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また明日

二十年前、私は現実的仮想世界の普通の中学校に通う普通の学生だった。そんな普通の学生の私にVBが襲いかかったのはある夏のことだった。

「ねぇ悠里、このあと買い物行かない?」

「うん、もちろんいいよ」

教室で帰り支度をする友人、九重美雨沙ここのえみうさからの誘いを受けた私は放課後に一時間だけ許された外出を謳歌していた。

「悠里の親も厳しいよね。たった一時間しか出歩く時間貰えないんだもん」

「仕方ないよ。いくらこの世界に危険がないっていっても心配するのが親なんだもん」

「それで私たちと遊ぶ時間が無くなったら元も子もないでしょ」

「うん、ごめんね。でも親が厳しいっていうより、私がやりたいことのために勉強しなきゃだから」

「そっか。悠里は医者志望だったっけ?」

「うん!」

「悠里くらい勉強してればきっとなれるよ。なーんて言うと思った?」

「え、ひどーい。そこは言ってくれてもいいんだよ?」

「悠里は天然なところあるから、学力よりも面接の方が心配かなぁ」

「あーまた天然っていう!私みうちゃんが言うほど天然じゃないからね!」

「はいはい。分かった分かった。そういうところが天然って言われるんだよ」

「ふんっだ!」

むくれてそっぽを向きながらついていく。彼女はまたやってしまったとでも言いたげに苦笑いしていた。

「よし、私が買いたい物は終わったかな。悠里は?」

帰り支度をするのに残り十分ほど残っている。あと一件行くくらいなら出来るだろうが、特にやることもなかったので首を振った。

「ううん。何も無いよ」

「そっか、相変わらず付き合わせる形になっちゃったけど悪いね」

「ううん。人付き合い悪いからか友達が少ない私とずっと仲良くしてくれるのはみうちゃんだけだから。こちらこそありがとう」

「な、何言ってるんだよ。私は別にあんたとこうして一緒にいたいからいるだけだ。お、お礼を言われる筋合いなんてないんだからな」

「ははは。みうちゃんそれツンデレ定型句だよ」

「う、うるさい!」

彼女は涙ぐみながら笑っていた。それに釣られて私も笑った。

「じゃあ、私そろそろ」

「あ、もうそんな時間か。じゃあまた明日学校で」

「うん。また明日」

夕焼けの空の下、手を振って別れた。

私も彼女も今日この時で会うのが最期、彼女はともかく私には明日が来ないのだということも知らずに。

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