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プラネット  作者: 宇目 観月(うめ みづき)
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49/78

美緒ちゃんの話(その二)

「私ね、翔太君から手紙もらって、

凄く嬉しかった。 あの日は嬉し過

ぎて頭がポーッとのぼせたみたい

になって、 全然眠れなかったの。

私ね、翔太君の手紙、暗記するく

らい何回も繰り返し読んだのよ」



◇◇



僕たちは今、白い砂浜から少し離れた

森の中の小さな家で話してた。


テーブルに着いて向かい合ってる。


ここは幽界での美緒ちゃんの棲家

だった。



森の中でその辺りだけがお花畑になっ

てて、色とりどりの美しい花々が咲き

乱れてた。


美緒ちゃんの家も、カラフルで可愛い

感じの家だった。


グリム童話の『ヘンゼルとグレーテ

ル』に出てくるお菓子の家みたいな

配色なんだ。



家の横に白い大理石で出来た丸い手水

鉢があって冷たい水が湧き出してた。


美緒ちゃんはさっき、ここで水を汲ん

で来てくれたんだ。


「ここでは、人間の意思が実現化

するの」


って、美緒ちゃんは教えてくれた。


お花畑に可愛い小さな家というのが、

美緒ちゃんらしくて、僕は微笑ましい

気持ちになった。



僕の背中の傷はもう治ってた。


僕は今、美緒ちゃんと同じく霊体で、

ポロシャツもチノパンも新品の状態に

戻ってる。


霊体でこの世界を見ると、万物の粒子

が精密で全てがクリアに見える。


色彩が鮮明過ぎて、目まいがする

ほどだ。


太陽の光や空の青、海の碧も驚く

ほど輝いて見えるんだ。


三次元の物質界が、いかに粗い粒子で

出来てるかがよく分かる。



◇◇



浜辺から歩いてここに来るまでに

僕は美緒ちゃんから、この世界に

ついて色々と話を聞いたんだ。


あの白い砂浜をもっと遠くの方まで

歩いて行くと、海に流れ込む大きな

河口があり、その向こう側には肉体

を持った人たちが住んでるらしい。



「この世界は、霊と物質が入り混

じった世界なの。河の向こう側の

人たちは地上にいた頃と全く同じ

ような暮らしをしてるわ。いつも

ご馳走を食べたり、争ったりして

るの。 私、この世界ではお水だけ

で十分。 お腹も空かないの。私、

河の向こう側に行くとね、気持ち

が悪くなって、あまり長く居られ

ないの。向こう側の人たちもこち

ら側に来ると、気分が悪くなるみ

たい。だから私、向こう側の人た

ちとは、ほとんど交流したことが

ないの。山の方には中国の仙人み

たいな人たちが住んでてね、時々、

私の所に遊びに来て、この世界の

ことを色々と教えてくれるのよ。

『河の向こう側の人たちは物欲に

囚われてるから、こちら側には住

めない』って言ってたわ。お花畑

では妖精たちもよく見かけるの。

まだ話したこと無いけど、ティン

カーベルみたいで可愛いの。蜜蜂

みたいに、花から花へ飛び回って

るわ。恥ずかしがって、あまり近

づいて来ないけど、居てくれるだ

けで、私、気が休まるの」



◇◇



「私ね、その日は翔太君の手紙を

ノート式のクリアファイルに入れ

た寝たの。翔太君が心を込めて書

いてくれた手紙だから、汚したく

なかったの。私、そのクリアファ

イルを抱きしめて寝たのよ」


って、美緒ちゃんが言ったんだ。


僕は嬉しかった。


僕も美緒ちゃんからの手紙をノート

式のクリアファイルに入れたから。



「僕も美緒ちゃんからの手紙を同じ

ようにしたんだよ!」


って僕が言ったら、美緒ちゃんは

ニッコリ笑ってこう言ったんだ。


「知ってるよー! 私、翔太君のこと

ずっと見てたから! 私、翔太君が私

の家に来て、パパから私の手紙を受

け取ったことも知ってるの」


って、美緒ちゃんは言ったんだ。


「だけど、それは後の話。私ね、

翔太君からラブレターをもらった

次の週の水曜日、翔太君への返事

を書き上げたの。何回も書き直し

たの。それで木曜日の夕方、翔太

君の家に行こうと思ってパジャマ

から普段着に着替えたら、意識が

無くなって、後はあまりよく覚え

てないの。気がつくと、私は翔太

君の部屋の天井の所に霊体でフワ

フワ浮いてたの。翔太君は枕を抱

えて泣いてた」



僕はあの夜のことを思い出した。


あの時は、スピィア星に行く時みた

いに僕の霊体がブルブル揺れ出して

上半身だけベッドの上に身を起こし

たんだ。


そしたら美緒ちゃんが窓の所に立っ

てて、悲しそうに笑ってたんだ。



[じゃあ、あれは美緒ちゃんが幽界

に行く前のことだったのか!]


って、僕は思った。

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