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前世は猫でした

前に短編で上げていた「魔王の(文字通り)箱入り娘の教師は変質勇者でした」の設定を大幅に変えたものです。

設定などが結構変わっているので短編の方は読まなくても大丈夫です!




 お庭でポカポカと日向ぼっこをしていた時、ふと思い出した。


 虫を追って野原を駆け回った記憶。


 ご主人さまのお腹の上でうたた寝した記憶。


 寒い雪の日に、ご主人さまで暖をとった記憶。


 そして、全身毛むくじゃらだった自分。



 ―――わたし、前世は猫だったようです。



***



 三度のメシより箱の中が好き……は嘘ですね。箱の中にいるのもごはんも大好きな魔王の末っ子のミィです。

 最近のマイブーム寝床、段ボール箱を引きずって兄さまの所へ向かってます。ミィには三人のお兄ちゃんがいて、今向かってるのは三番目の兄さまの所です。

 ちなみにお姉ちゃんはいません。


 そして、兄さまの執務室の前に到着しました。

 わたしにとってはちょっと高めな場所にあるドアノブをひねって兄さまの部屋に入る。ノックは忘れました。


 部屋の中には予想通り三番目の兄さまがいました。

 魔王家三男のリーフェ兄さまは、いつも穏やかに微笑んでいる感じの良いお兄ちゃんなのです。


「―――おやミイ、遊びにきたの?ノックはどうしたんだい?」

「ノックはお部屋に忘れてきたのです」

「そっか、次は忘れずに持ってくるんだよ?」

「はいなのです」

 なぜか既に両手を広げてスタンバイをしていたリーフェ兄さまに流れるように抱き上げられた。よいしょっと兄さまの腕に座る。


「リーフェ兄さま、聞いてください。ミィは前世の記憶を思い出したのです」

「お、なんだったんだい?猫?それとも猫?」

「残念、猫です」

「あちゃ~、猫だったか」

 兄さまといつも通りの会話をする。


「まあ、ミィは元々猫っぽかったからね。父上なんて、ミィの子育てのために猫用の本を読んでるくらいだよ」

「父さまがたまに頓珍漢とんちんかんなことをやらかすのはそのせいでしたか」

 父さまはしっかりしてるように見えてうっかりさんなのです。普通に子育て用の本を読めばいいのに。


「それで、ミィは前世が猫だってことを教えにきてくれたの?」

「はいなのです。これから兄さま達と父さまの所にも行きます」

「なるほど、じゃあ早めにいってあげてね。じゃないと俺が兄上達に嫉妬されちゃうから」

「はいなのです」

 そしてわたしはリーフェ兄さまの部屋を出た。

 ここに来るまでにちょっと疲れちゃったので、段ボールに入ったまま浮遊魔法で二番目のイルフェ兄さまの部屋へ向かいます。

 魔法、ばんざいです。



 ガチャリと扉を開けてイルフェ兄さまの部屋に入った。

「イルフェ兄さま~」

「おお、ミィ。どうした?」

 箱ごとイルフェ兄さまに抱き上げられた。リーフェ兄さまがザ・王子様ならイルフェ兄さまは剣士系の男前さんって感じのお顔立ちです。


「こらミィ、筋肉が落ちるから移動の時は歩けって言っただろ?魔法じゃ筋肉は作れないんだから」

「だって、疲れちゃったのです」

「簡単に疲れないように筋肉をつけるんだ。んで、何の用だ?」

 イルフェ兄さまのいい所は小言が長くない所だ。


「ついさっき前世を思い出したので報告に来ました」

「……猫だったか?」

「猫でした」


 兄さまは全く驚いてくれなかった。ちょっと拍子抜けです。

「むぅ……」

 ちょっと拗ねてみると、兄さまがブハッと噴き出した。

「ミィが思ってる以上にミィは猫なんだ」

「……父さま達にも報告してきます」

「ああ、ちゃんと歩いていくんだぞ」

 そう言ってイルフェ兄さまはわたしのおでこにちゅーしてくれた。


「行ってきます」

 ちょっと機嫌はが向上したのでブンブン兄さまに手を振って歩いて次の目的地に歩いていく。

「ちゃんと前みるんだぞ~」

 は~いと後方のイルフェ兄さまの方を振り返って返事をしたら、銅像に頭をぶつけました。


 いたいのです。




「父さま、オルフェ兄さま」

 二人は大体執務室にいる。

「ああ、ミィおいで」

 ちっちっちっと口で音をたて、わたしを真顔で呼ぶのは父さまだ。わたしは素直に父さまに小走りで父さまに近付き膝に乗った。

 父さまは本物の猫にするように頭を撫でてくれる。

「ミィは今日も可愛いな」

「にゅふん」

「父上、俺にもミィを触らせて下さい」

「うむ」

 父さまの次は兄さまに頭を撫でられる。これもまたよしなのです。


 あ、そうですそうです、本題を忘れちゃダメでした。寝そうになってる場合じゃないです。

「父さま兄さま、ミィは前世を思い出したのです」

「猫か?」

「猫だろう」

「猫でした」

 みんな予想通りですかそうですか。



「―――ミィ、そろそろお昼寝の時間だろう。兄さまの膝で寝ていくか?」

「おいオルフェ、今日は我の番だろう」

 二人にとっては前世の記憶よりもわたしのお昼寝の方が大事らしい。

 その後は、お仕事をする父さまの膝の上で丸くなってお昼寝をしました。



 ……あれ? 今世も前世とあんまり変わらない生活してますね。

 






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