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ミィ、みかんと遭遇する




 ある日、わたしはソイツと遭遇した。

 

 前世で冬になると現れるこたつヘブンの上に我が物顔で乗っていたソイツ。


 オレンジ色でまあるいアイツ。


 ―――そう、みかんです。




***




「兄さま、兄さま」

 わたしはみかんを一つ持ち、テトテトとイルフェ兄さまに駆け寄った。

「どうした?ミィ」

「みかんですっ」

「? そうだな、みかんだな。それがどうしたんだ?そんな物珍しいものでもないだろう? 今までも食べてたじゃないか」

「前世を思い出してからは初めてなのです! 再会なのです!」

「お~、そうだったのか」

 わたしの興奮と感動がイルフェ兄さまには理解できないようだ。

「前世ではコロコロしたら怒られ、食べようとしたらご主人さまに叱られたものです」

「……ミィお前元飼い主のことご主人様って呼んでんのか?」

「はいです」

 わたしはコクリと頷いた。

 ご主人さまはご主人さまです。

 すると、兄さまの顔がどんどん青白くなっていった。



「―――き、緊急家族会議だ!!」


「……にゃん?」


 わたしはガシッとイルフェ兄さまに抱き上げられ、食堂に連行された。




***




「どうしたイルフェ。緊急の話か?」

 イルフェ兄さまの招集に応じて食堂の席に着いた父さまが兄さまに問う。

「ええ、極めて緊急性のある話です父上。……あっ、こらミィ、兄ちゃんが剥いてやるからちょっと待ってろ」

 兄さまは真面目な顔で頷くと、わたしが丸ごとあぐあぐしてたみかんを奪い皮を剥き始めた。

「はいミィ、あーん」

「あーん」

 むぐむぐ……おいし。

 甘酸っぱい果汁が口の中に広がる。

 昔、自分でみかんを剥こうとしたら指が実に到達しちゃって、飛んだ汁が目に入っちゃった時からみかんは自分で剥かせてもらえない。


 イルフェ兄さまが一粒一粒差し出してくるみかんを一心不乱に食べていると、オルフェ兄さまとリーフェ兄さまもやってきた。

 全員揃ってもわたしにみかんを食べさせ続けるイルフェ兄さまにオルフェ兄さまが声を掛けた。

「イルフェ……」

「ハッ、俺としたことが、ミィ餌付けに夢中になってたぜ」

「えづけ……?」

「気持ちは分かる。だが早く本題に入れ」

 気持ちは分かるんだ……。


 そして、わたしが一個目のみかんを食べ終えたタイミングで緊急家族会議が始まった。どうでもいい話題だってイルフェ兄さま怒られないかな……。



「ご主人様?」

「ご主人様だと?」

「……緊急事態だね」


 ―――怒られなかった。

 なんで? なんでこんな深刻そうな空気になってるんです?

「ミィ、もう一回聞かせてくれるかい? 前世の飼い主のことをなんと呼んでたか」

「ご主人さまです」

 わたしがそう言うと、家族は一様にショックを受けたような顔になった。

「なんてことだ!!」

「これは由々しき事態だぞイルフェ!!」

 みんなどうしたんだろ。もう一個みかん食べてもいいかな。

 テーブルの上にあった新しいみかんを手に取ってソワソワしていると、、わたしを膝抱っこしていたイルフェ兄さまが皮を剥いてくれた。

 あむあむとみかんをパクついてると、家族の視線がわたしに集まっていた。


「ぐうっ!! こんなにかわいいミィが『ご主人様』なんて言ったらどれだけ変態が集まって来ることか!」

「いいかミィ、これからご主人様呼びは禁止だ。分かったな?」


「……ぅ、わかりまちた」


 家族の圧に負けたわたしはとりあえずそう答えておいた。

 こうして、緊急家族会議は幕を閉じたのです。



***




 夕食の時間、食事をとりながら雑談をしていると、みかんのことが話題に上がった。


「ところで、ミィはどうしてみかんに反応したんだ?」

「前世でミィの大好きなヤツ(こたつ)とセットだったからです」


 こたつは人界が発祥のとっても便利な道具です。魔界の冬にも必ずといっていい程こたつが登場します。もちろんこの魔王城にもこたつは何個かあります。


「「「「大好きな奴……?」」」」


「……み?」


 兄達が鬼の形相で大好きなヤツ(こたつ)に反応しました。

 そして急遽、第二回緊急加速会議が行われてしまい、こたつだと誤解を解くのには苦労しました。








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