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死命②


1.プロローグ


放射線宿酔 - 全身又は局所の広範囲に、比較的短時間に高い線量の電離放射線を被ばくすると、吐き気、嘔吐、下痢などの胃腸症状および全身倦怠感等の症状が出現する。この症状は、二日酔い(宿酔)に似た症状という意味で、放射線宿酔と呼ばれている。


実は、いわゆる「能力者」と称される人間の血液を、そうでない人間に摂取させた場合にも、似たような症状が出現することが、以前より知られていたが、その理由ははっきりとわかっていなかった。また、「能力者」自身が、自身の血に耐性がある理由についても、同様に詳しくはわかっていなかった。


ところが、最近になってその理由を解明するかもしれない、ある画期的な発見が科学の分野でなされた。それは・・・。


2.エリカ


エリカ・スズキは、それまで読んでいた、表紙に「極秘」とスタンプの押してある冊子をぱたんと閉じると、それを素早く机の上に広げてある、ほかの本や書類の下に滑り込ませた。


誰かが部屋を訪ねてくる気配を感じたからである。


少し間があって、コンコン、とドアがノックされた。


(チャーリーだな)とエリカは思ったが、返事をすると、やはりチャーリーがドアの隙間から顔をのぞかせた。


3.会話


来るのは久々だったが、(この部屋も相変わらずだな)とチャーリーは思った。


丸々2部屋分を打ち抜いた広いフローリングの中央に、丸テーブルが一つと椅子が2つ。

窓際にベッドと、壁際一面には本棚。

その本棚いっぱいに本があふれている。


その他には、何もない。


エリカは椅子をすすめ、「例の事件のことなんだけど」とチャーリーが椅子を引きながら言った。


エリカはああ、と思った。

(その話か)


噂には聞いている。


「昨日は3人も被害者が出た。1日で3人だよ。どんどん増えてる。このままだと、もっと大変なことになる」


チャーリーも焦っている。


意気揚々と捜査に乗り出したはいいが,未だになんの成果もあげられていない。


「何か心当たりはないの」


「ごめん」

エリカは肩をすくめた。


「藁にもすがりたいんだよ」とチャーリー。


しかし、エリカにもなんと答えたらいいのか分からない。


その後は進展のない会話をし、落胆したチャーリーがやや乱暴にドアを開けて出ていくのを見送った。



4.密談


それから数日経って、エリカは長官と夕食を共にしていた。


話題は必然的に、例の事件のことに及んだ。


「考えはないのか」と長官は尋ねた。


「いえ、特には」


実をいうと、ここ数日考えていたことがないわけではない。


ただ、それを言ってもいいのかどうか、心の中で思案していた。


ただでさえ、状況は切迫している。

あまりに的外れなことを言って、機嫌を損ねたくない。


「嘘をつくな」


長官は、エリカの頭の中を見透かしたように言った。


「何か考えているだろう」


エリカはまだ思案している。


いいから、と長官は促した。


「話してみろ」


とてもいやと言える雰囲気ではない。


エリカは一度ぐっと息を飲みこんでから、そろそろと話始めた。


「相手は、能力者ではないのかもしれません。これだけ警戒しているのに、全く何も引っかからないのは」


「だろうな」


長官は、エリカの言葉を途中で遮った。


「相手は、能力者ではない。いくら魔力に警戒しても無意味だ」


「し、しかし」


エリカは長官の言葉の真意を十分図りかねていた。


「それでは、相手は普通の人間ということでしょうか。人間の大きさではなかったと聞いていますが」


「相手は人間ではない」


根拠はよくわからないが、確信があるようだった。


「で、では、何なのでしょう」


「何かは知らん」

長官は素っ気なく言った。


「それを今調べさせている。じきに分かる」


(誰に?)


(何を?)


エリカの頭の中には疑念が渦巻いていたが、しかし、この話題をこれ以上追及していく雰囲気ではなかったので、あとは当たり障りのない話をして、その日は終わった。






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