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のちに聖人と呼ばれたおれが異世界を往く ~観光したいのに自分からお節介を焼く~  作者: 蛸山烏賊ノ介
第2章 新しい世界で集落の住民となる
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第15話 状況は把握したから前へ進む

 コンパクトバーナーとアウトドアクッカーを取り出して、ステーキを焼くことにした。解凍するのを待ち、真空パックには牛脂が付いているのでまずはそれを油の代わりに焼いておく。


 肉を柔らかくするためにたたく道具がないから、サバイバルナイフの刃背の鋸刃で代用した。柔らかくした肉を鍋に入れて中火で焼き目が付くまで火を通してから裏返す。


 両面とも焼き上がった所で、シンプルに塩を振ってから醤油で味を整える。コンビニで買ったおにぎりは梅味と鮭入りの二種類。これに飲料水を添えて、移転して以来の最初の食事だ。時間軸でいうと時空間が停止した状況では時間は進んでいないが、おれの感覚では長久の時を経ての美食、これにかぶりつかないわけがない。


 いただきます!



「うめぇー! なんて美味しいんだ!」


 二枚目のステーキとおにぎりもお替りした、持ってきた消耗品の数量制限なしは最高! 管理神様さまだよ、いい仕事をするね。もう感謝感激だぜ。



「動けない……うっぷ」


 欲張りすぎてのどにまでつめ込んだぐらいに食べてしまった、ステーキ1kgはさすがに多すぎる、もう満腹だ。消化するのを待っているうちに眠気が襲ってきた、片付けるのも億劫になったので気のままに目を閉じて、夢に誘われるのに身を任せた。




 目がさめた頃には空の色が薄暗く、三つの月が空に掲げられている。虫の音も鳴り響いていて、夜になろうとする世界へおれを招待しているかのようだ。


 食器などの道具をミネラルウオーターを使って汚れを洗い落としてから、真空パックのビニールなどゴミもアイテムボックスに収納する、この世界にないものを適当に捨ててはいけない。水を沸かしてからインスタントコーヒーを作って飲んで、ホッとする一息に心身とも本当に休めた気がした。


 さて、愛車を漕いで出発するか。



「メニュー、マップと」


 マップを縮小で最大画面に開いて見る。この辺りの地形は草原で、拡大すると離れた所に村があった。行ったことはあると思うが訪れた村はあり過ぎて思い出せないし、名前は載っているけど文字が読めない。


 今は人が多そうなところへ行くつもりもないので、村は諦めて違う方向の地形を検索してみる。里山みたいなのがあったから、魔素の塊が湧いているかもしれない。そこならレベル上げできるかもしれないからそこを目標に移動することにした。その前に着替えよっと。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

名前:カミムラ アキラ

種族:人族

レベル:1

職業:魔法術師


体力:900/900

魔力:1635/1635

筋力:300

知力:45

精神:500

機敏:250

幸運:150

攻撃力:325/(300+25)

物理防御:111/(30+10+15+16+18+10+12)

魔法防御:0/0


武器:鉄のショートソード(攻撃+25)


頭部:無し

身体:レザーアーマー(物理防御+30)

   チュニック(物理防御+10)

   異界のTシャツ(物理防御+15・不壊)

腕部:レザーグローブ(物理防御+16)

脚部:皮革のブレー(物理防御+18)

   異界のトランクス(物理防御+10・不壊)

足部:皮革のサンダル(物理防御+12)


スキル:精霊魔術Lv1・夜目LvMax・鑑定Lv1

    普魔法Lv1・武器術Lv1・身体強化Lv1

ユニークスキル:住めば都・不老・健康・超再生

称号:迷い込んだ異界人・世界を探求する者

   精霊王の祝福・神龍の祝福

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 職業は魔法術師に変わっていた。精霊王の幼女も精霊魔術師は祝福で仮免許で付いたと説明したし、精霊ではなく魔法が使える今、職業の名称はこっちのほうが正解だおれもと思う。



 武器や防具はどこかの城塞都市近くにあった浅いダンジョンから手に入れたもの。見た目はゲームでスタートしたばかりのキャラみたいで、なるべく目立たないように装備したつもりだが、黒い髪に瞳で中背中肉の冴えないおじさんがコスプレしたようなものだ。


 自撮りしてみたが、自分の見た目の滑稽さに泣きそうです。


 もっと強い防具を装着しようとも思ったが、何かのはずみで人と出会ってしまうこともあるのでそれは控えた。でも、レベル上げのときは黒竜の鎧を一式で着込んでやるからな。



 愛車の乗り心地はいい、肉体も強くなっているから疲れがまったくない。これで不壊属性が付いているからメンテナンスフリーなので、タイヤが小石などで壊れる心配もない。それならこれはもう全力でペダルを踏みしめて、夜のサイクリングに洒落込むしかない。




 あー暇だ、暇すぎる。スマホを取り出してからイヤホンをつけて、音楽を聴きながら先へ進もう。音楽にアニメ、それとネット小説のPDFファイルにオフラインゲームを大容量のメモリーいっぱいダウンロードしててよかった。


 勿論、生殖行為を記録したお宝動画も山盛りだ。ここ大事ね。



 仕事の場所はスマホがつながりにくい地域も多かったから、つながらなくても使えるように色んなデータ貯め込んだのがよかった。ネット小説の続きが読めないのは気になるが、そんなのおれの想像で完結させてやる。どれもハーレムハッピーエンドだ。


 自転車のLEDライトが前方の草原を照らしていた。小説で思い出したが、こんな時は鑑定スキルで世界の物の情報を入手することができる。まだまだ知らないことが多いこの世界では情報は大事だ。その量が多ければ多いほど生きやすくなるし、鑑定レベルも上げておくべきだな。


 自転車を止めてから草一本を千切って見る。



「メニュー、スキル、鑑定」


 アルスの草:アルス・マーゼ大陸の至る所に生えている雑草。



 うーん、説明が短いな、レベルが低いからこの程度の物か。そうだ、人物など場合によっては離れたところを鑑定する可能性があるので、どのくらいの距離を鑑定することができるかを試してみようか。



「メニュー、スキル、鑑定」


 雑草・雑草・雑草・雑草・虫・雑草・雑草・雑草・雑草・雑草・虫・雑草・雑草・雑草・薬草・雑草・雑草・雑草・雑草・虫・雑草・雑草・雑草・毒消し草・雑草・虫・雑草・雑草・雑草・雑草――



 鑑定の結果が一杯出てきた。角度は左右45度で奥行きが50メートルほどの物が鑑定される範囲みたいだが、名前しか出て来なくて詳しい情報は省かれているようだ。アルスの草の中に定番通りの草を見つけることも出来た。



 薬草:傷を治す成分を持つ薬用植物、このままの使用は効果がない。


 毒消し草:毒を消す成分を持つ薬用植物、このままの使用は効果がない。



 なるほど、むしゃむしゃと食っても意味がないのか。鑑定レベルが上がればなにかが解明するかもしれないから、頑張って鑑定スキルを使おうか。薬草はあとで使うと思うのでアイテムボックスに入れよう。異世界移転の小説なら薬草採取リクエストとか、薬師ギルトとかがあるからね。


 目に付く物を鑑定する途中でテントを張って寝たが一向夜が明かない。天体の自転速度は知らず、天体の質量とメカニズムも分からないので、地球の時間単位で時間を計るのはもうこれでやめるつもり。



 鑑定スキルのアイコンは乱打がごとく多用したが、鑑定レベルは一向に上がらない。回数ではなくて鑑定した種類によって経験値が積まれるのか? この草原で灌木や小石に虫以外は生き物の種類が少なく、小動物はおれを発見するとすぐに逃げてしまう。


 気長になにかをすることはおれの特技みたいになっているので気にしない。スキルは使っていればいつかはレベルが上がるのさ。




 ようやく訪れた朝ということで魔法レベルを鍛える時間だ。深夜での魔法は目につく可能性があるのでしないことにした。人型種族もさりながら万が一モンスターを呼び寄せでもしたら大変、たとえ弱小モンスターであっても、戦ったことのないおれは戦闘態勢に臨めるとは思えない。


 何事も慣れが大切と思う。



 ビームの乱撃ちとばかりに光魔法の初級アイコンを連打する。魔力値は1635あるから合計で327発を撃てる。しかし魔力値が0となれば魔力切れを起こしそうで、それがどんな状況になるのかがわからないからやめておく。それに魔力はどうやって回復するのかを知っておく必要もあるので実験も兼ねて100発程度にしようか。



「見える、そこかっ!」


 カッコつけて横に光魔法の軌道が迸っていく。しかしそこはただの空でなにもない、あくまでおれの妄想にしか見えないエアーエネミーがいるだけ。でもここに人がいなくて本当によかった、でないと黒歴史の数がどんどん増えていく。



 しばらくしてからステータスで見ると魔力は回復しつつあり、見解としては魔力は自然回復するものと考えていいじゃないかな。管理神は魔素の塊で魔力の補給も可能と話していたが、こっちのほうはモンスターとなってエンカウントする危険性があるので、それは体制を整えてから試すことにしよう。



 とにかくすることがないので光魔法を中心に魔力が回復したら魔法を撃ちまくった。光魔法の射撃数が1000発辺りで魔法のレベルが一つ上がっている。


 よし、確認ができたので次は土魔法のレベルアップを狙う。エネルギーが充填次第魔法乱射、目標は惑星アルス、ロックオンアンドファイア! おらおらあ、精霊魔術師のお通りだ。


 あ、そう言えばおれ、魔法術師に転職したんだっけ。



 魔力が回復するまでの間にユニークスキルのアイコンを押すとやはり説明が出てきたよ。



 住めば都:自動的に常時発動の技能で、どこでも居心地よく住み慣れることができ、そこに合わせて特殊の能力を取り入れることがある。



 なるほど、これで元々は持ってなかったおれに魔力と魔法がなぜ身に付いたかが理解できた。淡々と仕事で各地を転勤し続けた自分を褒めたいね、おかげでこの世界で自分を守っていくことができる。



 不老:自動的に常時発動の技能で、老いることが停まり、寿命が延びる。精神耐性能力を向上させて魔力の容量が拡張する。消費した魔力が元に戻る速度を速め、同時に散布している魔力を取り込むことができる。



 おお! グッドジョブだよ、幼女。てっきり不老は老けないだけかと思ったが長寿まで付いてきたよ。精神値と魔力値が高かったのもこのユニークスキルによるものだな。しかも魔力の回復を速められるとは、まじで至り尽くせりの多機能ユニークスキル。


 さすがは精霊王、見た目は幼女でもこの世界の守護者。



 健康:自動的に常時発動の技能で、身体が諸病に極めて掛かりにくく、老化による退化や萎縮することがない。呪い・毒・麻痺・気絶の生体に状態異常が起きなくなる。魔力による生体の活性化をより活発させる。



 爺さんの祝福も幼女のそれと同等だな。前に聞いた通り、病気や状態異常を防げて、その上に身体が強くなるというわけか。現代科学で治療のできない世界で生きていくには恩恵の大きい能力となるはず。ありがとう、エンシェントドラゴンさま! このまったく信心のないお祈りはちゃんと届きましたか!



 超再生:自動的に常時発動の技能で、生体と精神に対する傷害や欠損を神速に自己治癒させることができる。傷害の程度が著しいほど、その治癒の効力が上がっていく。但し、即死や四肢の切断など生体の顕著な欠損に対しては効果を発揮することはできない。



 これが時空間停止の解除に伴う、肉体の改造での崩壊からおれを守ったユニークスキル。これがなければ、今のおれはここにはいない。というか肉体爆発していた。こわっ!


 今後の人生にレベル上げや突発的な出来事で戦闘をする場合もあると思うので、傷を治せるのは助かるよ。四肢の切断は治せないけど、それは特級回復魔法で対応できるかもしれないけど、その前に痛いことが大嫌いなおれは怪我をするつもりはまったくない。


 まあ、ついでだから称号も見てみようかな。



 迷い込んだ異界人:別の世界で生を受け、アルス星に事故で迷い込んだ者。その際にこの世界にない技能や道具を発生させて所持することがある。


 世界を探求する者:広大なアルス・マーゼ大陸を探検する、無謀な勇気のあるバカ者。


 精霊王の祝福:世界を守護せし一柱たる精霊王からの祝福で不老となる。精霊に好かれやすくなる。


 神龍の祝福:世界を守護せし一柱たる神龍からの祝福で健康となる。神龍の眷属から攻撃を受けにくくなる。



 爺さんと幼女の称号はそのままだな。世界を探求する者の称号についてはわかる、確かにこの世界を探検しようと思ったら、いくつの世代を重ねる必要はあるからな。バカ者という説明も納得……できるかバカヤロ!


 あとはなぜこの世界でおれだけにステータスを判別することができるかは、迷い込んだ異界人の称号と係わっているはずだ。アイテムボックスにマップ、アイコンによる魔法の駆使などは管理神も言ったようにこの世界にないものばかりだ。


 身体は世界に馴染むように変化したのだが、やはり個体としてはまだアルスの世界からすれば異物扱いなのね。グスン




 今できることと言えば魔法を撃つ、それと鑑定するぐらいなものだ、武器を振ってはいるけど、武器術のレベルは全然上がりません。やはり実戦が必要なのかな。日は暮れそうにし、里山は未だに遠く、移動の途中で小川を見つけたのでそこで休憩を取ることにしようかな。



 水を鑑定したら飲めそうだが、おれには無限のミネラルウォーターがあるので別にいらない。寄生虫とかいたら怖いし、冒険したいと言ってもそういう無謀な冒険はしないぞ。それよりも魚をどうにか採れたのがすごくうれしいよ。釣り道具なんかないので、土魔法の生活魔法で囲いを作って、五匹の魚を捕まえた。


 バルモー:淡水に棲む小型魚類、食用に適している。



 いくら美味しいとは言え、ずっとおにぎりとステーキの日々はつらすぎる。一人暮らしが長いおれは大体外食で済ませるか、冷凍食品を調理してアニメを見ながら食べていたな。牛肉料理のレパートリーなんてないんだし、調味料や野菜が手に入らない今は同じものを食べ続けるしかなかったんだ。


 ここにきて魚肉という食材は心の渇きを癒してくれるよ。



 魚の調理法はコンパクトバーナーを使って焼いてから塩を振るだけ、主食はおにぎりだ。コンパクトバーナーの使い捨てガスは消耗品扱いで、無くなればアイテムボックスに入れたら勝手に補充されている。バルモーは血抜きしてから捌いて内臓を捨てる、一尾は美味しく頂くことで残りはアイテムボックスに貯蔵だな。



 お腹いっぱいになったことだし、魔法のレベル上げでも励みながら前進しようか。その前に身体が臭うから水浴びだけしとこっと。汗のにおいだからな、加齢臭じゃないぞ!


ありがとうございました。

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