美緒ちゃんとミュレーナ姫
地底都市に戻ると、王様とミュレーナ
姫を先頭に、シュワとリュナをはじめ
惑星の大勢の人たちが集まって来て、
僕らの帰還を祝福してくれた。
その後、王様の主催で盛大なお祝いの
パーティが開かれたんだ。
祝宴は三日三晩に渡って続いた。
王様は、初めて美緒ちゃんを見た瞬間
目を丸くして驚いてた。
「・・・何故、ミュレーナが二人
いる?」
って王様が言ったから、カミュたち
は爆笑してた。
テュマは、トンネルの中で初めて
美緒ちゃんを見た時、腰を抜かす
ほどビックリしたらしい。
カミュとリュスは、バラムの軍事
工場から避難する時、初めて美緒
ちゃんに会ったんだ。
カミュは美緒ちゃんを見た瞬間
思わずその場に膝まずき、
「ミュレーナ姫、お怪我はあり
ませんか?」
って、聞いたんだって。
リュスは遠くから見てたから、避難
して地上に出るまで、美緒ちゃんの
ことを、ずっとミュレーナ姫だと思
い込んでたらしい。
「俺はてっきり、ミュレーナ姫が
心配して次元転移システムを使っ
て翔太を助けに来たんだとばかり
思ってた。髪を短く切って黒く染
めてるから気合い入ってんなあっ
て思ったよ! カミュから地上で話
を聞いて、この人が翔太が無線で
言ってた美緒姫か! って、やっと
分かったんだ」
って言ってた。
シュワもリュナも、惑星の人たちも
みんな同様に最初はポカンと口を開
けて驚いてたんだ。
でもミュレーナ姫だけは、僕から
話を聞いてたから、あまり驚かな
かった。
でも逆に、美緒ちゃんはミュレーナ
姫を初めて見たから驚いてボーッと
してた。
ミュレーナ姫は美緒ちゃんの側に駆け
寄って来るとこう言ったんだ。
「美緒、 はじめまして! 私はミュ
レーナ。あなたの話は翔太からよく
聞いてるわ。翔太の恋人だってこと
もね。私、あなたに会えて嬉しいわ。
よろしくね!」
「そ、そうですか・・・こちらこそ
よろしくお願いします」
美緒ちゃんは緊張して答えてた。
実は僕、過去世の夢みたいに、
[二人の体が重なって、一つにならな
いかなあ]
って、物凄く期待してたんだ。
でも、そうはならなかったから、
とても残念だった。
◇◇
だけど、二人は直ぐに意気投合した
みたい。
ミュレーナ姫と美緒ちゃんが並んで
歩いてると、まるで双子の姉妹みた
いなんだ。
二人はいつも腕を組んで歩いてた。
僕でも二人の間には割って入れな
かった。
パーティ期間中、二人はほとんど
一緒に居て、何かしきりに話し込
んでた。
僕は寂しくなって、時々二人の側に
近づいて行ったんだけど、
「翔太君、ゴメンね。今、ミュレーナ
と話してるから少しだけ二人にして」
って言われた時は、悲しくて
涙が出そうになった。
ミュレーナ姫は僕の顔を見て
爆笑してた。
◇◇
美緒ちゃんはミュレーナ姫から
色々と話を聞いたみたい。
セシルのことや、僕とミュレーナ姫
のことなんかを色々ね。
美緒ちゃんは、僕がミュレーナ姫に
塔の上で初めて会った時から、今日
までのことを順を追って詳しく聞い
たらしい。
美緒ちゃんはこう言ってた。
僕たちは、地底都市の庭園のベンチ
に並んで座ってた。
「私、ミュレーナから聞いたよ。
翔太君と彼女のこと。ミュレーナ
も翔太君のこと愛してるって言っ
てた。私、最初は凄くショックで
悔しくて泣いたの。でもセシルの
話を聞いた時、私、翔太君とミュ
レーナのこと許すことにしたの」
僕は顔を真っ赤にして、俯いて
たんだ。
美緒ちゃんに僕とミュレーナ姫
の関係がバレてしまったことが
恥ずかしくて仕方なかった。
僕は気絶するくらい恥ずかしくて
頭にカーッと血が登って来たんだ。
冷や汗をダラダラ流してた。
[何で姫は話しちゃったんだろう?
話さなければ分からないことなのに]
って、僕は最初思ったんだ。
でも僕は、自分が山の上で彼女に
言ったことを思い出して反省した
んだ。
あの時、僕は姫に、
『地球に帰ってもまた会いに来るよ』
って言ったんだ。
僕は友達として会いに来るつもり
だった。
でも美緒ちゃんに内緒でそんなこと
続けてたら、そういうつもりがなく
ても、やがて気持ちが抑えきれなく
なったと思うんだ。
僕は結局、美緒ちゃんの気持ちを
裏切って二股状態に陥ってた可能
性がある。
[ミュレーナ姫が話してくれて
良かった]
って、僕は最終的に思った。
僕だと、上手く説明出来なかったと
思う。
僕は口下手だし、美緒ちゃんが納得
出来るような形で、自分とミュレー
ナ姫の関係を伝えられたかどうか分
からない。
[ミュレーナ姫は、僕が地球に帰っ
たら、もう僕と会わない決心をした
んだ]
って思った。
◇◇
僕が下を向いて考えてたら、美緒
ちゃんは僕の手を握ってこう言っ
たんだ。
「翔太君、そんなに気にしないで。
私、翔太君のこと信じてるからもう
大丈夫。私ね、ミュレーナとは魂が
つながってるような気がする。考え
方や感じ方が凄く似てるの。まるで
自分の分身みたい。彼女は私で、私
は彼女だと思うの。セシルって人が
言ってたんでしょ? 私たち、過去世
から凄く縁が深い関係なんだって。
私とミュレーナは姉妹だったことも
ある、翔太君とは夫婦だったり姉弟
だったこともあるのよね?」
「そうなんだ。セシルは天使のよう
な人だから、何でも知ってるんだ。
でも過去世のことは、自分で思い出
さないと意味がないって言ってた」
「そうなの? ・・どうすれば思い
出せるのかなあ?」
「全ての欲望を捨てて、正しい心で
正しい行いをすれば、思い出せるっ
て言ってた」
「・・そう、難しそうね」
「うん、釈迦みたいに修行を積まな
いと、難しいって言ってた」
「ふーん、大変そう!」
そう言って美緒ちゃんは笑ったんだ。
それは祝宴三日目の夜のことだった。
僕たちは、明日の朝には地球へ帰る
予定だったんだ。
湖の方では、花火が上がってて、
とても綺麗だった。
美緒ちゃんの大きな瞳にも、花火が
映ってて神秘的な感じがした。
僕は思わず美緒ちゃんを抱きしめ、
彼女の唇にキスしたんだ。
[僕はこの人を、一生離さない]
って思った。




