨てがたいのです」
「じゃあ両方頼んで半分こしようか」
「はいです!」
リーフェ兄さま優しい。
「決まったか?じゃあ店員呼ぶぞ」
「は~い」
「ふおおおおお!おいしそうです」
わたしの前の机にはおいしそうな料理が並んでいる。
「じゃあ食べるか」
「はいです!いただきますなのです!」
はむっと煮魚を一切れ口に入れる。
むぐむぐ。
「ん~!うまうまです!」
「お刺身もお食べ」
リーフェ兄さまがお刺身を食べさせてくれる。
「ん~!これもおいしいのです!」
新鮮なのが分かるお刺身です。臭みも全くありません。
「……」
「……兄上、なんて顔してるの……」
イルフェ兄さまが拗ねた子どもみたいな顔してる。むーん、て効果音が聞こえてきそう。
「リーフェばっかりずるい。俺もミィにあーんする」
「ばっちこいなのです」
イルフェ兄さまのステーキも密かに狙ってました。
一匹で黙々と食事をしていたモフ丸がゆらりと尻尾を揺らす。
「仲がよいのう……」
「にゅふんっ」
わたしはがま口財布から取り出したお金をレジに出した。もちろん全員分の料金です。
「え」
財布を取り出そうとしたイルフェ兄さまがポカンとしてます。
「今日はミィが払うのです」
「いや、それは兄の威厳が……」
「それはちょっとねぇ……」
「気にするななのです」
兄さま達が微妙なお顔をしている間にわたしは店員さんからおつりを受け取りました。
「さあ、次のお店に行くのです!」
微妙な顔をする二人と一匹を連れてわたしはお店を出た。
***
「父さま、オルフェ兄さま!ただいまなのです!」
玄関で出迎えてくれた二人に抱き着く。
「おかえり」
「おかえりミィ。楽しかったか?」
「はいです!今日お昼を食べたお店がおいしかったので今度父さまとオルフェ兄さまも一緒に行きましょうね!」
よじよじとオルフェ兄さまに登り、抱っこしてもらう。
「ほう、では今度の休みにいくか」
「はい!」
父さまが兄さま達の方を見る。
「イルフェ達も楽しめたか」
「ああ」
「楽しかったよ」
「うむ」
「そうか」
父さまの返事は一見そっけないけど、その表情は少し嬉しそうなのです。
父さまはわたしの方に向き直る。
「さあ、今日はミィの土産話を父さま達に聞かせておくれ」
「もちろんです!」
いっぱい話したいことあるのですよ!
はしゃぎすぎたのかその日の夜はスコンと眠りに落ちました。




