第14話 自己の現況を把握する
文章が拙い上に長々と説明っぽいの第1章でしたが、読んで頂きました読者様方には本当に感謝です!
少しでも面白いと思えてもらえるのなら大変うれしく思います。
「いっつーーー! ギャああああぅぅぅうあああっ」
体が熱い内臓が沸騰する手足が千切れる細胞が溶ける
神経が刺される頭が膨らむ脳が爆ぜる思考ができない
耐えろと言った耐えられない耐えたくない痛いのいや
ここはどこだナンデこんなことになるコンナのイヤだ
おれはナンだオレはダレだおれはナゼこんなにイタイ
たすけてたすけてタスケテたすけろタスケロたすけろ
くるしいタスけろヤメろやめテくるシいイタいいたイ
うあああギアアあああぁぁぁああイアアアああ
いたイいたイいたイいたイいたイ
いたイいたイいたイいたイいたイ
イタいイタいイタいイタいイタい
イタいイタいイタいイタいイタい
..............................
..............................
....................ちくしょう
「……痛かったぞこらーっ!」
どのくらい気を失ったのか、やっと失神から目を覚ましたが、時々神経を刺すような小さな痛みが未だに身体のあっちこっちで起こっている。
「出て来ーい! このえせ神が! 一発、いや千発殴らせろ、ケリも入れてやるから出て来んかーい! 逃げるなボケがっ、チクショー!」
管理神が出て来ないのは知っているから言いたい放題だ。あんなに激痛になったんだから、ちょっと怒鳴ってやらないと気が済まない。おかげで息が荒れてしまったじゃないか。
「え? 息が荒れる? 息しているのかおれ……」
思いっきり胸いっぱい空気を吸い込む。
「ガハッゴホッゴホッ!」
噎せて咳きこんでしまった。
あー、でも確かに生きている。心臓はちゃんと動いている。まるで生き返ったように不思議な感じだ。
そよ風が微かな音を立てて頬を撫で、草の匂いが鼻に入り込んでくる。足元の雑草を踏んで確かめてみると、踏みつぶされた草は感触がとても柔らかかった。
ハチェットをカバーから取り出して力いっぱい地面に投げつけてみると、斧の部分はしっかりと土に突き刺さっていた。
ああ、世界の空間と時間が動き出して、おれはここにいるんだ。
周りを見回した。
この場所は樹木の少ない草原で、わずかに灌木の群生が見えるだけで魔素の塊も目にすることはない。マップでチェックするのは後にして、もう少しだけ取り戻した自分を感じていたい。座り込もうとしたときに、地面に出した手のひらが尖った石に当たってしまった。
「いたっ!」
少しだけ開いた傷から血が滲んできて、先までの痛みに比べると大したことはないけど、それでもこの痛みにはちょっとした感動を覚える。
これは自分によらない傷でこの世界にある物体がつけたもの。小さな傷はしばらくしてから塞がったが、これはユニークスキルの健康の影響だろう。
「あはははははは」
「ありがとう、管理神様! おれは本当にこの世界へ来れた、異世界転移だ!」
罵声をあげたさきのことなど忘却の彼方だ。時空間停止の世界から脱却できたことにしっかり感謝をしようじゃないか。
急にズキッと頭痛がしてきて、膨大な情報量に脳が処理しきれないような感覚だ。地球にいたごろのことを鮮明に思い出して、それにこっちへ来てから今までの記憶が同時に混ざり合うように入り込んできた。
気分が悪くて嘔吐しそうになる。草に上に座り込んだまま目を閉じて、両手で頭を強く抱え込んだ。
これはとてもきつい。脳の回転が上がり過ぎて、オーバーヒートしそうだ――
……ようやく頭痛が収まった後で、気分を晴らすかのように走り回ってみたり、飛び跳ねってみたりして、かいた汗が衣服にジワリと染み込んでいる。
実は先から少々の違和感を覚えている。中年になるおれはこんなに体力はなかったはずだ。
つい先までは山登りで自転車を漕いで、死にそうになったはずなのに今はなんともない。これはステータスを見たほうがいいかもしれない。
「メニュー」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
名前:カミムラ アキラ
種族:人族
レベル:1
職業:精霊魔術師
体力:900/900
魔力:1635/1635
筋力:300
知力:45
精神:500
機敏:250
幸運:150
攻撃力:330/(300+30)
物理防御:155/(35+25+15+15+25+10+20+10)
魔法防御:0/0
武器:異世界の手斧(攻撃+30・不壊)
頭部:異界のヘルメット(物理防御+35・不壊)
身体:異界の服(物理防御+25・不壊)
異界のTシャツ(物理防御+15・不壊)
腕部:異界のグローブ(物理防御+15・不壊)
脚部:異界のズボン(物理防御+25・不壊)
異界のトランクス(物理防御+10・不壊)
足部:異界の靴(物理防御+20・不壊)
異界の靴下(物理防御+10・不壊)
スキル:精霊魔術Lv1・夜目LvMax・鑑定Lv1
普魔法Lv1・武器術Lv1・身体強化Lv1
ユニークスキル:住めば都・不老・健康・超再生
称号:迷い込んだ異界人・世界を探求する者
精霊王の祝福・神龍の祝福
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
基礎能力値は軒並みに上がったのに知力の低さはこれ如何に? おれはアホってことか? 脳の改造までされたのに20しか上がっていないとはどう解釈すればいいのか? なんだか自分に悲観してきたから思考を停止させよう。
こういう逃避思想が低能なおれの根底なのね。シクシク……
装備はあとでこの世界の物に変える必要がある。でも不壊は守備の底上げができそうなので、武具の下に下着は着ておくか。
先にスキルのチェックでもしてみよう。
うーん、普魔法ってどういうことだよ。普通の魔法が使えるということなのか? どうやって使うのか説明がないな。アイコンが光っているから押してみるか。
あ、なんか魔法がいっぱい出てきたぞ。よく見るとちゃんと説明欄があった。なるほど、これはアイコンによる操作ということだな。
これはおれしか使用できないということになるね。
普魔法:アルス・マーゼ大陸で使われる一般的に習得が可能の魔法で、火魔法・水魔法・風魔法・土魔法・光魔法・回復魔法の6種類がある。
6種類の魔法が使えるのか。基本的な魔法だから普魔法という名が付いたのかな。考える前にまずは詳細を見てみよう。
それでは火魔法Lv1のアイコンをポチっとな。
火魔法:
火で攻撃する魔法で攻撃力は精神値と魔法レベルによる。
特殊効果は炎上で火に纏われる状況になることがある。
中級以上の魔法はレベルが上がれば解除される。
魔法の行使はアイコンを押すことで行使される。
生活魔法として消費魔力1で点火する。
初級(単体攻撃)消費魔力5
中級(範囲攻撃)消費魔力35
上級(単体攻撃)消費魔力60
特級(範囲攻撃)消費魔力150
さっそくですが、待ち望んでいた魔法を撃ちますのでアイコン操作で試してみましょう。
観察するとメニュー→スキル→普魔法→炎魔法→初級の順で作動すると確認ができたので、パッパっと押しちゃおう。
目の前に小さな炎が現れては急速に膨らんで、約3メートルの火の球が形成されたと思いきや視線の先へ物凄い速度で射出されて、そのまま遠くのほうへ飛んで消えていた。
「これ、ファイアの威力じゃないよな……」
どうなっているの? 説明には攻撃力は精神値によると書いてあったが、おれの精神値が多いからなのか、それともこの世界の初級炎魔法は元がすごいからなのかがわからない。
念のためにこの世界で魔法が見れるまで、緊急状態以外の使用は控えよう。
じゃ、ほかの魔法もチェックしてみようか。
水魔法:
水で攻撃する魔法で攻撃力は精神値と魔法レベルによる。
特殊効果は水に濡れた状況となる。
中級以上の魔法はレベルが上がれば解除される。
魔法の行使はアイコンを押すことで行使される。
生活魔法として消費魔力1で飲み水を作る。
初級(単体攻撃)消費魔力5
中級(範囲攻撃)消費魔力35
上級(単体攻撃)消費魔力60
特級(範囲攻撃)消費魔力150
水魔法は周辺から水が集ってから約2メートルの水球となって、火魔法のように撃ち出された。質・量ともありそうなので、それで殺傷力を持たしているのかな。
風魔法:
風で攻撃する魔法で攻撃力は精神値と魔法レベルによる。
特殊効果は無し。
中級以上の魔法はレベルが上がれば解除される。
魔法の行使はアイコンを押すことで行使される。
生活魔法としては消費魔力1で温風を作る。
初級(単体攻撃)消費魔力5
中級(範囲攻撃)消費魔力35
上級(単体攻撃)消費魔力60
特級(範囲攻撃)消費魔力150
風魔法は突風が直線を走っているようで前面へ吹き荒れている。地面の草が刈り取られたのを見て、これは単体への攻撃というより線上の全ての敵に攻撃が届きそうだ。
土魔法:
土で攻撃する魔法で攻撃力は精神値と魔法レベルによる。
特殊効果はなし。
中級以上の魔法はレベルが上がれば解除される。
魔法の行使はアイコンを押すことで行使される。
生活魔法として消費魔力1でコンクリートブロックを作ることができる。
初級(単体攻撃)消費魔力5
中級(範囲攻撃)消費魔力35
上級(単体攻撃)消費魔力60
特級(範囲攻撃)消費魔力150
土魔法は鋭く尖った土の針が地面から約5メートルの高さまで、風魔法のように直線的に連続で突き出して行く。やはりこれも単体よりも線上攻撃か。魔法の行使範囲は針の山が残って、約3分程度で土の針は元の地形に戻っている。
光魔法:
光で攻撃する魔法で攻撃力は精神値と魔法レベルによる。
特殊効果はなし。
中級以上の魔法はレベルが上がれば解除される。
魔法の行使はアイコンを押すことで行使される。
生活魔法として消費魔力1で明かりを灯すことができる。
初級(単体攻撃)消費魔力5
上級(単体攻撃)消費魔力100
特級(範囲攻撃)消費魔力200
光魔法は光りが出現するとともに、前方へ細いビームみたいに素早く射出された。これも線上攻撃に該当すると思うが、近未来兵器みたいでかっこよく、おれはこの魔法が夢を見れそうで一番気に入った。
ダミーの木製ライフルでも作って、撃つ度にそこかっ! とでも絶叫してみようかな?
光魔法に中級はなく、範囲攻撃は特級を待たねばならないみたい。
回復魔法:
傷病を治癒する魔法で回復力は精神値と魔法レベルによる。
特殊効果は毒や麻痺などの異常状態を同時に治す。
中級以上の魔法はレベルが上がれば解除される。
魔法の行使はアイコンを押すことで行使される。
初級(単体小回復)消費魔力10
中級(範囲小回復)消費魔力60
上級(単体中回復)消費魔力45
特級(単体全回復・短期内の欠損治癒可能)消費魔力180
回復魔法については機会があれば試験することにした。おれ自身はユニークスキルの健康があるので、多少の傷は自己治癒ができるし、呪いや毒と麻痺のバットステータスは効かない。
回復魔法は他者にこそ使用することになると思うね。
これで一通り検証は終わった。
火魔法と水魔法は遠くまで飛ばせたが、距離が長くなればなるほど火球と水球が小さくなって、最後は消え去ってしまう。風魔法・土魔法・光魔法の攻撃範囲は残された跡を目測してみると約100メートルほどである。
射程距離は戦闘の状況によって、使用する魔法の選択が変わってくるので、把握することが大切。それを確認できただけでも大収穫だよ。
次は武器術を見てみよう。
武器術:短剣・片手剣・双剣・両手剣・長槍・手斧・両手斧・棍棒などの武器全般を使用することができる技能で、自動的に発動するものであり、武器の種類を選ばない。
なんだこの反則技のスキルは。
アイテムボックスに色んな種類の武器が眠っているから大変助かるスキルだが、武術はなんにも学んでいないのになぜついたのだろうか? やったのはせいぜい学生時代に授業で遊び半分での剣道ぐらいなもので、あとは流浪中に各種の武器を振り回した程度の自己流だぞ? やっぱりこの世界のことはよくわからん。
気を取り直して次にいってみよう。
身体強化:魔力を通すことで身体能力と堅固さが強化される。レベルが上がれば上がるほど著しく効果が発揮される。このスキルは身体に危機的な傷害を負うと早急的な回復を行ったことで付けられるものである。
うん、あれね、まさに起こったばかりのことを指している。とても痛かったからね、これがご褒美ということでいいのかな。きっとそうだ、そうに違いない。
魔力を通してみるか、1635の魔力値があるからささっと流してみようか。身体でしっかりと魔力の循環を感じとる! 膀胱当たりの丹田に力を入れる。身体を巡る気を集めるように、魔力よ集え! あ、尿意を催してきた。
「ふうー。本当に久々って感じだな」
大小両方の排泄は気持ちいい行為です、しかもそれが青空の下でこの解放感がたまりません。消耗品であるティッシュは管理神の御好意により使い放題で、痕跡はキッチリ埋めさせてもらいました。
この世界にも蚊みたいな吸血昆虫がいるみたいで、先からお尻が痒いぜ。ポリポリ
「魔力操作がわからん!」
所有している魔力をどうやって扱えばいいかがわからない。そもそも取り込んでいる魔素をどうやって感じるというのか? 誰かに教えてもらうにもまずは言語は通じるかどうかがわからんし、精霊王の幼女に聞こうにも教会へ行くために、町の中へ入れてもらえるかどうかがそもそも問題なんだな。
仮に教会へ行くことができても、ずっと女神像の前に跪いてたら、教会の人から敬虔な信者に勘違いされて捕まりそうで怖い。あーもう、魔力操作の学習は後だ。鑑定については管理神にも教えてもらったし、目だけでも通しておこうかな。
鑑定:材料や道具の性能・生物や植物と魔物の性質・人物のステータスなど、対象となるものが持つ個別情報を読み取ることができる。但し、自分より上位のものについては情報の内容を見通すことができない。レベルが上がればより詳細の情報を取得することがある。
「あれ? カンリシンサマの言うこととチガウ?」
数値で生き物を測るのはその者を無視した失礼極まりない行為、とかなんとか言ってなかったっけ? でも説明欄には人物のステータスって書いてあったよ? カンリシンサマ、今すぐ来て説明して、とてもおかしいよ。
「もういい! 知らんことは知らん。おれのせいじゃねぇ」
付いた性能はおれがどうこうすることはできないんだし、人型種族にはなるべく興味本位で使うのは控えよう。敵対する可能性の人物、気になる人物や親しくなった人物に限定しよう。
美女とか美女とか美女を鑑定するのは仕方がないぜ。スリーサイズは鑑定されるかな? えへ、えへへ
当面の間にすべきことを決めてみようか。
その一、レベル上げすることで自分の能力を強くする。
その二、魔法のレベルも上げること。
その三、言語を習得すること。
その四、精霊王の幼女に連絡を入れること。
レベル上げはどうすればいいかを知りたいのだけど、今はその知識がない。
管理神によると、モンスターに挑戦するとレベル上げできることを教えてくれた。ということは魔物と戦う必要がある。魔素の塊からもモンスターを産み出すことができるため、最初は助言通り人が多い所でレベル上げをしようかな?
でも言語が通じないため、意思の疎通ができないうちは、不特定他人数の人型種族との接触はなるべく避けておくべきだな。
動物でもレベルが上がるかどうかを確かめる必要がある。肉食動物は未知による危険がありそうで、食料確保も兼ねて草食動物の狩りでもするか。
魔法のレベル上げについては、回数をこなすことで上がると予想する。
魔法の使い方がこの世界の人型種族と違うから、人気のないところでバンバン使ってみたい。狩りのときに使ってみるということで、実験もできてちょうどいいかもね。
言語を習得ためには人型種族との交流が必要だが、村や町とか都市とかは人が多くて、トラブルに巻き込まれる確率は数に比例して高くなる。できれば集落みたいなところがいい。
ただ、多種族領の言語は共通しているかどうかがまだわからない。それでもコミュニケーションを取るために、まずはどの言語でもいいから学ぶことにしようかな。
精霊王の幼女に連絡を入れるのはおれに読み書きができてからだ。焦ることは禁物であり、マップを見ないことには距離的なことはわからないが、世界樹やアルス連山を眺めることができない現在地では、爺さんと幼女の所まで行くのに、地球の時間にして数年はかかりそうだな。
それなら一人で旅ができるように、しっかりと準備はしておくべきだ。
闇雲に動くことはもうできない。もうここは時空間が停止した安全な世界ではない、どこにどんな危険が潜んでてもおかしくはない。
よし! 方針が決まったので防具をこちらの物に着替えて、武器も持ち替えてから出掛けよう。おれの努力したことが生かされようとしている。埋めた世界マップはおれにとって大事な地理情報が詰まっていて、かならずこれからの行き先に役立つに違いない!
そうだ! せっかくなんで、自転車に乗って異世界でサイクリングだな。
その前にお腹が空いたので、久々の食事をとりたいと思います。
ようやく異世界で生きることになりました。
ありがとうございました。