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死命④


【目次】


1.暗闇の戦い

2.奇妙な指示


1.暗闇の戦い


エリカはとっさに、右腕で振り払った。


「うっ」


腕に殴られたような衝撃と、熱い痛みが走った。


エリカは素早くナイフを抜いた。


(ちゃんとしたものを持ってくるべきだった)


今更後悔しても、もう遅い。


今もっているのは護身用ではなく、身の回りの用事のために持ち歩いているもので、戦うには不向きである。


しかも一本だけしかなく、予備もない。

火急の際には、致命的である。


再び、足元に気配を感じた。


エリカはとっさに足を蹴り上げた。

空振りしたのか、手ごたえがなかった。


しかし、気配は消えた。


抵抗したのが幸いしたのか、敵の攻撃も外れたらしい。


静寂。


腕がじめっと濡れている。


三度目の攻撃。


今度は、背中側から来た。


エリカはとっさに左手に持っているナイフを振るった。


が、生き物を切った時の手ごたえではない。


ぐにゃりとした奇妙な手ごたえだった。


(戦えない)


逃げた方がいい、と思った。


相手が何かは分からないが、碌な武器もなく、戦い慣れした相手と渡り合える状況ではない。


しかも、足元を見るのもやっとなほど暗いのに、相手はこちらの姿がよく見えるらしかった。


エリカは、今来た道を走りだした。


敵はダメージを負ったのか、追いかけてこなかった。


エリカは、傷に治癒の術を掛けながら、ひたすら走った。


走って、基地まで駆け戻った。


2.奇妙な指示


息が上がったまま、長官の部屋に駆け込み、今までの一件を報告した。


長官は、血まみれの服のままのエリカの無体を咎めることもせず、黙ったまま話を聞いていた。


「あそこは、あのトンネルは、軍の施設、少なくとも、軍が何か関わっていることは間違いないと思います。そして、襲ってきたのは、たぶん例の奴ではないかと思います」


エリカはそこで言葉を切った。


長官は、空中から水の瓶を取り出すと、エリカに投げて寄越した。


「あいつは、たまたまあそこにい」


「たまたまではない。軍の施設ならそうなるだろう」


長官は、エリカの言葉た。


「えっ」


「軍は、この件にかかわっている。我々に回ってくるはずの情報を、奴らが堰き止めている。それで中々情報が我々に回って来ない」


「しかし、証拠は・・・」


「証拠か」


長官は目は笑わず、口の端だけで笑った。


「目に見えるものだけが証拠とは限らない」


「?」


「軍の連中、この件に関しては一向に出張ってこようとしない。我々がこんなに苦労しているのにだ。おかしいとは思われないか」


「そういえば」


ただでさえ互いに反目しあっている関係である。


こちらが手をこまねいていると見るや、それ見たことかとばかりに口出ししてくるのが今までだった。


それが、今回は一切沈黙を保っている。


「軍は、少なくとも何かを知っている。それは確かだ」


「なるほど」


(この前、調べさせていると言っていたのは、そのことだったか)


エリカは本当のところ、まだこの長官の言うことが半信半疑だが、もしそれが事実であれば、恐るべき洞察力と言うしかない。


「自分たちでは手に負えなくなり、かと言って表ざたにも出来ず、結果、放置することでこっちに丸投げしてきた」


「あるいは、自分たちの手を汚したくないから、でしょうか」


「事情はわからん。だが、調べてもらう必要がある。お前にだ」


「またあそこに入るのでしょうか?」


エリカは勘弁してもらいたかったが、


「他に何がある」


容赦がない。


「しかし、私ではいざというときに戦えません。もし戦いになったら。クリスか、誰かに声を掛けて」


「あいつらは役に立たん」


長官はぴしゃりと言った。


「私の見込みが当たっていれば、この話はお前の仕事だ」


「それは・・・どういうことでしょうか」


戦闘、という意味では、全く戦力にはならないはずである。


「それはまだ言えん。私もいろいろ確かめなければならん事がある」


(いつになく口が滑らかだ)とエリカは思った。


普段であれば、必要最低限の説明しかしないことが多い。


どうしても不可解だが、今日はやけに機嫌がよく見える。


「とにかく行ってみろ。行けば、私の考えが正しいかどうかわかる。行って確かめてみろ」


「はあ」


「餞別だ」


長官は、今度は空中から小型のロケットのような物を取り出すと、目の前に置いた。


「あまり暗いと、やりづらいだろう」


エリカは驚いた。


それが何であるか知っている。


「不滅光」


特殊な術式を編み込んで作られており、点灯すると、光が自動的に拡散して、正面だけでなく、360度全方位を真昼のように照らしてくれる優れものだ。


しかも、一度点灯すると、どれだけ時間が経っても、たとえ本体を叩いたり壊したりしても、決して消えることがない。


金を積みさえすれば手に入るというものではない貴重品である。まさか実物を見る機会があるとは思わなかった。


こんなものまで貸してくれるとは、それだけ期待しているのかもしれない。


「頼んだぞ」


長官はそういうと、部屋を出て行ってしまった。



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