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秘密(番外編1-1)

 ホワイト姉妹と言えば、隊の中で知らない者はいない。

姉のルビーは古参の幹部で、実力は隊内屈指であり、主要な戦闘のほとんどに加わるだけでなく、隊内行政にも深く関わり、文字通り隊の中核をなしていた。


 ある日、そのルビーの妹が、姉の後を追って入隊してくるという噂が流れ、隊内は一気に色めきたった


 姉の後を追ってきた以上、姉以上の何かがあるのではないかと、いやが応にも、期待は高まった。それは、事実はまだ12歳になったばかりで、戦いは素人同然の少女にとっては、実に不幸な事であった。


 彼女―ソニア・ホワイト―は、戦うにはまだ余りに幼すぎた。その頃、実戦部隊の主力は大半が10代後半、それより下でも14、5であって、彼女より下はおろか、同年代すらほとんどいなかった。その上、彼女はそれまで全く戦った事はおろか、実戦がどのようなものかを見た経験もほとんどなかった。


 本当の実力の程が知れてしまうと、勝手な期待は、たちまち理不尽な失望に変わった。

 なかなか本人の実力が向上しないことも相まって、侮りの声は日増しに大きくなる一方だった。


 一部には同情する隊員もいないではなかったが、一に実績・二に実力、という隊の空気の中ではどうしても表だってそれを口にすることができなかった。


 何より、他ならぬ姉のルビー自身が、妹には人一倍冷酷な態度で接した。「恥」と公然と発言することもあった。

 姉本人がそう言うのでは、皆口を閉ざすしかなかった。


 性格は真面目だし、筋は悪いと言う程ではないので、身体が育つのを待つ時間が要るとして、何か切っ掛けがあれば、というのが、彼女の訓練するのを見ていたクリスの感想だった。

 いずれにしても、彼女自身も隊も、まだまだ我慢の時間が続く事は明らかだった。


 そんな中、大事件が起きた。


 姉ルビーが敵に襲われ、死んだのである。

 本人の話では、夜私用を終えて帰る途中、いきなり5、6人の集団に襲われたとのことであった。

 さすがに古参の彼女は冷静で、敵に飛び道具がないことを見極めると、激しく反撃に出て、たちまち2人を斬り倒し、1人に深傷を与えたが、敵の数が多く、自分も背中と腕に浅傷を負った。


 残りは崩れて逃げ散ったという。


 ルビー本人は自分で歩いて基地まで戻ってきて、傷の手当てを受けながらそこまで話した。そして続きは明日話すと言って、自分の個室に引き上げていった。しかし、翌朝なかなか起きてこない彼女を心配した同僚が見に行くと、既にベッドの中で冷たくなっていたという。

 死体は解剖に回されたが、死因はまだ明らかにされていない。


 さすがに幹部の突然の死とあって、隊内は一時的に動揺したものの、動揺はやがて不気味なほど速やかに沈静化した。一見して、誰も悲しんではいないように見えるが、そうではない。


 誰もが皆心の中で、悲しみを塗り潰してしまうほど、激しい怒りの炎を燃やしていた。


 死者を悼むのであれば敵をとるのが筋であると、少なくとも彼女達はそう叩き込まれて生きている。


 ―復讐こそ最大の弔辞―。それが彼女達の共通した思いであった。誰もが、願わくば自分が、とも思った。 

 俄然、ルビーを襲ったのはどこの誰か、という話になった。


 容疑者はほどなく割れた。目撃者がいたからである。襲撃のあった時間の直後、負傷した人間を部屋に運び込む集団がを目撃されていた。


 巣も割れた。


 後は誰が討つかという問題である。クリスの名前があがった。自然である。失敗は許されない。随一の実力者を投入するのは当然である。では一人だけか、いや違う。もう一人行かなければならない。妹のソニアである。最初から決まっている。理屈ではない。妹が姉の敵をとるのは当然である。やるやらないの問題ではない。行かないという選択肢は、初めからない。


 そんな結論は初めから見えているから、みんな自分が自分がと思っても黙っているのである。


 そんな成り行きで クリスと ソニアは今、目的の家に前に立っている。

 ソニアは震えている。無理もない。ろくに戦ったこともないのだから。自分の姉の死を悲しむ間もなく、今度は自分が生きるか死ぬかの 目にあわなければならないとは、考えてみたら気の毒なことかもしれない。


「剣は使えるのか」

 知っていても、あえて聞いた。ここまで来て使えないと言うなら、さすがに置いていくしかない。


「・・・・・・つ、使えます!」


「どれぐらい」


「・・・・・・少し・・・・・・」

 嘘でも多少は強がって欲しいと、クリスは思った。

 すこし考えてから、聴いた。

「人を斬るのは、初めてか?」


 息を飲む音がした。暫く間が空いて、いえ、と小さな声が聞こえた。

「そうか。無茶だけはするな」

 見るだけでいい。どうせ仕事をするのは自分である。クリスはそう思って、部屋に向かった。


 部屋のドアには鍵がかかっていたが、クリスが当然のように剣でドアに穴を空けてこじ開けた。


 部屋に踏み込むと、中には3人の人間がいて、ぎょっとしてこちらを向いた。

「誰だ」

「武装警察だ。ルビー・ホワイトの件で来た。全員、最期に言いたいことがあれば聞こう」

「ふざけるな」

 1人がそう言うなり、剣を抜いて斬りかかってきた。


 クリスの目からすれば、まるで止まっているように緩慢な動きだった。本気で反撃するのが気の毒に思えるほどだった。

 突進してくる相手にあわせて腰を沈め、相手が剣を振りかぶった瞬間にだっと踏み込み、あっさり胴を薙いだ。さらに後ろに回って、袈裟を斬った。

 敵は顔面から床に突っ込んで倒れた。


 それを見ていたもう1人が、急に 窓を破って外に飛び出した。

「待て!」とクリスが言おうとしたその時、「た、助けて!」と悲鳴が聞こえた。見ると、ソニアが床に組み伏せられていた。切っ先が顔のすぐ目の前にあり、相手の手を掴んで何とか押し止めていた。

 ソニアの剣は真ん中ぐらいから折れて、側に転がっていた。

 クリスはスッと近づき、相手が反応する間も無く、首筋をはねて一撃で倒した。


 それから一応窓の外を見たが、すでに人影はなかった。


 そのあと部屋の中を探すと、ベッドの中にすでに息絶えている少女がいた。こいつがルビーが深傷を負わせたと言っていた奴だろう。


 ソニアは泣いていた。それが恐怖心からなのか、情けなさからなのかは クリスにはわからなかったが。


「無茶をするなと言っただろう」

 クリスはそう言いながらソニアの頭をはたいた。ばしっと大きな音がして、ソニアは頭を抱えて呻いた。

「いいか、兵隊は生きて戻って来ることも大事な仕事のうちだ。そうでないと、いつまでたっても新米ばかりで、隊として進歩がない」


 ソニアはまだ泣いている。クリスもさすがにそれ以上責める気にはなれない。

 考えて見たら、これが初めての実戦なのだ。姉が死んだ事のダメージもある中で、よく頑張った方なのかも知れない。

「泣くなよ。さあ、もう終わったから帰るぞ。しばらくは身の回りに気を付けることだ。直接やったのは私だが、おまえもその場にいたことに変わりはないからな」


 クリスとソニアは、基地に引き上げた。


 だが、この事件はこれで終わらなかった。


 それから暫くして、隊員の1人がいきなり敵に襲われた。反撃したが、取り逃がした。

 幸い命は助かったが、重傷で暫く離脱を余儀なくされた。


 不意の襲撃それ自体は、しばしばあることではあったが、ソニアにとって不運なのは、その敵がソニア・ホワイトの名前を叫んだことだった。


 つまりは、人違いであった。


 そうではあるけれど、不満や不安というものは、どうしても立場のよわいものに向かうものである。


 すでに、先の一件は隊内に知られている。


―ソニアの臆病が、敵前での見苦しい命乞いが、敵を増長させた―。 

元々、臆病者を何より嫌う気風である。いつの間にか、そういう空気になってしまった。

 自然と、彼女に向けられる視線も、より一層厳しいものになってしまった。


 ソニアは、それ以来、部屋に閉じこもりがちになってしまった。


「私は余計な事をしたかな」

いつもの屋台で、クリスはチャーリーに尋ねた。

「あなたでなく、ソニアが斬ったことにすればよかったのに。どうしてそう言わなかったんですか?」チャーリーの声は刺々しかった。

「あいつの腕だぞ。誰も信じない」

「信じなくても。表向きだけでもそう言っておけばよかったのでは」

「だが、それでも不審に思う者は・・・・・・」

「誰でもない、あなたがそう言うんですよ。疑問があったとして、誰が口に出せるんです」

「だか・・・・・・」

「あなたが最初やって、最後にソニアが止めを刺したという言い方もあったのでは。どうせ誰も見ていなかったんだし」

「・・・・・・先に言ってくれれば・・・・・・」

「そうですか。私はてっきり、微妙な立場のあの子に花を持たせるつもりで、連れていったのだとばかり思ってましたが。仕事するだけなら、あなたひとりで十分だし」

「・・・・・・やめないか」

「そうですね」

チャーリーはまだ言いたいことがあるようだったが、押し殺した。


 2人は、しばらく黙々と料理を口に運んだ。


 クリスは、前々から疑問に思っていたことを聞いてみた。


「なあ、あいつは何でうちに入って来たんだ?ルビーに憧れて、後を追いかけて来たっていう話は本当なのか?何かこう、闘志みたいなものを感じないんだが。嫌々やらされてるみたいで」


 チャーリーは蟹を剥く手を止めて、クリスの方を見た。

「聞いたことがないんですか」

「何を」

 チャーリーは迷っているようだったが、決心したようだった。

「私が言ったとは言わないでくださいよ、あくまでも噂ですし」

「だから何なんだ」

「あの子は・・・・・・親に売られたと。そういう噂があります」

「売られた?」

「ええ」

「入隊すると、支度金が支払われることは」

「知ってる」

「それ目当てだと。あの子の実家は貧しい。あの子だけじゃない、維新からこっち、元東部人の暮らしはひどいものです。食べていくために手段を選ばない、選べない人ばかりです。それで、親が本人に無断で応募したと」

「だが、入隊には試験があるだろう?あいつが通るのか?まず身体が・・・・・・」

「推薦状があったそうです」

「推薦状?」

「ええ、誰あろう、ルビー・ホワイトその人の推薦状です。あれほどの人のものです。それだけで合格ですよ。ましてや、その頃は人も全然足りませんでしたし」

「そんなもの、ルビーが書くわけが・・・・・・」

「わからない人ですね。私はあったと言ってるんです。ルビーが書いたとは言ってない」

「じゃあ、誰かが勝手に?いったい誰が」

「分かりません。ルビーは大分犯人を探し回ったと聞きましたが。死ぬ直前も探してたと」

「だが、あいつじゃ役には立たんだろう?悪くすれば、初戦で命を落とす事も」

「死ねば、見舞金も出ます。もちろん、家族に。むしろ早くそうなってほしいと思われてるかも」

「信じられない・・・・・・」

「あくまでも噂ですよ」

「・・・・・・ルビーは、人一倍あの子には厳しかった」

「理由がどうであれ、一度入ってしまったら最後です。抜けることはできない。であれば、あとはできるだけ生き残るために、1日も早く強くなるしかありませんから」

脱走(にげ)ないだけ立派だ」

「もしあの子が逃げたら、斬りますか」

「・・・・・・やむを得ない。組織には、組織の利害がある・・・・・・個人の利害とは相容れない」

「そうですか。ま、できることをしましょう。今できることは、次の戦いに備えて栄養をとることです」

「いや、もういい」

 クリスは残りの蟹を全部チャーリーに押し付けた。


 ソニアは相変わらず部屋に閉じこもっている。もともと社交的と言う ほどではなかったが、最近はすっかり訓練以外では部屋から出て来なくなってしまった。

 多少なりとも心当たりのある隊員達は、あらぬ出来事が起きはしないかと心配していた。


が、実はその実―


「毎晩、こっそり探し回っているようです」

 エリカは、食事の手を止めて、隊長に言った。

「ほぉ」

 隊長は興味ありげな顔をした。いつも無表情のこのひとにしては珍しいことだ。

「例の奴をか」

「ええ」

 急にどうして。エリカには、その急変ぶりがどうしても腑に落ちなかった。

「急にどうしたんでしょうか」

「ハーディングの剣捌きを見て、何か感じ入る所があったのかもな」

 そんなはずがない、とエリカは思うが、それ以上は何も思い当たらない。

 あるいは、「魔女の血は獣の血」というのは本当で、何かの切っ掛けで、彼女の中に眠っていた獣の血が目覚めただけなのだろうか。今までの彼女の姿が、むしろ仮の姿だったのだろうか。

 魔力はあるが、完全な能力者ではないエリカには思い至れない境地だった。


 その夜チャーリーは所用で外出した帰りに、ある路地に差し掛かった。


 その時、前後に気配を感じた。


 敵だ。


 7、8人。いや10人以上いるか。じりじりと距離を詰めてきた。

「誰だ」

「ハンナの敵」

 敵は名乗らず、それだけ答えた。

 聞き覚えのない名前だが、この前クリスが斬った奴か。

「人違いだぞ、そいつをやったのは私じゃない」

「問答無用」

 一斉に抜き連れた。

 剣が5、6本、月明かりに煌めくと同時に人影がさっと動き、斬りかかってきた。

 チャーリーの手から魔力砲が放たれ、たちまち一人が転倒し、一人の体が炎に包まれた。

 だが、敵の数が多過ぎた。攻撃を潜り抜けた敵が3、4人、固まって押し寄せてきた。

 チャーリーは後退しながら、さらに魔力砲を打った。

 前だけでなく、後ろにも敵がいる。背中から斬りかかってきた。危なくシールドで防いだ。敵の方が力がある。ぐいぐいと壁に押し付けられた。切っ先でぐりぐりとシールドをこじ開けようとしてくる。攻撃に出るには、シールドを解除しなければならない。この状況ではどうしようもない。

応援がいる。

テレパシーで呼び掛けた。

「・・・・・・誰か・・・・・・!!」


 ソニアはその時、偶然すぐ近くの通りにいた。


 血が熱かった。


 目の前で人が斬られるのを、その真っ赤な血飛沫を、見たあの日以来、彼女の中で何かが変わった。目を閉じると、その時の真っ赤な血の色が、瞼の裏に浮かんできた。


 敵を倒したい、狩らなければ。


 波のような激しい衝動が、彼女を突き動かしていた。狩るべき敵を求めて彷徨っていた。


 力が欲しい。もっと力が。


 今なら分かる、なぜ姉が人一倍、自分には厳しかったのかが。

 強くならなければ、自分が今いるこの世界で生き残っていくことなど、望むべくもないのだ。

 その時、チャーリーの放ったテレパシーが、脳に飛び込んできた。


 すぐ近くの路地からだ。


ソニアは駆け出した。


 路地に駆け込んだ。敵の背中が見えた。走り寄りざま、背中を袈裟懸けに切った。敵は右に回転して倒れた。


 突然の乱入者に、敵の陣形は乱れた。


 乱れに乗じ、さらにひとりを正面から袈裟懸けに切った。剣はまるで 水に入るように、スッと敵の体に吸い込まれた。


 自分でも信じられないほどの力が出ていた。


 だが、戦い慣れしている敵は、早くも落ち着きを取り戻し、じわじわと包囲を狭めてきた。


 ソニアはひとりの右腕を切り落としたが、自分も腕を切られ、さらに左肩を刺された。さらに左から腰を切られ、たまらず倒れ込んだ。


 敵が一斉に、倒れたソニアに群がった。


 ソニアが倒れ込みながらも剣を振り回し、一人の首筋を薙いだのを、チャーリーは見た。


「何をしてる!もっと包め、包め!」怒号がとび、人垣がざっと絞られた。


 解放されてシールドを解いたチャーリーの魔力砲が再び火を吹き、ひとりの腰を貫通し、さらにひとりの胸に当たった。二人はどっと倒れた。


 さらにもうひとりの頭を撃ち抜いた。


「ひっ引け!退却だ」

 思わぬ多数の死傷者に、敵はこれ以上の損害を恐れたのか、仲間の死体を残したまま、バラバラと逃げ散った。


 人垣が消えたあとに、ソニアは真っ赤な顔で壁にもたれて座り込んでいた。

「ソニア!」

 抱き止めたチャーリーの両手が、たちまち真っ赤に染まった。体から流れ出た血は、はやくも彼女の体の下に血溜りを作っていた。


 深い。


 チャーリーは思わず唇を噛んだ。後頭部に手を当てると、指がずぶりとめり込んだ。背中にも腰にも傷がある。


「・・・・・・最後に・・・・・・ひとつだけ・・・・・・いいですか・・・・・・」

苦しい息の下から、ソニアの消え入りそうな声が聞こえた。

「ダメだ。何も喋るな」

 ソニアは激しく咳き込んだ。真っ赤な血の霧が彼女の全身から吹き出し、ふたりの頭や顔に降り注いだ。体がチャーリーの手から地面に滑り落ちた。瞳の光が急速に失われていく。


 もう永くない。


「・・・・・・わかった。聞いてあげる」


 ソニアはほっとしたように口許を緩めた。閉じたままの両目から、涙が一筋流れた。

「・・・・・・最後に・・・・・・お役に立てて・・・・・・よかったです。父も母も、これで・・・・・・」

「まだだぞ。クリスに言われただろう、まだ仕事は終わってない」

「誇れます・・・・・・やっと自慢できる・・・・・私自身の事を・・・・・・」


 言葉がそこで途切れた。


 ソニアの口は、まだ何かを言いたそうに、微かに動いていたが、呼吸が次第に静かになり、やがて、パタンと両手が地面に落ちた。


 チャーリーは静かになったソニアの頭をそっと地面に横たえた。


「ソニア」

 チャーリーは、そっとソニアの柔らかい髪を撫でながら呟いた。

「みんな勝手だよ。あとに残されてく人の気持ちも考えてほしいよ」

 まだ温かさの残るソニアの頬に、自分の頬を重ねた。

「ねえソニア、聞いてる?あんたみたいな未来のある人が先に行ってしまって、私みたいな死に損ないが、いつまでも生きてる。どうしたらいいかな」


 そのとき、チャーリーの後ろで、倒れていたはずの女の手がぴくりと動いた。うつ伏せのまま、そっと腰の刀を掴み、音もなく立ち上がった。

 振りかぶった長い刀が、ぎらりと月光に光った。

 女が踏み込むと同時に、後ろ向きのままのチャーリーの右手から魔力砲が放たれ、胸に直撃した。

 女は火炎に包まれ、地面に崩れ落ちた。


 オレンジ色の光が、束の間、二人を照らし出したが、やがて闇が全てを包み込んだ。


「これは一体何なのかな」

 同じ頃、自分の研究室で、アリサは顕微鏡越しに、小さな棘のようなものを見つめながら呟いた。

 ルビーの首の後ろに突き刺さっていたものだった。

























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