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プラネット〜暗黒エネルギー砲vs六神通〜  作者: 宇目 観月(うめ みづき)
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僕と美緒ちゃんのこと

僕は山野翔太、都立高校の二年生。


保育園の時に父さんが亡くなって、

僕は母さんと二人暮らし。


都営住宅に住んでる。


学校から十五分くらいのところにある

大きな団地なんだ。


同じ建物が十棟くらい並んでて、

僕は八号棟の四階に住んでる。



僕は小学校に入った頃は、

チビで気が弱かったんだ。


色が白くて女の子みたいな顔してたし

よくイジメられた。


だけど小三の時、野球を始めたおかげ

で僕は変わったんだ。


僕の将来を心配した母さんが、僕を

無理やり野球チームに入れたんだ。


僕は最初、野球が嫌いだった。


でも、やってるうちに、だんだん

野球が好きになって行ったんだ。


仲間も増えたし、僕はメキメキ野球が

上手くなって自信もついた。


体もグングン大きくなって、小学校を

卒業する頃には身長も百六十センチを

超えた。


その頃には、もう誰も僕をイジメなく

なった。


今は身長百七十五センチ。 



野球は中学卒業まで続けたんだ。


小学校の頃から、僕はピッチャーと

サードをやってた。


中学の時は全国大会まで行ったけど、

投げ過ぎて肘を壊したから、野球は

中学までで止めたんだ。


だから、今は帰宅部。 



野球が出来なくなって最初は凄く落ち

込んだけど、今はもう踏ん切りがつい

たんだ。


くよくよしても仕方がないし、あまり

裕福な家庭じゃないから、早く就職し

て母さんに楽をさせてあげたいって思

ってる。


とりあえず、どこかの大学を卒業し

たら、そこそこの会社に就職して、

一生懸命働くつもり。


だから今はバイトと勉強に明け暮れ

てる。


いや、勉強はあまりしてないけど。



◇◇



美緒ちゃんは隣町に住んでるお金持ち

のお嬢さん。


美緒ちゃんの家は、先祖代々から続く

地主で、親父さんは不動産関係の会社

の社長をしてる。


だから、凄くデカい家に住んでる。


頭も良いのに何で私立に行かないで、

僕等と同じ普通の公立に来てるのか

よく分からない。


美緒ちゃんは色白で目が大きいんだ。


ホクロ一つない綺麗な肌は、

ミュレーナ姫みたいにほんの

り桜色なんだ。


夢見るような大きな瞳は、

いつも黒々と輝いてる。


あの瞳で見つめられると、僕はいつも

息が止まりそうになる。 


凄い美人なのに少し天然で性格がいい

からみんなの人気者なんだ。


男子も女子もみんな美緒ちゃんに憧れ

てる。


美緒ちゃんが原宿に買い物に行くと、

芸能事務所の人から、よく声をかけ

られるんだって。


スタイル抜群で、身長は百六十センチ

くらい。


髪はいつもショートカットにしてる

けど、美緒ちゃんの瞳をブルーにし

て髪を長く伸ばして金髪にしたら、

ミュレーナ姫と瓜二つになる。 


美緒ちゃんは、隣町の幼稚園に通っ

てたんだけど、学区が同じだったん

で、小学校から同じ学校に通うよう

になった。


中学も高校も一緒だけど、僕は美緒

ちゃんとはあまり話したことがない

んだ。


美緒ちゃんの前に出ると、僕は恥ず

かしくてまともに口がきけない。


人間って本当に好きな人の前では、

緊張して何も出来ないのかもしれ

ない。

 

この間の五月祭の時だって、せっかく

美緒ちゃんの方から話しかけてくれた

のに、僕は真っ赤になって、ほとんど

口がきけなかった。



◇◇



美緒ちゃんのクラスはホットドッグ屋

さんをやったんだけど、大人気で午前

中で売り切れちゃったんだ。


美緒ちゃんは頭に赤い三角巾をつけ

てた。


それが凄く似合ってて、僕は見惚れ

ちゃったんだ。


制服の上には可愛いピンクのエプロン

をつけて売り場に立ってた。 


美緒ちゃん見たさに男子たちが長い列

を作ってたんだけど、僕は出遅れて、

後ろの方に並んでた。


そしたら、ちょうど僕の前の人で

ホットドッグが売り切れちゃった

んだ。 


美緒ちゃんの隣にいた彩芽ちゃんが、


「山野君、ごめんねー、今ので完売

しちゃった」


って言ったんだ。


それで並んでたほかのみんなも、


「あーあ、残念」


とかって言って、諦めて解散した

んだ。


僕はその場に突っ立って、


[他のクラスのカレーでも食べに

行こうかなあ]


って考えてた。


そしたら美緒ちゃんが、


「ちょっと待って」


って言って、調理場になってる隣の

教室に駆け込んで行ったんだ。 


しばらくすると美緒ちゃんが、

大事そうに両手でホットドッグ

を持って、ニコニコしながら戻

って来た。


ホットドッグは小さなバスケット

の中に入ってた。

 

「まかない用にとってあったのが、

一個残ってたの。翔太君、よかった

ら食べて」


って、美緒ちゃんが言ってくれた

んだ。


僕は、美緒ちゃんが自分のお昼用に

とっておいた物だと思った。


ありがた過ぎて胸が震えたけど、

悪いから断わろうと思ったんだ。


でも頭の中が真っ白になっちゃって、

上手く言葉が出て来なかった。

 

「・・あっ、いやー、あの、これ、

えっと、み、美緒ちゃん」


って言ったら、続きが出てこな

かった。


僕は完全に言語障害状態。


美緒ちゃんは小首を傾げて怪訝そうな

顔してた。


僕は結局、


「ど、どうも!」


って言って、ホットドッグを受け

取り、恥ずかしいからそのまま急

いでラウンジになってる教室に入

ったんだ。


彩芽ちゃんも唖然としてた。


僕は振り返ってお辞儀したんだ

けど、二人とも僕を見てクスク

ス笑ってた。 


何でもっと落ち着いて喋れなかったん

だろうって、僕は後で死ぬほど後悔し

たんだ。



美緒ちゃんの前では、僕は小学校の頃

からいつもこんな感じ。

 

だから僕は、遠くから美緒ちゃんを

見てるだけで満足しようって、自分

に言い聞かせてる。


永遠に憧れの存在でいいのかも。


大体、僕みたいな人間と、美緒ちゃん

みたいなお嬢様とじゃ、釣り合わない

と思うんだ・・・。



◇◇



僕があの惑星の夢を見るようになった

のは高校に入ってからなんだ。


月に一、二回は見るようになった。


最初は、野球を止めた反動で空飛ぶ

夢を見るようになったのかなって思

ってた。


夢って、潜在意識の表れだって言う

からね。 


ミュレーナ姫のことも、美緒ちゃんに

対する願望の表れじゃないかって思っ

たんだ。



でも最近は、あまりにも夢がリアル過

ぎて、僕は寝てる間に体外離脱して、

実際にあの惑星に行ってるんじゃない

かって思うようになった。

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