第3話 椎倉月夜は悲しみに
母さん...!母さん...っ!
椎倉月夜は幼い頃、真っ暗闇の中叫び続けた。
突然放り込まれた闇に包み込まれて、動くことが出来なくなっていた。
ある日、月夜は夕方の買い出しに母親と2人で行っていた、
[月夜、今日は月が綺麗だね。]
買い出しはいつもと違い日曜のオープンしたばっかりのスーパーだったので
いつものスーパーよりも大行列で、帰る頃にはもう夜になっていた。
[ねぇ、ねぇ、母さん]
月夜は母親に問いかける。
[何で月は昇ってるだけで降りてこないの?]
月夜の母はこのような一見して面白おかしい質問でさえも、微笑みを浮かべながら答える。
[月夜、それはねお月様は高い所から人々を見守ろうとしてわざと高い所に昇っているんだよ]
月夜は、幼いながら分かったような分からないような表情を浮かべながら、小首を傾げた。
月夜の母は続けてこう答えた。
[だからねぇ、月夜...月夜は、あの大きなお月様みたいに、どんな人でも大切にする優しい心を持った人間になってほしいんだよ]
月夜の母は同じように微笑みながら、月夜をじっと見つめて答えた。
この頃、椎倉月夜はまだ6歳、母親から教わった言葉は時々分からない事もあっただろうが、
母親の笑顔や優しい言葉に対する温かみは充分に理解していた。
そしてそんな微笑ましい帰り道の最中、月夜は何か空で何か黒い固形物のような禍々しい物体が
蠢いているのを見かけた。
[ねぇ、ねぇ、母さんあれなぁに?]
月夜は不思議がりその物体について母親に聞いた。
母親は次の瞬間すごく怒りを浮かべたような顔を浮かべ、こう言った。
[また来たのね、うちの、うちの、月夜にチカヅカナイデェェェ!]
母親の優しそうな笑みから一転して取り乱した様相に、椎倉月夜は身動きが取れなくなった
[母さん...母さんっ...!一体どうしたんだよっ!]
その瞬間月夜の足下から黒点のようなものが散り散りになるような形で溢れ出しては纏まってを繰り返し
周囲全体の景色を包み込んでいくのを月夜は感じた。
その瞬間から月夜が叫ぶ声や音は何処にも届くことはなく、母親の姿でさえも見えなくなっていた。
そして、視界が暗くなり全てが引っくりがえっていくような感覚に月夜は沈んでった。
10年後、椎倉月夜は1人、インビジバーとしての役割を果たす為に普段は通らない道を通っていた。
しかし、その道は何か月夜には見覚えのある懐かしくて、どこか悲しい場所であった。
[母さん...あの夜空の月が見守ってたのって一体何だったんだろうな...]
月夜はあの帰り道を愚痴を1つこぼしながら歩いていった
[えーっと...今回の任務の家はここですか..神崎ツトム、聞き覚えがあるな。]
椎倉月夜は任務を果たすため1人家へと入っていった。
インビジブル発動。